魔法道具
ひときわ目立つ高層の建物、その中を行き来する客層は鍛え上げられた肉体を持つ冒険者から普通の子供まで様々なようだ。
「こちらの魔道具に手をかざした後入店をお願いします。」
何やら丸い魔道具に触れると扉が開く。
ギルドの扉と比べても明らかに文明の差を感じさせるような作りとなっている。
「これは興味深いです。」
「綺麗」
中にはいるとガラスケースに、魔膜から出てきたのと似たような形をした物が展示されている。
売場後とに展示物の形が分けられている。
「ここなら似たような形のを探していけばたどり着くと思うわよ。」
「なら取り敢えずこの雫型のやつから…」
魔膜を探り目的の魔道具を探す。
サーチを使うもごちゃごちゃとした空間を探すのは一苦労だ。
「あったあった、これだよな」
「あれ?これだったかしら…まあ似たような効果でしょうし探しましょうか」
周りを珍しそうに見渡す双子を連れ移動しようとすると急に腕を掴まれ止められる。
「お、おい!貴様ら!これをどこで手に入れた!」
目を丸くした少女が俺の魔道具を持つ腕を掴んでいた。
目線は下、双子よりも小さく、白に近いが光が当たると紫色が見える様な跳ねた長髪、大きく開いた口は尖った歯を見せるがその身長に加え大きく眠たそうなその目から小動物の様な雰囲気を感じさせる。
お姫様の様に長くレースの付いたスカートを穿いている事から、地位がそれなりに高いのだろう。
そんな人物が何の用事なのだろうか、隣のリリィも驚きで固まってしまっている。
それともう片方の手に持っている星が大量についている大きな布が気になる。
「ルーシュ様!先に行かれては困ります!」
そんな御方を追ってきたのか数人の付き人の様な人が慌てて追いかけてくる。全員シックな服装で揃えた女性だ。
「しゃ、社長!一言いただければお出迎えしましたものを…」
ここの店員も彼女を見て驚いたような顔をする。
そして彼女たちが向かってくる先、そして社長と呼ばれたこの少女。
まあ、異世界だから何でもありか。
「おい!答えろ!」
俺の気がそれていると直ぐに正し、相当な剣幕で迫ってくる。
「いや…貰いものだよ」
「そんなわけないだろ!」
そんなわけあるんだよ。どうしたらいいんだよコノヤロウ。
「ゼノが困っているのでやめてください」
「ロリ」
いつの間にか近くまで接近していた双子が割って入る。
金髪のツーレは口で制し、黒髪のクーレは一言だけ放つ。
「誰がロリ…なんで分かるんだぁ…?」
ルーシュと呼ばれた彼女は言い返そうとするも何かに引っかかったらしく不思議そうに双子の顔を覗く。
分かるも何もその見た目では言われても仕方が無いだろうに。
そんな不思議そうに見る俺と目が合うとカッと目を見開き距離をとる。
「ヨミ!私の姿はどうだ!?」
「いつも通りお美しいです。」
「そうか…」
俺と距離を離したと思えば、秘書と思わしき女性に自分の容姿を聞き始めた。
そこまでしてロリ呼ばわりが気になったのだろうか。
それにしても、ヨミと呼ばれた女性からの返事を聞いても不服そうな顔をしている事から別の事が気になっているのだろうが。
「クソッ…仕方ないか…」
ルーシュ俺に向き直ると懐から何かを取り出す。恐らくそれも魔法道具なのだろう片手に持ち、胸の位置まで持ち上げると、手のひらをかざし何やら小声でつぶやく。
彼女の手から白く薄い布が広がり霧散してゆく、それが終わるとルーシュのぱっちりとした目と合う。
しばらくお互いが見つめ会うと、またもや慌てだす。
「な、なんなんだお前!何しに来たんだよ!その魔道具だってどうやって手に入れたんだよ!」
「俺たちは、この魔道具は貰い物でここで似た奴を探しに来たんだが…」
「は?え?ほ…ほんとか?」
先ほどの慌てようとは異なり少し冷静さを取り戻したようだ。ただ疑いはまだ持っているようで怪訝な表情をしている。
「…それだったら、こっちにこいそれの話をしてやる。」
近くの少女は何やら周りに指示をすると別室への道が通される。
その姿からこの少女が重役であるという真実身が伝わってくる。
「何だか凄い事になったわね」
しばらく固まっていたリリィが話しかけてくる。
俺も正直なところこれにホイホイとついて行っていいのか疑問すらある。
「対応も紳士的だったし噂通りの人だったわ、私もあんな女性に憧れちゃうわね。それにお胸も大きくて」
「…」
あの様子が紳士的だというリリィにかなりのカルチャーショックを受けるのだが。
それにどう考えてもリリィよりも年下だと思うし胸も全然リリィの方が大きいはずなんだが。
「リリィ騙されてはいけません。あれは幻術の魔道具による効果です。本当の姿とは異なります。」
「ロリ」
それを聞いていた双子からすかさず訂正が入る。
どうやら彼女は幻術によって姿を変えている様。
それに話を聞くに、リリィには胸の大きなやり手の女社長にでも映っていたのだろうか。俺にはその幻術が見えないから一度拝みたいものだ。
「誰がロリだ!」
準備が終わったのか目の前にロリ社長が来る。
その姿では否定材料を探す方が無理という物。
「ふん、準備ができた。こっちの応接室で対応させてもらう。」
不機嫌そうな彼女に、俺たちは別室へと案内された。




