9.the Sleeping Cherry Blossommes
11月の本編。
真っ黒の雨雲に雷電が伝う。
それは時に光の矢となり地面に突き刺さり、激しく打ちつける雨は岩肌をえぐるように止めどなく降り続いた。
エオル「あー、もう完全に視界ゼロだわ」
よしの「先ほどまで快晴でしたのに……」
フィード「ま、山の天気は変わりやすいって言うしな」
ヴィンディア連峰 "乗り越えた先の楽園" キーテジ登山道 5合目の岩場の洞穴。
天候が変わる気配を察知し、とりあえず見つけた洞穴で待機していたら案の定、このスコール。
エオル「学生時代の演習って意外と役に立つね」
フィード「山にジャングルに海のど真ん中、ただ単に鍛える目的と思ってたから、余計な知識だと思ったけどな」
意外や意外、とポリポリと乾物をつまみながらフィードは滝のような雨を眺めた。
エオル「ってフィード! 今ご飯食べたら早々に無くなっちゃうでしょ!」
フィード「うっせー、腹が減っては戦は出来ぬっつーだろ。ヒマだし」
エオル「じゃあこれからの予定について整理しよっか」
エオルは真新しい世界地図を広げ、地図の左下の卵形の大陸の中北部、中央部に位置する国の、そのまた北部を指した。
エオル「今はマーフ国北部ヴィンディア連峰の――あ、もうすぐ国境じゃない?」
フィード「山の中にも国境ってあるんだなー」
よしの「国境?」
目を真ん丸と地図を覗き込むよしのに、エオルはクスリと笑った。
エオル「ジパングは島国だもんね。国と国が陸でつながってるって感覚ないのかも。国境っていうのは、国と国との境目のことだよ。その境目を越えると隣の国になる」
よしの「国との境目……線か何かが引いてあるのですか?」
フィード「ワハハ! だと面白えなあ!」
やがて雨が止み、雲間から光が差し始めた。
エオル「どう? 風の精霊は」
フィードは空を見上げた。
フィード「|風の精霊(イタヅラ小僧)共は満足したってよ」
その一言に天候の回復の確信を得、エオルは荷物をまとめ始めた。
エオル「行こう!」
―――― the Sleeping Cherry Blossommes(眠れる桜) ――――
シェン「薬物事件についてのタレ込み?」
リシュリュー「はい」
パンゲア大陸 ヴァルハラ帝国 グラブ・ダブ・ドリッブ魔導師協会管轄地区
対魔導師犯罪警察組織「トランプ」本部 対魔導師犯罪第1軍「スペード」会議室――
古めかしい円卓に座る3人。
赤茶色のツンツン頭に顔を斜めに縦断する大きな傷、灰色の釣り目の小柄な男、スペードの将軍 リー・シェン。
黒髪黒目の坊主頭にジャラジャラピアス、筋骨隆々とした大男、スペードの副将軍 市松桃次郎。
プラチナブロンドをきれいにまとめあげたお団子頭に抜けるような青い瞳の落ち着いた美女、スペード第一秘書官 リシュリュー・ラプンツォッド。
リシュリューはキングとエースを交互に見、口を開いた。
リシュリュー「マーフ国のヴィンディア連峰の麓にキーテジという宿場町があるそうで。そこで薬物によるショックで女性が一名亡くなったそうなのですが、その女性に薬物を渡した人物が……W・B・アライアンスによく似ていたと」
同時にギシリとテーブルに身を乗り出す音と背もたれに寄りかかる音が鳴った。
シェン「それマジで!?」
トウジロウ「ほーぅ」
リシュリュー「ただ、一つ。W・B・アライアンスは2人組ですが、情報によると、3人組だったそうです」
シェンは顎をさすった。
シェン「未確認の仲間がいるってことかもな……」
リシュリュー「その情報が本当に信頼できるものかは、わかりませんが……」
シェン「確かに……けどマーフ国内での情報だからな、目撃情報がマーフ国のアートリー、カーシーと来てるから、おかしくはないね」
困ったわ、とリシュリューは眉をひそめた。
リシュリュー「ただ、情報の裏付けが……」
シェンは頷いた。
シェン「ああ。諜報はもう手が回らない」
「ちょっと! あんた何か言いなさいよっ!」
突然、部屋に可愛らしい少女の声が響いた。その問いかけにトウジロウは不機嫌そうに睨みつけた。
トウジロウ「あぁ?」
その視線の先―シェンの肩の上には、手のひら程の背丈の翅の生えた少女。
シェン「リンリン、お前いたのか」
リンリン「シェンってば、ひどーい!」
シェンは悪い悪いとからかうように笑った。
リンリン「じゃなくてぇ!」
そして両手を腰に当て、トウジロウの鼻先に飛んだ。
リンリン「何なのさっ! さっきっから黙りこくっちゃって!」
トウジロウ「ただおとなしく話聞いとるだけやんけ」
リンリン「アンタも意見出しなさいよって言ってるの!」
