目覚め
二話
人間は文字通り人間であるときのみ遊んでいるのであって、遊ぶところでのみ真の人間なのだ。
フリードリヒ・フォン・シラー
卒業式の予行のために私は久々に学校に行き教室の椅子に腰かけていた。
「おぉ!信義!久しぶりにみた!」
信義の友人のうちのひとりが話しかけてくる。
信義は学校に友人が多い。
本来は浅く広いつながりで学校生活に支障をきたさず、かつ今日、情が移らないようにとおもってのことだったのだが、皆はとても優しく、その策は完全に破綻していた。
私はこれからこれらすべての人間と赤の他人として生きねばならないのか...
数が多くひとりひとりに思い入れがあるのがまた厄介だ。
策士、策に溺れるとはこれか...
「どうしたの?なんか元気なくない?」
真央がそう話しかけてきた。
彼女は高校3年を通して同じ教室で学び、信義をよく知る人間のひとりだ。
「んー、みんなとの高校も終わりかと思ったらさみしくてさー」
「そんなさみしい?別に卒業しても会うじゃん」
「いや、この高校っていう雰囲気が終わっちゃうじゃん」
「よくわかんないわ」
真央は笑いながら首をかしげる。
その時だった。
「困ります!警察を呼びますよ!なっ!やめっ..」
廊下から担任の山田先生の怒鳴る声が聞こえ、消えていった。
来たか。
私は覚悟を決めた。
「なになに?」
真央が教室の引き戸に手をかけようとした瞬間、荒々しく戸が引かれた。
廊下から教室に入って来た武装した男たちに驚き、たまらず彼女は尻餅をつく。
「定宗様、お迎えにあがりました。麒麟はここからここから一里ほどで滞空しております」
状況が全く理解できず教室は啞然とする。
「信義..やばいよ...逃げよ!」
尻餅をついていた女子が駆け寄ってきて、怯えながら袖を掴む。
「お知り合いで?」
「いえ...」
「え?」
その刹那、女子の首と胴が分かれた。
「申し訳ございません。無礼者の返り血がお召し物に」
「構いません、私の具足を艦で着ますので」
「かしこまりました。では参りましょう」
私は武者を従え校舎を後にした。