Natural selection
俺は、平凡だ。
家の近くの高校に通い。
勉強の成績は、平均点。
運動も可もなく不可もなく。
身長170センチ。
これといった特技も無く、進学も何処かの大学へ行って適当に就職するんだろう…と考えてる。
そんな俺でも、少しだけ変わった所がある。
いや、正確には俺じゃないか。
それは、俺の隣に今歩いている男女二人組だ。
片方は、少しくせ毛の黒髪に優しい瞳、180センチという高身長の爽やか系のイケメン。
更に成績は常にトップ。
サッカー部ではエースとしてチームを全国まで持って行き。
その人望も厚く、その爽やかな笑みで多くの人を虜にしてきた。
もう片方は、イギリスとのハーフで親譲りの金髪のロングに大きな瞳、小さな口にピンク色の唇で、165センチメリハリのある体でモデル体型というやつだろうか。
クラスでは、いつも笑顔を絶やさず誰にでも優しいと男女共に人気である。
そんな二人が俺と一緒に毎朝登校を共にしている。
理由は単純で、家が近く昔からつるんでいた。
幼馴染というやつだ。
こんな特徴のない俺なんかが二人の側に居ていいか疑問に思うが、気を使わなくていい仲であり相手の考えもだいたいわかるくらいの
関係だ。
何より、この二人といると落ち着く。
この関係だけは続けていきたい…
■
………なんて思ってそうな、異世界転生か転移でもしそうなどこぞのラノベ主人公っぽい奴が前を歩いている。
というか、こんなやつマジでいるんだな。
しかも、金髪に制服とかアニメでしかみた事ないわ。
いや、まぁ前のやつらの関係は俺の妄想だけどな!
ん? え? 俺?
俺は、どこにでもいる 年齢=彼女いない歴、29歳童貞、魔法使い一歩手前の。
しがないサラリーさ。
とまあ、通勤中は暇過ぎてこんな事を考えてながら毎朝 仕事へ向かう。
会社も給料に残業代が入ってる事以外は普通のとこだ。
「ふぁぁ…」
自然と欠伸がでる。
昨日のネトゲでの徹夜が響いているのだろう。
ああ、眠い。
青になった横断歩道を渡る。
渡った先は鰻屋があり、仕事帰りの鼻を誘う。
「そこの人!危ない!」
むむ?何か起こったみたいですな。
主人公(仮)君が何かこっち向いて叫んでいるぞい。
ていうか、後ろ姿しか見えなかったから分からなかったけどイケメンじゃん……世の中理不尽だ。
「早く逃げるんだ!」
なんかイケメン君も叫んでるな。
金髪ロングちゃんなんか俺をみて口に手を当ててるし…
ん?これ俺に言われてね?
ふと、右を向くと超スピードでトラックが迫ってきていた。
マジか!
咄嗟に横断歩道を渡りきった。
トラックはカーブし俺の真横を通り目の前の壁に激突した。
ードオオオオオン!
ふう、危なかった。
足がガクガクしてるよ。
それより、主人公(仮)君とイケメン君には感謝しなければ。
いくら憎きイケメンでも感謝は大事だ。
「二人ともありがーーー」
フッ…と自分の上に大きな影がかかったのが分かった。
上を向くと追い討ちをかけるかの如く倒れてくるトラック。
迫り来る巨大鰻、もとい看板。
え、マジか。
足が震えてうまく動かせる事もなく俺はそのまま潰されてしまう。
こうして、29年という短い人生を終えた。