シェンはまあまあ、とリンリンの羽をつまんで引き寄せた。
シェン「コイツはいつもガンガン喋ってるお前が、今日はハナから黙ってて珍しいって心配してんのさ」
リンリン「心配なんかしてなーいっ!」
トウジロウ「意見なあ……」
そうしてテーブルに足を乗せ、軽くため息をついた。
トウジロウ「情報ちゅーよりウワサレベルの話やんけ。こんなんマトモに議論してもしゃーないわ」
リンリン「じゃあ何っ!? リシュリューが持ってきた情報ムゲにするつもりっ!」
トウジロウ「持ってきたのはラプンツォッドやのーて、情報提供者やで」
リンリン「うっさーい!」
あと一歩でトウジロウに飛びかかろうとする所を、シェンはリンリンの羽を再びつまんで抑えた。
そうして不敵な笑みを浮かべ、トウジロウに灰色の瞳を向けた。
シェン「……で?」
トウジロウもニヤリと笑みを返した。
トウジロウ「ホンマかどうかわかれへんから、とりあえず行ってみるてーのでどや?」
腹を抱え笑いながらシェンはパチンと指を鳴らした。
シェン「上出来! そうこなくっちゃ! アーティファクトは――」
トウジロウ「ゼレルのおっちゃんにW・B・アライアンス関連は許可出さへん言われてんねん。これまでの話鵜呑みにしてくっつけると、メモリアリスタルに映ってたっちゅーやつがW・B・アライアンスの3人目のメンバーゆー可能性が高いやん。ソイツさえ"気をつけ"れば、他は大したことないわぃ」
リンリン「そうやってなめてかかるといつか痛い目みるわよっ!」
トウジロウはニヤニヤしながらわざとらしい口調で答えた。
トウジロウ「生まれてこのかたナメてかかって未だに痛い目みたことないねんけど~? どないしたらええ? ムシっころ」
今にも湯気を吹き出しそうなほど顔を真っ赤にして、リンリンはシェンの手の中でバタバタと暴れ出した。
リンリン「きーっ! だれがムシっころだよー!」
トウジロウ「お前やお前」
シェン「アハハ! かわいそうにな!」
リンリン「言ってることと顔が合ってないっ!」
リシュリュー「みなさん」
シェン、トウジロウ、リンリンは同時にリシュリューを見た。
リシュリュー「まとめますと、エースのアーティファクト許可申請はなし、部隊編成は一般8名、部隊長格2名計10名で特に指名は無し、交通経路はマジックワープに……」
トウジロウ「あーもーええ、全部お前に任すわ」
至極めんどくさそうに「はよいけ」と追い払うしぐさ。それを目の端に、リシュリューは小さくため息をつくと「失礼します」と急ぎ足で立ち去った。
シェン「あ」
トウジロウ「なんや」
シェン「リンリン、ちょっとリシュリューまでお使い頼まれて」
大好きなシェンからの頼まれごとにキラキラと目を輝かせ、リンリンは飛び跳ねた。
リンリン「シェンのお願いなら!」
そうして小さく畳まれたメモ紙を受け取ると、リンリンは意気揚揚と透明の羽をパタパタと動かし猛烈なスピードで飛んで行った。
トウジロウ「何やったん」
口の前で人差し指を立て、シェンはニヤリと笑った。
シェン「秘密」
トウジロウは興味を失った様子で「さよか」と適当な相づちを打つと、徐に椅子から立ち上がった。
シェン「準備が整い次第、早速よろしく」
トウジロウ「了解」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、一見やる気なさそうな相づち。
だが、その瞳には「ナメている」の「ナ」の字すら微塵も無かった。
◆
小石の落ちる僅かな音に、よしのは後ろを振り返った。
岩しかない後ろを気にするよしのに、不思議に思ったエオルが声をかけた。
エオル「どうかした?」
よしのは「なんでもない」と小さく手を振った。
よしの「小石が上から落っこちた音だったみたいです」
エオル「小石……?」
上を見上げると、左右は高くそびえ立った天然の岩壁に阻まれ、屋外だというのに、空が狭い。
エオル(まったく……山の中だってのに、谷底にいるみたいだな……)
そして2人が立ち止まっていることに気にも留めず、ズカズカと前を行くフィードに、声をかけた。
エオル「フィード! 上空に風ある?」
フィードはは2人の遥か前方で面倒臭そうに空を見上げた。
すると四角い何かが空に浮かんでいた。
それは徐々に大きさを増し――
フィード「うおっ!」
間一髪、空から落ちてきた"それ"をよけた。"それ"は大人が両腕を広げたくらいの木の板だった。
エオルは背中に背負った剣を抜いた。
よしの「か……看板?」
落下物に近づこうと2、3歩歩くと、よしのの意思とは関係無しに、突然ヤサカニが発動した。
よしの「えっ?」
エオル「いてっ!」
