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20話 地獄チュートリアル

 追っ手を撃退した俺達は、地上に降りていた。


 地獄0層。ここには死んだ直後の悪い魂が送られてくるらしい。


 悪い魂と言っても様々であり、それぞれの魂にどの地獄が相応しいかが分かるまで、一旦0層で待機させるという話だった。


 グレイスのベルボン一族は、魂の仕訳を担当しているらしい。


 随分な重役を任されていると感心したが、グレイス曰く、それは全く見当違いらしい。


 地獄100層に下にミハエル魔国の本領が有ることを考えると、地獄0層は飛び地のようなモノだそうだ。


 さしずめ、ニューヨークに本社が有る大企業に勤めているのに、アラスカ支部に飛ばされたといった所だろうか。心中察する次第である。


 地獄0層に話を戻そう。


 一言で表すと、夕暮れの温泉街inスラム。という表現が適した街だ。


 あるいは、終戦直後にまた戦争が始まってしまった世界線における日本の闇市。といったところだろうか。


 割れた石畳と下品な色の提灯。客引きの女と酔っ払いがいたる所で絡んでいて、スリや喧嘩が散見される。


 黄昏色の空は、街をやる気なく照らしていて、街には諦観と投げやりな絶望が漂っている。


 大変結構なことだ。少なくとも生産的な空間ではない。


 この糞の臭いがする街を歩きながら、俺達はグレイスと作戦会議をしていた。


 ミハエル魔国に反旗を翻した今、グレイスの屋敷で話をするのは適切ではないという理由からだ。


 グレイスとの話し合いは、至極順調に進んでいった。


 グレイスの望むものは、地上における安全な住処すみかと俺の庇護。


 俺達が望むものは、ミハエル魔国の獄卒に捕まらずに地獄へ侵入するルートである。


 そして、これに加えて、俺は要求をグレイスに突き付けた。


 その要求というのは、どこに居るか分からないサラとエスティアに対しての生存報告と、届け物だ。俺は持っている伝説武器の1つ『塞の守岩』をサラに返そうと考えた。


 これは現時点での俺の生存を示す目的の他、俺の遺産相続を兼ねている。


 ざっくり言うと以上のような盟約を交わし、グレイスと主従契約を結ぶ。


 その他、細かい事を決め終え、今は俺達はグレイスから地獄についての説明を受けているところだ。


「それでは、我が主に地獄のレクチャーを申しあげます。前提として、地獄は罪人の管理所です」


 俺が頷くと、グレイスは言葉を続ける。


「地獄の民は獄卒に管理されております。割り当てられた地獄から脱走すると、それが獄卒に知れ渡り、追っ手が飛んできます。しかし、皆様の場合はこれに当てはまりません」


「俺達が管理の対象外、認識されていない存在だからだな?」


「えぇ。つまり、皆様は地獄1層から100層まで、降りていかれればいいということになります」


「キツイ旅路だが、邪魔するヤツは居ないってわけだ」


 俺の言葉にグレイスは頷くと、険しい表情を浮かべて人差し指を立てる。


「私から皆様に申し上げることは1つ。精神地獄・・・・に注意されたしということです」


 精神地獄という言葉に首を傾げると、グレイスが丁寧に説明してくれた。


 なんでも、地獄には『物理地獄』と『精神地獄』の2種類が有るらしい。


 物理地獄は『罪』に対する罰で、精神地獄は『心』に対する訓示くんじが下される場所だと言うのだ。


 例えば、人を殺した場合、まずは『殺人罪』の物理地獄に投獄される。


 そして、殺人に対するの罰を受けた罪人は、通常自分の罪を悔い反省する。


 しかし、中には罰を受けたにも関わらず、反省しない不心得者ふこころえものがいるらしい。


 そんな救いがたい罪人が投獄される場所こそ、精神地獄と呼ばれる場所なのだ。


 精神地獄は心の異常さを風刺した特殊な世界になっていて、自分の悪しき心に気付いて反省しない場合、永遠に出られない造りになっているということだった。


 厄介なのは、俺達が心の闇を抱えていた場合、精神地獄から抜けられない可能性が有るということだ。


「想像以上に面倒くさいな……」


 しかし、俺とは対照的に、ミラとステラは楽観の極みのような態度を取る。


「うむうむ。我はドラゴンなれば、地獄など壊して進むわい」


「私の心に闇なんて無いんだから、それこそ杞憂ね」


 本当に先が思いやられるが、こうして俺の地獄旅は始まったのだった。

次回or次々回から、サラsideの物語が始まります。


怜司の方は、純粋な冒険ストーリー。

サラの方は、交渉や戦闘、暗殺シーンなんかも出てくるハードな物語になる予定です。


全く違う話が平行するので、章を分けて投稿させていただきます。

それでは、今後ともよろしくお願いたします。

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