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W・B・Arriance  作者: 栗ムコロッケ
悪魔の薬編―ファリアス港編―
54/72

28.Let's get Cracking

今年最初の本編更新です。ちなみに主人公一行が出てくるのは2、3か月先の本編になりそうです。。


ついに対峙するウランドとロロ。激闘必至です。

ロロの不思議な術に、ウランドは対抗できるのか?

 町はずれの岩山。谷に落下し途中で詰まった巨石の上。断崖に囲まれた開けた更地。


 瞬く星々に高く上る月の青い光。それを受け反射するクロブチメガネ。





―――― Let's get Cracking(活動開始) ――――




 ゆっくりとメガネを上げ、ウランドの焦げ茶色の瞳に映されたのは、仰向けに押し倒されている小豆色の長い髪の美しい女――フーと、フーの両腕を地面に押さえ付け、馬乗りになる蒼い瞳に濃いクマの刻まれた端整な顔立ちの男――ロロ。


 蒼い瞳が半月の形に笑った。

 ロロ「アハハ~ごめん、聞こえなかったぁ~! もっかい言って?」

 ウランドもまた笑った。

 ウランド「失礼、通りにくい声だとはよく言われます」

 ロロは立ち上がると、フーの顔の横にあった白い仮面を遠くへ放り投げ、両手をポケットへと突っ込んだ。

 ロロ「バリトンボイス~かわいい~」

 ウランド「……もう一度申し上げます。貴方を捕まえに参りました」

 手を叩き、ロロは高らかに笑った。

 ロロ「おもしろ~い」

 そうしてふと静かに薄ら笑いを浮かべ、ウランドの頭の先から爪先までゆっくりと観察した。

 ロロ「"歪んだ精霊"の臭いがする」

 ウランド「歪んだ精霊?」


 何の前触れもなく、ロロはウランドに向かい駆け出した。

 ウランド(ノーモーションの踏み込み! 情報通り、格闘技には長けている)

 ロロ「あんた、魔導師だろ」

 フーは飛び起きた。

 フー「えっ」


 ロロの拳がウランドの顎の数ミリ手前を掻いた。ウランドはロロの拳を受け流すとそのまま腕の関節を取った。ロロは子どものようなはしゃぎ声を上げた。

 ロロ「わぁ! 折られる~! "身転如律令パラレルダンス"っ!」

 確かにロロの肘を取っていたはずのウランドの手から、まるで本当はそこに何もなかったかのようにロロの身体は消え失せた。


 ロロ「こっちこっち」


 すぐ横に、ウランドの肩に肘を乗せ、口にラムネ菓子のようなものを入れながら薄ら笑いを浮かべる蒼い瞳。ウランドが振り返りかけたその時だった。口から浸食する生暖かい感触。

 フーはそのあまりの衝撃的な光景に真っ青になった。

 フー「あーーーっ!」

 ウランドは後ろによろめきながらロロを振り払い、ゴホゴホと激しくむせ、慌てて口を何度も拭った。"一見"落ち着いた大人の男のその滑稽な慌てぶりに、ロロは指を差して笑った。

 ロロ「アハハハハ! キョドりすぎ! かわいい~」

 ウランドが口から吐き出したのは、砕けたラムネ菓子。口の中に広がったその気色の悪い不愉快な味は、どこか昔懐かしの、そう、駄菓子のぶどう味。


 ロロ「紫色はね~、ブドウ味なんだよ~」

 "血の気が引く"という感覚はウランドにとって久し振りのものだった。強力なその依存性は数ある魔薬の中でもトップクラス――魔薬"フォビドゥンフルーツ"。

 ロロ「次は何色がいい~? 黄色にする? ピンクもあるよ? 青とかどう?」


 ウランドは紫色の唾を吐き捨てると、俯きながらゆっくりとワイシャツの袖を捲った。

 ウランド「……たとえ海で溺れても、男性にだけは人工呼吸すらしてほしくなかったのに」

 フー「バカ! おっさん! 凹んでる場合かっ!」

 気づいた時には既にウランドの足元でしゃがみこみ、蒼い瞳が見上げていた。ウランドはその蒼い瞳を無表情に見下ろした。

 ウランド「……何故私が魔導師だと?」

 膝の上で頬杖を付き、ロロは子どものように笑った。

 ロロ「精霊を歪めてる。あんた、火と風の精霊に好かれてるな、普通は一緒にはいない」


 袖を捲り終え、太い腕を組むと、ウランドは「なるほどね」と笑った。

 ウランド「精霊が見えるというのは才能ですね、ところで、」

 組んだ腕をほどくと、その片手に握られていたのは短冊形の白い紙の束。ロロは「あれ」と笑いながらジーンズの後ろポケットの中身を確かめるように叩いた。ウランドは笑った。