近くにいたエオルは突然発動したヤサカニの結界に弾き飛ばされた。
よしの「あわわ! エオルさ……」
頭上に鳴る鈍い音。
よしのは頭上を舞うフィードを見た。
フィードはクルリと空中で一回転すると、よしのの横に着地した。
同時によしのを挟んでフィードの対面に、何か大きな物体が激しく転がった。
フィード「上だ!」
その言葉に、よしのは反射的に見上げた。
ギャアギャアと雨粒のように落ちてくる鳴き声。
人間の胴体の腕から先が巨大な翼、下半身は猛禽類の姿をした"鳥"が、空に網を張ったように無数に旋回していた。
続いてすぐ近くでギャアギャアというあの声が聞こえた。
よしの「エオル様!」
エオルに二匹の"鳥"が群がっていた。
フィード「構うな、心配ねぇ」
エオルはヤサカニに弾かれた衝撃で仰向けになったところを襲われていた。
しかし、器用に何度かバック転し、"鳥"たちと距離をとると、背負っていた剣を引き抜きバッサバッサと紙切れのように斬り倒した。
エオルは目線を上向けたまま、剣を構えた。
エオル「ハーピーだ」
よしの「え……」
フィード「注意書きの一つもなかったぞ。不親切な山だな」
エオル「もしかしてそれじゃない?」
フィード「あ?」
エオルが指差した先の、先ほどの落下物をフィードは足でひっくり返した。
小さな砂埃を上げ、そこに書かれていたものは――
"この先危険。ハーピーの巣あり。回避ルートはこちら→"
フィード「おいいぃ!」
エオル「ハハ! まあまあフィード! 体動かすのにはいいハイキングコースじゃない」
フィードは吠えた。
フィード「なにがハイキングだ! 時間が無ぇんだよ! とっとと消えやがれ!」
そうして紡がれた呪文に呼応し、辺り一帯の火の精霊たちが舞い始めた。
フィード「火炎龍!」
激しい轟音を立て、フィードの手のひらから巨大な炎の柱が上空に向かって真っ直ぐと伸び、ハーピーたちを次々と焼き尽くした。
ボトボトと、火だるまの塊が辺りに落ちていった。
エオル「ここぞとばかりにこんな派手な魔法使ってー……」
実に満足そうに、してやったりとフィードは顎に手を当てた。
フィード「俺様の通り名にふさわしいやり方だな」
エオル「……トオリナ?」
コートのポケットから、クシャクシャ丸められた紙がエオルに投げつけられた。
それはフィードの手配書だった。
エオル(なんか……この短期間に額が異常に上がってるんだけど)
フィード「そこじゃねぇ!」
見て見てとフィードは手配書の上の方を指差した。
エオル「……通称"火葬屋"フィードォ?」
すぐ隣から、キラキラと輝いた視線を感じた。
フィード「な! かっこいいだろ」
エオル「しょうもなっ」
そうしてそのまま、まだ燃えているフィードの炎に紙を投げ込んだ。
フィード「なーーっ! てめっ! 何しやがるっ!」
エオル「さあ、よしのさん! 行こう!」
フィード「てめーっ! 無視すんなっ! このやろっ!」
エオルは視線をある一点に向けたまま、フィードをつついた。
フィード「んだよ!」
その視線の先にはよしのの姿。
よしのは無残な姿のハーピーたちに、静かに手を合わせていた。
エオルはフィードをじろりと見た。 フィードは面倒くさそうなわざとらしい溜め息をつき、よしのに近づくと軽く小突いた。
フィード「おら、メソメソしてねえで、とっとと行くぞ」
よしの「はい」
そうして振り返ったその表情に、フィードは少し驚いた。
一瞬誰だかわからなかった。
てっきり泣いていると思ったその瞳は強く、はっきりと前を見据えていた。
まじまじと顔を覗かれ、よしのは首を傾げた。
よしの「どうされました? ご出発……」
突然、思いついたかのようにフィードはよしのにヘッドロックをかけた。
フィード「よしののくせに生意気だっ! 泣かしてやるっ!」
よしの「きゃー!」
ヤレヤレと、エオルは溜め息をついた。
エオル「誰だっけ? 急ぎだって言ったのは?」
登山再開3時間経過――
ゴツゴツとした岩場は想像よりはるかに足場が悪く、山を登るにつれ、それは巨石の群と化し、平地の一歩を進むのに、大岩一つ超えなければならないほどであった。
しかし、常人なら登山ルートと思わない道でも、魔導師であるフィードとエオルにとっては全く苦にならない"道"であった。
ピョンピョンとバッタのように次から次へと岩を飛び移り、むしろこれまでより登山の速度は倍になった。
そのような中、エオルに抱えられたよしのがおずおずと口を開いた。
よしの「あの……」
エオル「ん? 疲れた?」
よしの「いえ、その、」
エオル「なあに?」
よしのは意を決して思ったことを口に出した。
