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W・B・Arriance  作者: 栗ムコロッケ
悪魔の薬編―パンゲア大陸到着編―
47/72

25.4.trick beat―びょうきになったかげ4―

リンリンを人質にとったアズ。

アズを殺し、人化の術を完成させたいリチャード。

人間に戻りたいジェフ。

はたしてシェンはどうするのか?



 吸血鬼排他主義団体"ヴァンピール"本部 応接間

 部屋の中央に配置されたアンティークのソファ。足を組み悠然と座するスーツの男、ヴァンピール代表のリチャード。対面のソファにはシェン、その後ろにはジェフ。それを取り囲むようにソファの周りに立つ複数のヴァンピール幹部。一同の視線を集める壁際の"アズ"、そしてその手には――





 リンリン「握りしめないでよっ! 潰れちゃうでしょっ!」


 アズは人質として掴んだ妖精を、リチャードに翳した。

 アズ「このまま逃げさせて貰う」

 リチャードは笑った。

 リチャード「人質をとったつもりか?」

 シェン「いやいや、人質でしょ!」

 ジェフはサーベルを抜いた。リチャードは手のひらを向けてジェフを制止した。

 リチャード「お前はすべての"半吸血"の夢を背負い、死ぬために生まれてきたのだ」

 アズは首を何度も横に振った。その頬を涙が伝った。

 アズ「いやだ……いやだ……」


 シェン「ちょっとタンマ!」


 場の一同がシェンに注目した。






 シェン「アズを殺しても、エミリーの"魄"は欠けた部分アズを探し続ける、魄が肉体から剥がれれば、結局エミリーも死ぬ、意味がない」

 クリーム色のローブの男たちはザワザワとざわめき始めた。リチャードの声は低かった。

 リチャード「私の理論をお前の訳のわからない"推論"で貶すつもりか」

 シェンは呆れたように笑った。

 シェン「いやいや、推論はそっちでしょ?」

 リチャードもまた笑った。

 リチャード「確かにその通りだ、"まだ"証明できてはいないな……ジェフ!」

 ジェフ「あー、はい」

 リチャードの蒼白い指がジェフの手にしていたサーベルを指した。

 リチャード「その剣で私の理論を証明しろ」


 シェン「ダメだ、ジェフ、エミリーが死んじまう」

 困った、とジェフは頭を掻いた。

 ジェフ「しかし代表、本当にその桃花源人の言うように、エミリーも死んでしまうかも知れませんよ」

 リチャード「エミリーくんはほんの少しの可能性でも賭けたいと自ら被験者に志願した、お前はその可能性を潰すつもりか?」

 シェンは一呼吸も入れずに反論した。

 シェン「その理論に人化の可能性なんてないよ」

 リチャードは鼻で笑った。

 リチャード「お前はファンであるグレイ氏を用済みにされるのが困るからそんなことを言っているだけだろう」


 ここに来て、取り入るための"グレイのファンである"という発言が裏目に出てしまった。よくよく考えれば"ヴァンピール"は吸血鬼に恨みを持ち、狩る団体だ。いずれはグレイも狩る対象になるということは十分想定できたはずだ。もう少し考えればもっと良い方法があったはずだった。シェンは自分のやり方を少し後悔した。

 当然、人間に戻って、吸血鬼を根絶やしにしたい"半吸血"たちにとって、リチャードの発言はシェンの意見を疑わせるのに十分であった。


 ジェフはエミリーにサーベルを構えた。

 シェン「ジェフ! やめろ!」

 ジェフはシェンに見向きもしなかった。

 ジェフ「……お前にはわかんねえよ、人間」

 リンリン「やめて! モリンジを殺さないで!」






 その時だった。ゴキゴキと骨がこすれる音を鳴らし、金の髪の少女の姿は、元の狸の化け物の姿に戻った。


 ジェフ「は?」

 シェンは窓の縁に飛び付き、外を見た。

 シェン「"アズ"が乗っ取りを解除したんだ!」

 リチャードはため息をついた。

 リチャード「また逃げられたか」


 窓の外――霧に包まれた岩壁の洞穴は薄暗く湿っており、天井には無数の蝙蝠が、床には多くの昆虫や爬虫類が生息していた。アズの姿が見えないのは薄暗さのためか、それとも、

 シェン「……もし他の生き物を"乗っ取"ってたら、もう見分けがつかない」

 ジェフも窓の縁に手をかけた。

 ジェフ「野放しはマズイ、誰かを"吸血"なんてしたら……」

 リチャード「新たな"半吸血なかま"の出来上がりだな」


 何呑気なことを言っているんだ、とジェフは心の中でため息をついた。

 ジェフ「代表、"アズ"を探し出す方法、何か無いんですか!」

 リチャードは口髭を撫でながら黙り込んでしまった。

 ジェフ(おいおい……)


 シェン「……すごく危険だけど一か八か方法がある」






 ジェフ「なんだ?」

 シェンは腰に手を当てた。

 シェン「魂体の居場所がわかるのは"魄"だけだ」

 ジェフ「……まさか」

 自らの手のひらを見つめながら、シェンは答えた。

 シェン「エミリーの"魄"に探させる」

 リンリン「エミリーって子から"魄"を剥がすって言ってる!? そ、そんなことしたら死んじゃうよ!」

 ジェフ「お前が恐れている事態じゃねぇのか?」

 シェンは苦笑した。

 シェン「"死"ってのは肉体が致命傷を負い、魄魂との結合部分ががなくなることだ。けど…………平均3分、魄と肉体は剥離状態を継続できると言われてる。それまでにアズを探す」

 あきらかに無茶な制限時間だった。それは、発言したシェン自身十分わかっていた。だが、これしか方法はない。シェンは汗に濡れた拳を握りしめた。

 シェン(考えろ……3分以内で、アズを探す方法……)


 リンリンは額から汗が伝うシェンの横顔を黙って見つめていた。






 リチャードはさも興味がなさそうにソファにもたれかかり、足を組み替えた。

 リチャード「探して、当然殺すのだろうな?」

 シェン「だーから! ダメだって言ってるでしょ!」

 リチャードとシェンの間にバチバチと火花が散っているようだった。

 ジェフはガシガシと頭を掻き毟った。

 ジェフ「ああもう、とにかくエミリーのところへ行くぞ!」






シェンはどうするのか?

シェンを見つめるリンリンは何を思っているのか?

リチャードとシェンの意見に板挟みのジェフの選択は?

リチャードの願いはかなってしまうのか?


そして、エミリーとアズの運命は?



次回は11/4 25.5話更新予定です。

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