 ウランド「どうやら私のほうはというと、"手品"の才能があるらしい」

 ロロもまた笑った。

 ロロ「"スリ"の才能の間違いでしょ」


 びっしりと達筆な毛筆で文字が埋められた紙束を、ウランドはしげしげと捲った。

 ウランド「これが道士の法術のトリガーですか、構造がサッパリですね」

 ロロ「ねー、返して?」

 ウランド「イヤです、"低・火炎龍ニアフ・プロム・エ・ス"」

 紙束を握る手のひらから、ほんの一瞬火柱が上がると、ウランドの手のひらには紙束の灰一つ残っていなかった。

 ウランド「ほら手品」

 ロロ「本当に燃やしたらそれ違う」

 その短い会話を合図に、二人は激しい打ち合いを始めた。


 基礎の基礎からキレイに踏襲され、かつ自分流にアレンジされたロロの地に足のついた体術に対し、ウランドの動きはどこか先の読めないまったくの型外れのものだった。道士の伝統拳法に精通しているロロやフーから見れば、はっきり言って"おぼつかない"。

 フー「お、おっさん! あんたもしかしてホントにケンカ出来ない!?」

 ロロ「いや……あんた本当はもっと長いモノ扱うだろ」

 ウランドは笑った。

 そして勢いよく踏み込むと、ロロの鳩尾めがけ、ゴツゴツとした拳を突き出した。わざとらしいほど大きなモーションは、動きを読むのがいとも簡単だった。軽々と避けたロロの軸足は、着地と同時に蹴り上げられた。

 ロロ「おぉっ!?」


 一瞬宙に浮いたロロの身体は器用に空中でクルリと一回転すると、片手で地面に着地し、そのまま腕の力で更に後ろに跳んだ。十分な距離を取ったつもりだったが、上げた顔の目の前には、既にウランドの拳があった。

 間一髪避けたその拳はそのままロロのTシャツをひっ掴み、力任せにロロを前に引き倒すと、そのがら空きの土手っ腹に勢いよくウランドの膝がめり込んだ。

 ギシリと、二人の間に鈍い音が響いた。

 それでもなおTシャツを掴む手は離れず、そのままロロをうつ伏せに地面に叩きつけた。


 さらに捻り上げようととったロロの手は、これまでとは比べ物にならない早さでウランドの腕を取り引き寄せると、前のめりにバランスを崩したウランドの脛にロロの強烈な踵が炸裂した。

 足をかけられた形となったウランドの身体は勢い余って空中で一回転し、思いきり背中から落下した。常人では悶絶しそうな衝撃だったが、当のウランドはケロリと起き上がり、背中についた砂埃を叩いた。ロロもまた立ち上がり腹を擦りながら少し咳き込むと両手をポケットに突っ込んだ。


 ロロ「わざと大振りしてみせたのは俺の次の動きを読みやすくするためだったんだ? 結構策士じゃ~ん」

 ウランド「とはいえあなたのお若さにはついていけないようです、顔面にこれをぶちこむはずだったのですが」

 ねだる子どものようにロロは上目遣いに笑った。

 ロロ「ねぇ、魔法使ってよ」

 ネクタイを弛め髪をかきあげながらウランドは無表情に答えた。

 ウランド「魔導師以外に使用はしません」

 ロロは笑った。

 ロロ「アハハハ~! 本当、魔導師ってお高くとまってるよね~! ところでフー

 先ほどロロによって遠くに投げられた道士の札がわりである白い仮面に手を伸ばしかけていたフーはその手をピタリと止めた。


 ロロ「邪魔したら殺す」


 何年も、ただ一途に想ってきた人からの言葉。彼と同じ高みに立ちたくて道士になった。国で裏切者扱いの彼に会うために抹殺任務に志願した。故郷から裏切者とされてもいい、それでも彼とともに生きたいがために。

 だがかけられた言葉はただ残酷にフーを打ちのめした。


 ウランド「女性にそのような言葉を使うものではありませんよ」

 甘えるような、それでいてバカにしたような声で、ロロは笑いながら答えた。

 ロロ「ごめんなさぁ~い、でも無理」

 薄ら笑いを浮かべながら、ロロは片腕の袖を捲った。そこには無数の経文が刻まれた刺青。ウランドは意味は理解できないもののその文字列は先ほど燃やした札に書かれたものに似ていると感じた。


 ロロ「"身転如律令"」






 フーの頭上が翳った。見上げれば猟奇的に微笑む蒼い瞳。

 ウランド「まだ札が!?」

 ロロ「ねぇ福、傷付いたでしょ?」

 ただ蒼い瞳を見上げるフーの頬に、一筋の涙が伝った。

 ロロ「お兄ちゃんのお友達で、優しくて、優秀で、意気も合って? 憧れてた? 好きだった? 結婚生活のせいで変わってしまっただけ? 魔薬でオカシクなってるだけ?」

 まるで、自分の心の中が漏れ伝わっているようだった。フーは目を固く瞑り、耳を塞いだ。耳を塞ぐその細い手を、ロロの大きな手が掴み、耳を塞ぐことを許さなかった。

 ロロ「それ、ぜぇ~んぶ、嘘、お前の妄想、思い込み」


 ふと、ロロの頭上が翳った。ロロはニヤリと笑うとフーの長く美しい髪を鷲掴み、引っ張り上げた。

 ロロ「"身転如律令"♪」

 ウランドの拳は宙を掻き、遠く対岸には、子どものように笑うロロと、抵抗することなく髪を掴まれたままのフー。ロロは楽しいものを見つけた子どものようにウランドを指差した。