よしの「山道ではないように思うのですが……」
エオル「……んん?」
立ち止まり、あたりを見回す。拓けた視界は地面すら見えぬ、巨石の海の上。
ごくごく一般的な意見を言われて初めて気づいた。
難なく通れてしまうため、何も疑問に思わなかったが、
エオル「フィード!」
はるか先を行くフィードを呼び戻し、近くの一番大きな岩によしのを下ろした。
フィード「今度は何だよ」
エオル「何も考えずに登ってたけどさ、登山ルート外れてない?」
フィードは辺りを見回した。
ボコボコと岩が乱立した、まともな人間は通れそうにない景色。
フィードは頭をポリポリとかいた。
フィード「っかしーな。ハンチング野郎が看板に沿ってけば大丈夫とかっつってたのによ」
看板という単語に、エオルはイヤな予感がした。
エオル「もしかして、看板ってハーピーたちが荒らしちゃったんじゃない?」
フィードは先ほど自分の脳天から降ってきたものを思い出した。
フィード「確かに。ここまで来て一個もないっておかしいよな」
エオル 「山の地図は?」
フィードは胸をはった。
フィード「無え」
――間――
エオル「はい?」
フィード「看板あるっつってたからよー。だったら地図なんて余計だろ~? 節約だよ節約」
がっくりと肩を落とし、エオルは呆れ果てた。
エオル「君ね……あれだけハンチングのおじさんのこと信頼してなかったってのに……」
よしの「お二人ともっ! いい加減にしてくださいましっ!」
2人の魔導師は同時にキョトンとよしのを見つめた。その口はぽっかりと開いていた。
よしのはにっこりとたんぽぽのような笑顔を向けた。
よしの「私理解しました。お二人が喧嘩なさるとき、止めなければならないのは私だと」
エオル(うっ……)
フィード(ぐっ……)
よしのは続けた。
よしの「過ぎたことは反省として後に活かせばよいではありませんかっ! それより、今どうすべきかを考えましょう!」
エオル「ご……ごもっともです」
フィード「フン」
フィードはエオルの後ろから首に腕を回し、よしのに背を向けた。
フィード「一体どうしちまったんだよ、ヤツは」
エオル「眠れる獅子を目覚めさせちゃったみたいだよ、俺たちは」
フィード「ハア!?」
エオル「キーテジの町での俺たちの大ゲンカで、自分なりに何とかしなきゃと思ったみたい」
フィードは一瞬目を見開き、その顔はすぐに緩んだ。
エオル「何笑ってんの」
フィード「いや」
フィードはエオルから腕を放した。
そうしてよしのの頭を軽くポンポンと撫でると、「お前らここでちょっと待ってろ」と一言残し、どこかへ跳び去った。
よしのは訳が分からないと呆然としていた。
後ろから、クスクスとエオルの笑い声が聞こえた。
よしの「あの……フィード様は……」
エオル「嬉しかったみたいだよ」
よしの「私、怒ったのにですか?」
エオルは頷いた。
エオル「もっといっぱい構ってあげて。あいつ、構ってもらいたがりだから」
よしの「はあ……」
ニコリと微笑むと、エオルは下を指差した。
エオル「座ろっか」
鼻腔に広がる山の清々しい新鮮な風。肺を、髪を、全身を清めてくれるような。
風の音以外何もない、だが心地の良い静寂。
その安堵に包まれた空間は、ふと、いつも外に向いていた意識が自分の中に向かせた。
よしのはうつむいた。
よしの「……ご迷惑ではありませんか?」
エオル「え?」
よしの「私……」
エオル「最初はさ、」
思いがけず話を切り出され、よしのは不思議そうにエオルを見上げた。
エオル「本当は人助けのつもりだったんだ」
微笑み、エオルもまたよしのを見た。
エオル「よしのさんのこと。でもさ、」
日差しの気持ち良い大岩の上で「よっ」とエオルは手足を伸ばして大の字になった。
エオル「むしろいっぱい助けられてるのはこっちだった」
予想外の言葉に、よしのは慌てふためいた。
よしの「そ、そんな!」
エオルは太陽に向かってにっこりと笑った。
エオル「今はもう、よしのさん無しじゃW・B・アライランスは成り立たないよ。多分フィードのやつも同じこと思ってるよ」
そして再びよしのに向けられた笑顔。それは心からのものだった。
エオル「よしのさんが俺たちについて来てくれるのと一緒で、よしのさんの目的は俺とフィードの目的!」
少し間をおいて、今度は苦笑した。
エオル「……あ。ちなみに俺もフィードも旅とか初めてで、……こんなこと(遭難?)とか……、頼りないけど、これからもよろし……」
そうして見上げたよしのの顔にエオルはギョッとして固まった。
よしのはポロポロと大粒の涙を零していた。
エオル(え? え? 何で?! 俺なんか悪いこと言った!?)
