山盛りオープンサンド(2)
「久しぶりの買い出し・・・つかれた」
キッチンにどさっと荷物を置いて、月薫はボヤいた。
「とりあえず、今夜はパンでも食べよ」
がさがさと食パンを取り出すと、バターも買ったことを思い出した。
そうだ、バターをたくさんのせて焼こう。
「真ん中と四隅にバターをのせて、と」
オーブン、スタート。
・・・パンが焼けるの待つの、ヒマだな。
ヒマだと余計にお腹空いちゃう。
「レタスものせよう、かな」
パリッと一枚レタスをはがして、洗って、水気を切った。
パンはまだ焼けない。
「薄焼き卵くらい、作れるかな」
オーブンを横目で見つつ、フライパンに卵液を流し込んだ。
ああ、卵の焼ける音って、食欲を煽る。
「チーズも入れちゃお」
卵の上でチーズが溶けた。はみ出したチーズが焦げるのが、いい。本当にお腹が空いた。
パンが焼ける。バターが溶けて、じゅわっとした歯ごたえが、簡単に想像出来る出来栄えだ。
買い物して疲れたら、甘味も欲しくなっちゃった。でも砂糖をかけるってわけにもいかないし。
――あ、ケチャップ。
ケチャップとマヨネーズを、パンの上に絞り出した。心ゆくまで、たっぷりと。
さあ、レタスをのせて、チーズ入りの卵をのせて、仕上げにコショウをたっぷり振って。
「山盛りオープンサンド、みたいな?」
月薫はうんうんと頷くと、赤い皿にパンをのせて、窓辺のダイニングテーブルに座った。
100階の窓から見る街は、こまかな雨に濡れている。
「いただきまーす」
かぷりと一口食べると、月薫はもう一度頷いた。
うんうん、おいしい。一枚食べて元気が出たら、もう一枚作って食べよう。
☆
二枚目は、ラジオを聴きながら食べた。
初めて旅した星にチューニングを合わせると、天気予報が流れてきた。
今日は一日、こまかな雨が降るでしょう。
――ああ、あの星も、雨なのか。
満腹になった月薫は、椅子にもたれると、街の雨をうっとりと眺めた。
山盛りオープンサンド ~fin~