 ロロ「や~い! 怒った怒ったぁ~!」

 バキバキと指を鳴らしながら、向けられたクロブチメガネの奥の瞳は、普段の穏やかさの欠片も無かった。

 ウランド「その穢らわしい手を離してください、今すぐ」

 ロロ「やだー」

 次に聞こえたウランドの声は更に低いものだった。

 ウランド「……離せと言ってる」

 ロロ「やぁ~だよっ! じゃあ、魔法使って俺殺せば?」

 大きく息を吐いて、ウランドは腰に手を当てると、クロブチメガネを上げ、俯いた。

 ウランド「……そう言っておけば、私は意地になって魔法を使わない、とお考えですね?」

 ロロの口から笑みが消えた。いつもの薄ら笑いを浮かべ、声のトーンがうんと低くなった。恐らくこれが、彼の本来の声色のようだった。

 ロロ「あんた、頭悪そうだけど勘はよさそうだな」

 ウランド「……貴方、自分は天才で特別で、他人は自分より下だと思っていますね? 他人を認めたこと、ないでしょう?」

 愉快そうに笑う蒼い瞳。

 ロロ「すごいね、エスパー? それともあんたもそうなんだ?」

 ウランド「どちらも違います」


 チリチリと音を立て、火の粉がウランドの周りを舞い始めた。

 ウランド「"デキの悪い後輩"に、貴方はソックリです」

 ロロ「俺にソックリなのに、デキが悪い?」

 ウランドの人差し指が、ロロを捉えた。

 ウランド「貴方、ご自分を"完璧な人間"だと思い込んでいるでしょう?」

 ロロの顔から薄ら笑いが消えた。

 ロロ「思い込む? 何言ってんの、事実だよ」

 今度はウランドが薄ら笑いを浮かべた。

 ウランド「ああ、本当に発言までソックリだ」

 ロロは怒りに任せ、フーを地面に叩きつけようとした。だがその腕目掛けて飛んできた光弾に、鷲掴むフーの髪から手を離し、距離を取らざるをえなくなった。

 光弾は断崖に触れると一瞬炎を上げ、強烈な破裂音とともに爆発した。


 爆風に煽られる細い肩を温かな手が支えた。

 ウランド「フーさん、気を確かに」

 爆風になされるがまま、フーは顔を上げなかった。

 フー「……もう、いい、どうでも」

 小さな頭にウランドの大きな手が乗った。そうして、更地の中央で静かにこちらを見つめる蒼い瞳に向き直した。






 ロロ「ようやく魔法使った、やっすいポリシー!」

 ウランド「ええ、私のつまらない意地でこれ以上フーさんを傷付けたくありませんからね。徒手格闘の技術も貴方の方が上みたいですし」

 ロロ「じゃああんたもナガモノも出しなよ」

 ウランド「こちらのポリシーは高額です」

 ロロ「え~! 楽しみぃ~! 絶対使わせる~! ……"身転如律令"」

 まるでそこには何もなかったかのように、ロロの姿は忽然と消えた。


 ウランドはフーから距離をとると両手をダラリと下げ、目を閉じた。ポツポツと紡がれる呪縛の言葉は精霊たちを捏ね混ぜ合わせ組み立て渦を巻き、それらはやがて火の粉となり、火の粉はやがて火の玉となり、ウランドの周りで炎の渦と化した。


 ウランド「"炎縛結界ブレイ・ピル・ズール"」


 炎の渦は早さを増し、あっという間に空高く燃え広がった。

 ロロ「あちち」

 ウランドから見て右斜め上空、ウランドの頭上に踵を落としかけていたロロは口と鼻を抑え、ひょろひょろと着地した。炎の渦はさらに燃え広がり、ウランドとロロを囲いながら高さを増し、やがて逆さに置いた壺のような形と化した。

 ロロ「これじゃ肺が焼けて窒息死だ、人に使うもんじゃない」

 ネクタイを脱ぎ捨て、ウランドは笑った。

 ウランド「グダグダやってても仕方ありませんからね、お互いタイムリミットがあったほうが、"効率がいい"でしょう?」

 ロロもまたニヤリと笑った。

 ロロ「イカレてやがる」

 ウランド「お互い様です」


 視界からロロの姿が消えた。ウランドは微動だにせず徐に真横に手を伸ばした。そこにはほとんど同時に現れたロロの襟元。そのままひっ掴むとロロを仰向けに地面に叩きつけた。衝撃はあったが手応えがない、上手くダメージを逃がしたようだった。すかさずウランドはロロの腹のど真ん中に拳をぶちこんだ。確実に、肋骨と内臓は負傷しただろう。ロロの口から上がった血飛沫がウランドの頬にかかった。