慌てて起き上がり、ハンカチを探した。
エオル「えと……よしのさ……」
その時だった。遠くで突然の爆音。
エオル(あーもー……何してんだか)
よしのは鼻をすすった。
よしの「フィード様ですね」
エオル「うん……行かなきゃ……とりあえず、何か悪いことしたなら謝るよ、ごめんね」
そんなことはないと、よしのは首を何度も横に振った。
よしの「いいえ! こちらこそ申し訳ありません。嬉しくて……」
そうだったのかとエオルは安堵した。
エオル「そっか」
よしのは笑った。
よしの「これからも、宜しくお願いいたします」
エオルも笑った。
エオル「こちらこそ」
エオルは立ち上がり、よしのに手を差し伸べた。
エオル「さあ、行こう!」
よしの「……あ!」
エオル「へ?」
突然、フィードがエオルに激突し、2人は盛大に吹っ飛んだ。
よしの「あわわ……お二人とも」
エオル「いって~……」
激突の衝撃などものともせず、フィードは勢いよく起き上がった。
フィード「おい、やべえ!」
エオル「なにがさっ!」
よく見るとフィードは髪を乱し、服は破れ、傷だらけだった。
フィード「トランプだ。あっちの登山ルートに張ってやがった!」
エオルは全身の毛が逆立つのを感じた。
よしの「フィード様! お怪我を…」
フィード「かすり傷だ。それよりここを離れるぞ!」
言い終える前にフィードは岩場を跳び去った。
エオルもよしのを担ぎ、フィードの後を追った。
エオル「ちょっと、焦りすぎじゃない?」
フィード「一つ言い忘れてたことがある」
エオル「なに?」
フィード「奴らによしのが見つかったらやべえ」
よしの「わ、私ですか?!」
エオル「ああ……確かジパング人を人質とかってことにしてるんだよね」
フィード「それはアカデミーにしか声明を出してねぇんだよ」
どういうことかとエオルは眉を寄せた。
フィード「トランプに出してるスパイからの情報によると」
エオル(スパイーーー?! 他にも仲間がいるってこと?)
フィード「どうも、アカデミーの奴らはジパング人の件について、トランプに隠蔽してるっぽい」
エオルは考えを巡らせた。
エオル「……もしかして、神使教との摩擦を恐れてトランプには隠してる、いや、隠そうとしている……?」
砂の大河でのアカデミーからの刺客を思い浮かべた。
エオル(マスター・ガルフィンがあくまで自首に拘った理由……なんか、繋がってきたけど……)
フィード「ジパング人がいると分かりゃあ、トランプからの追っ手が激しくなる。できればそれは避けたい」
エオルはフィードの背中を見つめた。
エオル(なんでトランプには声明を出さなかったんだろ?)
しかしそれは結局"なぜ犯罪魔導師でいなければならないのか"に繋がる話。フィードはまた答えないだろう。
それより今はこの状況を何とかするのが先だ。
ひとまずエオルは気持ちを切り替えることにした。
突然、地鳴りが響き、頭上から巨大な岩盤が倒れてきた。
フィードはコートを脱ぎ、エオルに投げ渡すと、呪文を唱え始めた。
エオルはフィードのコートをよしのにかぶせた。
フィード「爆炎破!」
頭の割れるような轟音とともに、目の前の岩盤粉々に砕け散った。同時にエオルは心臓が跳ねあがった。
エオル(土魔法……本格的に対策いれてきた……!)