 炎の渦が解け、仰向けにゼェゼェと呼吸の苦しそうなロロと、その様子を静かに見下ろすウランド。

 ロロ「未来でも読めるの? "身転如律令"は完璧な空間移動なのに」

 ウランドは平然と答えた。

 ウランド「貴方が仰ったのではありませんか、私は勘がいいと」

 ロロは苦しそうにせき込みながら笑った。

 ロロ「そんないい加減なものに」

 ウランド「だからこそ、この世に完璧なんて、ありえない」

 ふと、気がついた。ロロの口の端につく血痕は、まったくの漆黒であることに。ウランドは頬にかかった血飛沫を拭って、それに目を落とした。どうやら血ではないようだ。


 突然、ロロはむくりと立ち上がり、後退りながらウランドと距離をとった。

 ロロ「まあいいや、予測不能な出来事って結構楽しいね。ところであんたさ、」

 両腕を広げ、ロロはいつもの薄ら笑いを浮かべた。


 ロロ「"神に逢ったことはあるか?"」






 突拍子のない質問に、ウランドはキョトンと蒼い瞳を見つめた。

 ウランド「神? いいえ?」

 ロロは薄ら笑いを浮かべたまま目を細めた。その目は慈愛に満ちていた。

 ロロ「そうか、そいつは好都合だ。あんたに"とっておき"をあげるね」


 ――"極楽転心如律令ア・マッドティーパーティー"――


 突然、ウランドの体は膝から崩れ落ちた。まるで眠りについているようにピクリともしない。ロロの蒼い瞳がすっかり大人しくなってしまったクロブチメガネを見下ろした。その視界を遮るかのように、フーはウランドを守るように覆い被さった。

 ロロ「あぁ、忘れてたよ福」

 いつの間にかロロの手の中にはフーの白い面。その面をフーの足元に放り投げ、ロロは微笑んだ。

 ロロ「それ、返すよ。使っていいよ?」

 フーはウランドに覆い被さったまま、面に見向きもせず、ただ首を横に振った。ロロはフーの横にしゃがみこみ、頭を優しく撫でた。

 ロロ「いいこだね、特別に"俺のお茶会"に招待してあげる」

 狂気に満ちた薄ら笑いがフーの旋毛に向けられた。


 ロロ「福、お前は"神に逢ったことがあるか"?」


 フーは蒼い瞳を睨み付けた。勢いはあったが、どこか"嫌われたくない"という怯えが見え隠れしていた。

 フー「……"ない"よ。でも螺羅、あなたもここで終わりだよ」

 フーの視線の先には黒い三日月のアジトへ向かう途中、フーが捨てた短冊形の紙束。真っ白だったはずの紙束はいつの間にかびっしりと文字が浮かび上がっていた。

 フー「無地の札じゃない、"火に炙る"と文字が浮かぶ」

 ウランドの魔法によって炙られ紙束に浮き出た文字列をロロは知っていた。道士が妖怪退治に使用する時限式の起爆札。ロロは薄ら笑いを浮かべた。






 リケ「え? ハートのエースと連絡がつかない?」


 リケにその通信が入ったのはキッカリ夜中の0時のことだった。相手は"ハートのキング"カグヤ。

 カグヤ『風の精霊が見つけきれない。よほどおかしなところにいるか、ロロ・ウーに殺られたか』

 リケ「いやまさかハートのエースに限って……」

 カグヤ『ギルティンの案件で忙しいところすまぬが、探し出して今日の分の報告をさせてくれ』


 リケはカーディガンを羽織った。


 真っ先に思い浮かんだのは"黒い三日月"のアジト。すでに真っ暗な街を外れ、藪を抜け、岩山を登り、ロロ・ウーのもとを目指したが、その足は途中で止まった。というより"止められた"。


 高い断崖を囲む真っ暗な谷底広がる開けた空間。だがそこには吊り橋があった形跡もなく、底の見えない谷底からは――

 リケ「……煙?」

 もくもくと上がる白煙。断崖の一部は明らかに爆炎魔法で削られた跡がある。念のため下の様子を窺いにいくべきだと考えたが、リケはまず上空を見上げ、目を細めた。

 リケ(山の精霊たちが"監視している")

 魔法や法術、その他、精霊を操作するような"事を起こせ"ば、直ぐ様探知し、ロロ・ウーに知らされる仕組みだろう。また、外部からの精霊操作を遮断する仕組みになっているらしい。ハートのキングからの通信が届かないという理由もつく。リケは小さく溜め息をついた。この山の中で魔法を使うことはロロ・ウーに存在を知られることになる。魔法、アーティファクト、魔導師専用道具一切の使用はできない。

 リケ「ヤレヤレ……ロッククライミングなんて久しぶり」

 近くの断崖の壁に手をかけ、リケはひょいひょいと絶壁を下っていった。

 下ること数十分。月明かりが一切届かない谷底の暗闇。上がっていた煙も晴れ、まだ少し暖かい地面に足をつけると、リケは目を凝らした。暗闇で目を慣らす訓練など一体どんな場面で使うのやらと思っていたが、本当に、日頃の訓練というものは思わぬところで活きてくるものだ。ぼんやりと見えてきた目の前の光景は地面というより、落石の山だった。しかも、どう考えても昔からあるものではない。

 リケ(ウラの爆炎魔法か……?)

 目を瞑り、精霊の動きに感覚を澄ます。

 リケ(…………呼吸、二人分)

 アーティファクトを取り出し、テコの原理を利用してガラガラと巨石をかき分け、いくつか岩をどかした先にリケの探していたものはあった。

 リケ「ウラ助っ!」

 慌てて駆け寄ったその側には見知らぬ少女。リケは一瞬の躊躇の後、まず先に少女の容体を確認した。いくつか骨は折れていそうだが、恐らくウランドがクッションにでもなったのであろう。息はある。

 問題はこの"手のかかる後輩"。

 リケ「脈が弱い……」

 あの高さからの落下であるのにこちらも奇跡的に息はある。しかし落下の衝撃で内臓がどうにかなっているようだ、正確な場所がわからないほどおびただしい出血もある。一刻も早く治癒魔法部隊に応援を頼む必要がある。

 リケ(魔法を使うわけにはいかない)


 リケは少女に目を向けた。

 リケ「魔導師だけど、重体の人が先ね」

 そうしてウランドの巨体を背負うと絶壁を登り始めた。

 リケ「先輩にこんな重労働させてんのも、あの女の子が後回しなのも、全部あんたのせいだかんねっ! 責任とんなきゃいけないんだから! 死ぬなっ! ウランド!」






 岩山を降りロロ・ウーの結界を抜け、負傷人を下ろす、これをウランドとフー2往復。その間に治癒魔法部隊の応援を呼び、リケとトウジロウが取っていた宿に連れ、本格的な治療を開始。カグヤに報告を入れることができるようになったのは空が白み始めた頃だった。

 カグヤから発せられた声色は低かった。

 カグヤ『……治療が済んだらその街の病院にでも放り込んでおけ。それ以上は構わなくてよい。手間をかけたなクラブのエース』

 リケは首を横に降った。

 リケ「いいえ、ハートのキング。どうやら黒い三日月に嵌められて街の警察組織に追われているようです。公共の場に置くのは危険……一度本部に帰還させるべきかと」

 カグヤ『それは認めぬ、エースが目を醒ましたら3日猶予をやるからそれまでに何とかしろと伝えろ』

 即答だった。理由は明解。昨今のトランプのこの特別体勢はハートのエース一点主義。エースが倒れれば体勢も倒れる。そのリスクを背負った上での体勢だった。死ぬまでは敗北は許されない。リケもそのことは十二分に承知していた。だが同時に、今がその"リスク"の時なのではとも考えていた。

 リケ「……いつ、意識が戻るかもわかりません」


 カグヤ『できなければ私が出る』

 エースの敗北、キングの出動、そうなればウランドの責任問題は必須。このような事態を招いてしまったのは――リケは真っ直ぐとした声で答えた。

 リケ「我々諜報の失態です。S1レベルの賞金首ではエースは武器どころか魔法すら使うことは考えなかったでしょう。今回は我々の情報以上の何かがあったはずです。でなければ、」

 カグヤ『ただの後付の言い訳だ。ロロ・ウーに関しては道士協会と我々の圧力に板挟みになったハンターズがしぶしぶトランプが手を出せるSレベルに引き上げたに過ぎん。それ以上の何かがあるであろうことは十二分に予測はできた。慢心し準備を怠ったのはうちのエースだ』

 それでも、諜報クラブ軍としての面目は丸潰れだというのがリケの認識だった。リケは両手を壊さんばかりに固く握りしめ、悔やむように目を閉じ、歯を食いしばった。

 カグヤ『では伝言だけ伝えてくれ、あとは仕事に戻ってよい』

 そのあとしばらく沈黙が続き、再びカグヤの低い声が部屋に流れた。


 カグヤ『…………それと、今一番責任を感じ、敗北を悔やみ、機会さえあればもう一度、と思っているのはうちのエースだ』

 リケは顔を上げた。

 まるで突き放すようなカグヤの言葉たちは、目を醒ませば直ぐ様事態を挽回しようとするであろうウランドの性格を理解してのものだった。上司であるカグヤ自身が出るということは、そんなウランドの仕事に対するプライドを叩き潰すことになる。ウランドが再起不能である場合は自分が出動するなどと軽々言ってのけていたが、カグヤにとっても一体どれ程断腸の思いでの発言であったことだろうか。カグヤはウランドが提示した期限内に目を醒まし、事態の収束をはかると信じている。ウランドもまた、カグヤが軽々しく腰をあげるようなことはせず、自分に任せてくれると信じている。最早リケは二人の間に口出しする隙間すらないと思えた。