ジリジリと、暑くもないのにイヤな汗が湧き出てくる。
エオルは剣を抜き、よしのを降ろした。
エオル「よしのさん、コートは被ったままで、絶対に奴らに姿を曝さないで」
よしの「は……はい……」
状況をうまく掴めなかったが、よしのは言う通りにコートのフードを目深に被った。
四方を天高い岩盤に囲まれた一帯に口笛の音がこだました。
「やるねぇ! あれが噂の魔法拳ってやつか?」
エオルはその男の声に覚えがあった。
"あの"隊服に身を包んだ魔導師が1人、岩陰から出てきた。
「先輩! 上に報告しないと!」
次に響いたのは女の声。
男が出てきた岩の2つ隣の岩陰から、慌てた様子で同じ制服の若い女が飛び出した。
男はニヤリと笑みを浮かべた。
「事後報告でいいだろ。"報告入れる前に襲われた"とかいっておきゃあさ」 ――ジパング人なんかに誰が手柄取らせるかよ)
男は剣を構えた。
「お前はあの"おとこおんな"な! 俺は、今年の主席様だ!」
「ちょっ! 先輩! 割り当て違……」
女の制止が届く前に、男はエオルに飛びかかった。
頭蓋骨に響く金属と金属がかち合う音。
それはすぐさまギリギリと、刃物が擦れる拮抗の音となった。
エオル「お久しぶりです、先輩」
「テメェー……調子乗りすぎなんだよ!」
男はエオルの剣を押し払い、甘くなった脇腹を蹴り飛ばした。
その衝撃で、エオルは砂煙を上げ大岩の上に倒れ込んだ。
エオル(今日はよく突き飛ばされる日だなあ……)
間髪入れずに男が剣を突き立て、頭の上から降ってきた。
エオルは体を横に転がしそれを避け、そのまま腰を軸に体を水平に回転すると、その足で男の足を振り払った。
男が盛大に仰向けた所を、すかさずエオルの剣が襲いかかった。
再び剣と剣が拮抗する音。
剣に体重をかけ、エオルはにこりと笑みを向けた。
エオル「俺がいつ調子に乗りました?」
男は食いしばる歯の隙間から絞り出すように答えた。
「学科主席の上にゼミでも剣はピカイチ、マスター・キリスのお気に入りだったってのに、マスターの期待を裏切りやがって! なんだ? 自分は優秀だから裏社会でバカみてぇに稼ごうってか?」
男は再び足をエオルの腹部にぶち込んだ。
エオルはゲホゲホとむせながら後ろに飛んで距離を取った。
男はニヤリと笑った。
「"魔導師の万能感"って知ってるか?」
その屈辱的な単語の、バカにするような言い方に、エオルはムッとした。
フィード「おーおー、盛大にやってら」
フィードはニヤニヤしながらエオルと男の戦いを眺めていた。
「ちょっと! 男女さん、あなたはこっち!」
甲高い声に呼びかけられ、面倒そうに振り返った。
「1つ聞きたいんだけど、三人目のメンバーさんはどちらに?」
フィード(なんでバレてやがんだ!?)
押し黙るフィードの様子に、女はにこりと子どもを見るような笑みを向けた。だがその目は笑っていなかった。
「別行動かしら? それともどこかに隠れている?」
小馬鹿にするように、フィードは鼻で笑った。
フィード「知りてぇなら吐かせてみな」
その言葉を合図に上がった風を切る音。
次に聞こえたのはフィードの足元で何かが弾けるような音だった。
フィード「鞭……」
女は鞭をグイと引き寄せると、フィードに向けて、再び鞭を唸らせた。
フィードはひらりとそれを避け、しかし、避けたはずの鞭はぐにゃりと曲がると、方向を変え、バシリとフィードを弾き飛ばした。
弾き飛ばされたフィードは地面に手をつき、クルリと回って着地した。
ドロッとフィードの瞳と同じ色の液体が、フィードの側頭部から流れ出た。
だが滴り落ちるそれに気に留めることなく、フィードはニヤリと笑った。
フィード「風魔法剣か」
女もニヤリと笑った。
「アートリーの時とは違って、あんたら用に組んだ編成になってんのさ……あたしはエオル・ラーセン相手のはずだったんだけどね」
フィードは肩をすくめた。
フィード「なるほどな」
そして勢いよく地面を蹴った。
(真っ正面!?)
女はすかさず鞭を振った。
だがフィードは避ける様子はない。そのまま当たる寸前で、獲物を捕らえる猛禽類のように鞭の先を鷲掴んだ。
女はワオと歓声を上げた。
「良い動体視力と反射神経してんじゃない」
フィードはグイと鞭を引き寄せた。すかさず女も踏ん張り、両者は綱引きをする形となった。
「力くらべ? 負けないよ!」
さすが、女であっても魔導師、自分と同じくらいの鍛え方だけあって、ビクともしない。
フィード「力くらべか」
フィードはニヤリと笑った。
フィード「なら、こっちの力くらべはどうだ?」
「え!」
フィードの手先から、鞭に伝わる風魔法の力が失われていく。
女は思わず叫んだ。
「魔法分解!」
※魔法はそれぞれの属性の精霊が結合し塊となって引き起こされるもの。
呪文を逆に唱えることでその塊をほどくことを魔法分解といい、この精霊の結合(精霊→魔法)と魔法の分解(魔法→精霊)は魔導師の基本
「ちょっと! なんであんたが風魔法なんて知ってんのよ!」
フィード「風魔法使いの知り合いがいてな!」
女は鼻で笑った。
「面白い……!」
女は鞭の柄に力を込め、精霊の結合を始めた。
鞭に伝わる風魔法の力は分解されは結合され、それは徐々に鞭の耐久性を弱め、そして、ついには鞭は激しい風とともに千切れ、両端の魔導師たちは大きく後ろへと吹き飛んだ。
激しい突風はエオルたちにも直撃した。
エオル「うわっ!」
「ちっ! 何やってんだ、あいつは!」
ふと、男が仲間のほうに顔を向けるのを、エオルは見逃さなかった。
響く刃物が刃物を叩く音。
エオルは男に飛びかかり、男はそれを寸でで受け止めた。
男はそれでもしきりに仲間のほうを気にしていた。
それに気づいたフィードはニヤリと笑った。
女は先ほどの鞭が切れた衝撃で頭を打ち、ピクリとも動かない。
男は声を張り上げた。
「おい! アホ女! 大丈夫か!」
女から返事はない。
フィードは呪文を唱えた。
フィード「小爆炎!」
呪文と同時に手先から発射した光弾は女の遥か上の岩盤に直撃し、爆発した。
エオル「えっ!?」
地鳴りとともに光弾が当たった箇所から大岩盤が崩れ落ちた。
エオル「なっ! フィード!」
「クッソ!」
男は渾身の力でエオルを振り払い、呪文を唱えた。
「斥力結界!」
女の周囲の小石が女を中心に弾け飛んだ。
間髪入れずに岩盤が女に上に落下した。
「くっ」
男は剣を捨て、両手を女に向けてかざした。
岩盤は数秒上下にフワフワと浮き、大きな音を立て女の横に倒れた。
男は女の元に駆け寄った。
「おい!」
女から反応はない。
(頭打ったのか……?)