 リケ「言伝て、承りました。必ずハートのエースに伝えます」

 カグヤ『頼んだ』






 鬣が空を射るように、水平線から朝陽が顔を出す。


 治療を終え、治癒魔法部隊は去った。簡素なシングルベッドに少女を、部屋の角の折り畳みのサブベッドに(頭と足先がはみ出していたが)ウランドを横たえ、リケ自身は椅子で僅かな仮眠を取った後、宿を後にした。

 朝陽が目に滲みた。


 もしもの時に備え、別の作戦を練ろうと閉店間際の裏ギルドに滑り込み、カウンターに手をかけたその時だった。


 「おう、姉ちゃん」


 いつもなら相手にしないような酔っ払いのオヤジの声。この時ばかりは疲れからか、ついうっかり反射的に返事をしてしまった。

 振り向いた先のその、フロアの奥の暗がりのソファ。三人分はあろうかというソファにずっしりと収まるその巨漢。フェルト生地のようなモジャモジャの髪とモミアゲ、そこから繋がる顎髭、顔を取り囲むそれはまるでライオンの鬣のようだった。

 リケ(ここ数日の裏ギルドでは見ない顔だわ)

 あまりにしつこく手招きするその大男に、新たに見る顔だという好奇心も相まって、リケはその男の向かいのソファに腰掛けた。男は毛むくじゃらの右手を差し出した。リケも当然のように握手に応じたが、丁度そのタイミングで発せられた男の言葉に固まった。


 「ギルティンだ。ねぇちゃん、あんたラッキーだぜ」


 自分は名乗っておきながら、直ぐ様話題をふる。リケに興味がないのか、ただのせっかちか。ジロジロと巨体を観察するリケの様子に、男は自らのラッキーだという発言を不審に思っていると取ったようだった。

 ギルティン「まあそう警戒すんなって。何飲む? オレの奢りだ」

 リケ「……あなたがギルティンさん? 噂には聞いていたけど、楽しい方ね」

 リケは店員に強めの酒を注文した。

 ギルティン「イクねぇ、ねえちゃん。で、オレの噂ってなんだ?」


 ニコリと愛想の良い笑みをたたえ一口酒をふくむと、リケは腕と足を組んだ。

 リケ「私、ラピュータ大陸からやって来た魔薬問屋なの。今はこのパンゲア大陸で人気の商品を買い付けているところなのよ。そこで頻繁に耳にする魔薬の一つがギルティンさん、貴方の"免罪符"。きっとラピュータでも人気が出ると思うわ!」

 ギルティンは悪くない話だと顎髭を擦りながら満足そうにリケを見つめた。

 ギルティン「あんた、名前聞いてなかったな」

 リケ「ケリーよ」

 ガハハと豪快にリケの肩を叩くと、ギルティンは背もたれに身を預け、グラスに並々注がれた酒を一気に飲み干した。

 ギルティン「考えとくよ、明日の晩には答えを出すからまたここに来てくれ」

 リケ「分かったわ」

 席を立とうとしたリケに、ギルティンは人差し指を上げ引き留めた。

 ギルティン「ついでに"フォビドゥンフルーツ"もオススメだぜ、何せ"もうすぐプレミアもん"だ」

 リケ「プレミア?」

 その顔に浮かぶのは不気味さと狂気にの入り交じった真っ黒な笑みだった。

 ギルティン「潰れるからな、"黒い三日月"は」






 雲ひとつない晴天の昼下がり。その訪問者はやって来た。


 「すいませーん、ごめんくださーい」


 町外れの岩山の洞穴。黒い三日月のアジトでは連日組織への加入希望者が後を絶たない。いつものように、適当に相手をして適当に入れる、それだけのことのはずだった。だが、その小太りで丸メガネをかけた青年は違っていた。


 「"免罪符"に興味ありませんか?」

 「はぁ?」


 "免罪符"。商売敵であるその単語に、黒い三日月のメンバーたちは一瞬にしてその青年を取り囲んだ。

 「何だ、てめぇ、ブレーメン製薬のまわしモンか」

 青年は慌てて両手を振った。

 「落ち着いてください、僕は皆さんに最高の儲け話を持ってきたんです」

 「儲け話?」


 今の黒い三日月の売り上げは十二分に贅沢三昧、金を湯水の如く使えるほどだった。これがそれ以上の儲け話であるのであれば、聞く価値はありそうだ。オマケにリーダーであるロロは夜のうちに再び街に出かけていった。話を聞くだけなら、別にそれだけなら。そんな空気を読んでか青年は話を続けた。

 「黒い三日月で優秀なみなさんへ、始めに申し上げますとこれはヘッドハンティングです。お察しの通り私はブレーメン製薬の者ですが、これほど優秀な皆さんをこのようなパンゲア大陸の端で留めておきたくはない、我々が目指すところはズバリ世界進出です」


 確かに、黒い三日月はパンゲア大陸南部を転々と売上至上の現状満足。特に上を目指すというわけでもなく、たまに売上が下がっても生活に困るような大損失がない限りは痛くも痒くも思わない。ある程度メンバーが集まった当初からそのようなスタンスだったが、気づけば今ではパンゲア大陸南部ナンバー1の巨大組織。魔薬業界トップクラスの手腕、権力、プライドが自分たちにはある。世界という言葉が男たちに火をつけた。しかし、そんなメンバー達の様子に、一人が言った。

 「まてまて、世界なんて、そんな上手い話があるか! 単に俺達を潰そうとしているだけかもしんねぇ」

 「そうだ! 第一ロロさんが許すはずが無ェ」


 丸メガネの青年の口の端が、誰にもわからないほど一瞬、つり上がった。


 「皆さんを引き抜くためには、やはりロロ・ウーの報復が障害ですよね」

 メンバーたちは笑った。

 「俺らに対する報復は無ェ、心配なのはこれから世界進出する"はずだった"ブレーメン製薬さんがブッ潰されるんだろうなぁと」

 青年は丸メガネを上げ、ニヤリと笑った。

 「逆に我々が、そのロロ・ウーをブッ潰したら……?」

 「え……?」






 火事のような赤い空。


 絶え間無く耳にまとわりつく男たちの低い讃美歌。


 生暖かい風。



 フーが体を起こすと、枕がわりに頭の下に敷かれていたのは見覚えのあるカーディガン。辺りを見回すと膝丈ほどの草がそよそよと流れる草原にぽっかりと白い丸石が敷き詰められた砂利道。その道の真ん中にフー自身は倒れていたようだった。

 フー(死後の世界ってやつ……?)

 考えを振り払うようにフーは頭をかきむしった。

 フー(んなわけあるか! 意識があるってこたぁ天使に食われてねえってことだろがっ! よく考えろ!)

 ガサガサと草をかき分ける音。それはフーのもとに近づいてくる。フーは拳を構えた。


 「おや、お目覚めですか?」

 草原から現れたのはウランドだった。フーは溜め息をついて、地べたに座り込んだ。

 フー「脅かすなよ」

 悪びれた様子なくウランドは肩を竦めた。

 ウランド「それは失礼」

 フー「つーか、ここどこ?」

 ウランド「私も気がついたらここにいました。あまり離れない範囲で辺りを見て参りましたが、少し離れたくらいでは景色は一向に変わりません」

 そうしてフーに手を差し出した。

 ウランド「歩けますか?」


 フーはゴロリと砂利道に転がった。

 フー「あたしもういいや、あんた一人で好きにやんな」

 てっきり「そんなこと言わずに」だとか「なぜそんなことを」だとか「ああわかりました」だとかいう返事を予想していたが、少しの沈黙の後ウランドから返ってきた言葉は、フーにとって想定外のものだった。


 ウランド「……異性にフラれたくらいで、ヤケになっていては貴女の時間が勿体無いですよ」


 フーはあからさまに不機嫌な様子でウランドに目を向けた。

 フー「うっせーなっ! あんたみたいな女に縁がなさそうなオッサンに何がわかるんだよ!」

 ウランドはフーの前でしゃがみ、左手の薬指の指輪を右手でクルクルと回した。

 フー「……随分奇特な女もいるもんだ、お幸せそうで何より!」

 ウランド「とはいうものの、実はあまりうまくはいっていません」

 フーは突然何を話し出すんだと訝しげに眉を寄せた。

 ウランド「彼女はさっさと結婚して子どもを生んで、周りの女性と同じ幸せを一刻も早く手に入れたいと願っています。対して私はまだ結婚はできないけれど、待って待ってと無理矢理引き留めています。どちらも自分本位の気持ちを押し付けあっていて、互いを思いやる安定した関係が築けていません」

 フー「……それがなんだよ、あたしに関係ないじゃん」


 ウランド「貴女とロロ・ウーとのやり取りを拝見して感じたのですが、貴女は自分の中で作り上げたロロ・ウーの人物像を彼に押し付け、その上でさらに好意を押し付けているように見てとれました」