静かになった辺りを見回した。奴らの姿はなかった。
男はため息をついた。
◆
岩の隙間を全速力で縫う一行。
エオル「フィード! あんな卑劣なマネよくも……」
フィード「こうして逃げられたんだから、いいじゃねーかよ!」
エオル「やり方ってものがあるでしょう!」
よしの「エオル様……」
エオルに担がれていたよしのが口を開いた。
エオル「ん? キツい?」
よしの「いえ、その……フィード様は恐らく……"誰もケガをしない方法"をとられたのではないかと」
エオルはつい先ほどのことを思い返してみた。
――フィードが女を危険にさらし、でもそれは男が絶対に助けるとふんでいたから。その隙にその場から俺達は逃げる――
確かに、闘いをせずには済んだが。
エオル「そんなにうまくいくもの?」
フィード「隊章がスペードだった。前のキングの時は仲間より犯人逮捕を優先していたらしいが、今のキングは仲間を見捨てることをよしとしない」
エオル「あー……それ、トランプ志望者の間では有名だけど……何でフィードが知ってんの?」
フィード「……ヤクトミのヤツがトランプ志望だからな……」
エオル「ああ、そう……とにかく行動の意図は分かったよ。ありがとう……って言ったらいいのかな」
フィード「むしろ崇め奉っていいぞ」
エオル「それはない」
よしの(クスクス……)
フィード「しかし、何かドンピシャで出くわしたな……」
エオル「キーテジでは結構派手に動いたからね……」
フィードは舌打ちした。
フィード「さっさと山越えちまうぞ!」
エオル「はいよ!」
「も……申し訳ありませんでした……」
スペード魔薬事件捜査隊の陣営――
頭に包帯を巻いた女と、彼女を担いで陣営へ帰った男は、女の手当てもそこそこに、捜査隊のトップ――市松桃次郎を前に報告を始めた。
トウジロウは簡素な椅子にかけ、ムー大陸北部の地図を広げたテーブルに足を投げ出し、眉間にシワをよせ、固く目を閉じていた。
「奴らはキーテジ登山道に突然獣道から出てきて……その、我々のうち1人を倒し……獣道に戻ったため、後を追ったのですが……」
トウジロウは大きく口を開け、至極興味ないと言わんばかりに欠伸した。その様子に男は心の中で舌打ちした。
(聞けよ!)
女がおずおずと口を開いた。
「あの……」
トウジロウ「自分らもうええわ、ご苦労」
この男からは到底出てきそうもない言葉に、2人は目を丸くした。
「え……」
テーブルの上に置かれた酒をグラスに注ぎながらトウジロウは続けた。
トウジロウ「初めにやられたもう1人もまとめて、除隊や」
男は思わず素っ頓狂な声をあげた。
「な……いきなりすぎませんか!? いくらなんでも、」
トウジロウ「俺はお前らに何て言うた?」
男はばつの悪そうに答えた。
「……何があってもまずはエースへの報告……けど! 俺達はいきなり襲われて……」
トウジロウは鼻で笑った。
トウジロウ「報告する余裕もあれへんかったいうことか? 自分らみたいのんを役立たず言うんや」
男も女も、言い返せなかった。
トウジロウ「ついでに言うたろか? 新人魔導師にまんまとやられるドクソはうちにはいらへん」
あまりの暴言に男は声を荒げた。
「てめっ……ドクソって……言い方ってもんがあんだろうが! この……"祖国の裏切り者さん"よ!」
辺りは凍りついた。
トウジロウはニヤニヤしながらグラスの酒を飲み干し、顎で出入り口を示した。
周囲の隊員たちが2人を気まずそうに抱えた。男が大声をあげ、トウジロウに罵声を浴びせ続る様子を、トウジロウはただ面白そうに眺めていた。
その時――
「お疲れ様です」
全隊員が聞き慣れた声。頭の包帯がとれかけた女が縋るような声で名を呼んだ。
「……リシュリュー第一秘書官……!」
きれいにまとめあげられた金の髪に落ち着いた深い海のような青い瞳。透き通るような白い肌の穏やかな雰囲気を湛えた美人――リシュリューは眉をひそめた。
リシュリュー「一体どうしたの?」
トウジロウは声のトーンを下げた。
トウジロウ「何しに来てん」
にこりと凛々しさをたたえた笑みを向け、リシュリューは口を開いた。