 あまりの暴言。思わずフーは立ち上がった。

 フー「押し付けってテメェ! あたしが一体何年、」

 ウランド「彼はちゃんと言っていたではありませんか、貴女の思う自分は全部嘘だと」

 フーの目からポロポロと涙が零れ始めた。言い返したいけれど、言葉が出てこない。

 フー「……うー」

 ウランドも立ち上がり、フーの頭を優しく撫でた。

 ウランド「この恋愛から学ぶことはたくさんあったかと思います、その上で貴女には前を向いて歩いてほしい」


 深く長い溜め息をつくとフーは袖で涙を拭った。そうしてふと気づく、服が、祖国の民族衣装であることに。

 フー「……あ? なんだこりゃ」

 そうしてジトリとウランドを睨み付けた。

 フー「……オッサン……あたしの服どうしやがった」

 ウランド「何を疑っておられるのです、こちらがお伺いしたいですよ、私が貴女を発見した時には既にその服を着ておいででしたよ」

 フー「んなわけあるかっ! こんの変態やろーっ!」

 勢いよく蹴り上げられたフーの細足をがしりと受け止めつつ、ウランドは慌てふためいた。

 ウランド「本当ですって! もしかして"この変な場所に飛ばされた"ことと関係があるかもしれませんよ」


 フーはピタリと静かになり、鼻を啜りながら辺りを改めて見回した。

 フー「……まさか……」

 ウランド「お心当たりが?」

 フー「オッサン、あんた今魔法使える?」

 その問いに、ウランドも改めて辺りを見回した。

 ウランド「風が吹いているのに、精霊がいませんね」

 フー「草も土も、生きてる感じがしねぇ、精霊が存在しない世界、つまり」






 ウランドは手を叩いて感心したように辺りをしげしげと見渡した。

 ウランド「あ、死後の世界ってやつですか」

 フー「ちげぇし」

 腕を組み、フーもまた、再びあたりを見渡した。

 フー「神使教でも死後の世界なんて幻想だ、死んだら魂は天使のエサになるだけだからな。だがある意味うちらはそれに近い状態」

 ウランド「ええとつまり?」


 フー「螺羅に"魂"から"精神体"を引き抜かれたんだ。そしておそらく螺羅の"精神世界"にぶちこまれた……!」


 しばしの沈黙。ウランドは困ったと肩を竦めた。

 ウランド「……よくわかりません」

 フー「あーっと、魔導師先生にわかるように説明するとだな、」


 

 人間を構成する三要素"肉体"、"こん"、"はく"。

 肉体は物質。この世界で物質を構成するのは精霊であり、魔法や法術はこの肉体が存在する世界にいるからこそ使えるものである。

 そして魂は精神。肉体とは魄によって繋がれている、その人がその人たらしむ中核。

 さらに、この魂は、意識の奥底、無意識、本能である"精神世界"と、現実と精神世界との整合をとり現実生活を送るその人自身、自我である"精神体"とに分かれる。


 フー「現実世界にあるうちらの身体は魂から自我だけを引っこ抜かれた状態なわけ」

 ウランド「えーと、本能だけそのコン(魂)? に残っているんですよね? 本能のままに身体は暴れたりしませんか」

 フー「安心しな、精神世界だけじゃ身体は動かせない、寧ろヤバイの精神体むき出しのうちらのほうさ」

 ウランド「どういうことですか」


 フー「説明した通り、精神体は現実世界の規範や常識と、精神世界の本能の欲求とに直面し、内外との調整をはかる。たとえばトイレに行きたい(精神世界からの欲求)けど近くにトイレがない(現実世界の規範)から我慢する(精神体による調整の結果)、とかね。今ここを現実世界だと思い込んじまって飲まれると、精神体つまり自我が保てなくなり、崩壊、消滅する」

 ウランドはきょとんとフーを見つめた。

 ウランド「保てなくなる理由はよくわかりませんが、それは単にここを現実だと思い込まなければいい話では?」

 フー「精神体の機能は順応、適応だ。そのうち今そう思っていることのほうがウソだと思えてくるはずさ。ちなみにあたしがこの服装なのは魂魄レベルでのボディイメージだろう、あんたの格好が変わってないのは単にあんたの自分のイメージが現実そのものすぎなんだよ」


 ウランドは肩を竦めて溜め息をついた。

 ウランド「話がオカルトでブッ飛びすぎていてサッパリですが、ようは自我を保てているうちに突破口を見つければよいということですね」

 フー「あんたの話のがブッ飛んでるよ、螺羅の術だ、突破口なんてあるはずが、」

 ウランドはニコリと笑った。

 ウランド「そんな思い込みは後にして、とりあえず道なりに進んでみましょう」







さて、なんだかよくわからない状況に置かれてしまったウランドとフー。

ウランドがよくわかっていないので、読んでいていろいろ腑に落ちない読者様もここはフーに任せておきましょう。(それ以前のツッコミどころがあったらすみません)


そして、ギルティンと出くわしてしまったリケ。また会う約束を取り付けましたが、トウジロウ不在の今、危険な目にあわなければよいのですが。。


そして黒い三日月に忍び寄る魔の手。


事態がいよいよ動き出します。


ちなみに巡礼船がいつ出るのかは次話でその様子を書くつもりです。



次回は1/20に28.1話、ロロの精神世界に閉じ込められたウランドとフーのお話です。

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