リシュリュー「キングの命です。"久々の任務で統率力がナマっているかもしれない"ので補佐しろと」
ニヤリと笑い、トウジロウは煙草に火をつけた。
トウジロウ「信用あれへんなあ」
リシュリューは淡々と返した。
リシュリュー「ではキングの信用に足る人物であって下さい。それで、何事です?」
その問いかけに、煙草の灰を落としながら何事もないかのような口調でトウジロウは答えた。
トウジロウ「命令破ったアホ2人と、ついでに連帯責任でチーム組んでた残り1人、まとめて除隊させてん」
予想以上にひどい暴れように、リシュリューは目を見開いた。
リシュリュー「除隊!? エース! あなた……」
トウジロウはリシュリューを射るように睨みつけた。その目に射られた瞬間、リシュリューは一瞬だが凍りついたように呼吸が出来なくなった。
リシュリュー「……三名の除隊につきましてはキングの決定を……」
トウジロウ「人事権はエースにも同等にあるはずやで。隊規表紙から読み直せドアホ」
周囲から声が漏れた。
「リシュリューさんは隊規に精通した秘書官だぞ……何てこと……」
もうこの話に飽きたと言わんばかりに、ため息をつくように、トウジロウの口から煙が吹きだした。
トウジロウ「ま、あえてキング様々のご信用に足る人物として言うなら」
中空を見つめ、台詞のように棒読んだ。
トウジロウ「やる気があんねんやったら、もう一度採用試験受け直すんやな」
隊員たちに両脇を抱えられていた女は膝をついた。男は吐き捨てるように言った。
「なら次は"ハート"に入隊してやんよ」
その言葉が吐かれた次の瞬間。
ヒュンと空を切る音とともに、灰皿が男の頭に直撃した。その衝撃で灰皿は砕け、男は気を失った。
金の柳眉が逆立った。
リシュリュー「エース!」
トウジロウは満足そうに笑った。
トウジロウ「仏の顔も三度までや」
隊員たちは俺が俺がと気を失った男と膝をついて放心している女を抱え、逃げるようにテントを出た。静かになった二人きりのテント内で、リシュリューは重苦しく溜め息をついた。
リシュリュー「何をお考えなのです?」
トウジロウはテーブルに煙草を押し付け、そのままテーブルの上の地図を眺めた。
そして僅かな沈黙の後、顔をあげた。
トウジロウ「おい、秘書。次の手ェや。隊員に指示を出せ」
まるで自分の問いかけなどなかったかのようだった。リシュリューは眉を寄せた。
リシュリュー「……はい」
◆
雪混じりの風。
完全にホワイトアウトした白い盲目の景色。
山頂付近は極寒の銀世界であった。
その中、平地と変わらない軽装で膝ほどまである雪をかき分けて進む一行――
エオル「……なんで光炎魔法なんか使えるのさ」
光炎魔法"光炎壁"
体の表面に熱のバリアを張る魔法――
フィード「昔ヤクトミのやつとふざけてて習得した」
エオル(それ……違反なんだけど……)
※魔導師は一種類の魔法しか体得してはいけない。フィードは爆炎魔法、エオルは流水魔法が専攻。
フィード「それより俺様の魔法で道作ったほうがよくねえか? この雪……」
エオル「ダーメッ! トランプに居場所教えるようなものでしょっ!」
フィードは口をとがらせた。
フィード「……性格も地味なら考え方も地味なヤツめ」
エオル「なんか言った!?」
2人の魔導師はハッと同時に同様のことが頭をよぎった。
――"よしのに怒られる"――
恐る恐るよしのの方を振り返る。
エオル「……あれ? よしのさん?」
視線の先に、よしのの姿はなかった。
しばしの沈黙。一瞬、頭が、追いつかなかった。
――…………はぐれた!?――
一歩前すら白く塗りつぶされた視界。
互いの声すら遮る雪交じりの風音。
2人の魔導師は、絶望的な顔を見合わせた。
そういえば、文中に出てきた「本格的な対策」とか、
そのほかの解説的なものが本家サイトの各話の最後のページにあるので、
よろしければそちらもどうぞ。
なんとか追手をまいた矢先、
猛吹雪の中、よしのとはぐれてしまったフィードとエオル。
はてさて、どうなることやら。
次週からの9.x小話シリーズは
一行が出くわすにはまだ遠い、ニューフェイスの連載を予定。