表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

10話 雷竜王ミラ

「我は貴様等如き雑魚と争うつもりは無い。ささげ物として一人置いて行け。それで非礼を許そう」


 その要求を受け入れるわけにはいかなかった。サラとエスティアも俺と同じ事を考えたらしく、各々抜刀(ばっとう)する。


 それを見て、パースがうめく。


「マジかよ。あんなに大きなドラゴンだぞ。あいつら正気なのか?」


 パースは俺を見てくるが、俺はソレどころじゃなかった。


「……ドラゴンだ」


 ドラゴンだ。ドラゴンが目の前にいる。体全部が宝石と剣で出来ているのかと、疑う程にまばゆきらめいている。


 圧倒的な存在感と躍動感をもって、俺達をおびやかす。



 ――逃げるか?


 しかし逃げられるとも思えない。バカ二人は既に突撃している。


 それを見て、パースも離脱の困難さに気付いたらしく、深々とため息をついた。


「まぁ後衛の俺達に言えることはねぇな。俺は治癒ヒールだけしてるから、後は頼んだぞ」


「任せておけ。出入り口の近くにいろよ」


 

 感覚に身を任せ、賢王の固有術式を使用する。使うのは指定した属性の魔法を封じる『賢者の慧眼ケイガン』だ。今回は雷魔法を封じる


 瞬間、ドラゴンが動きを見せた。


「ぬっ、賢者が居るのか……面白い」


 

「お前の相手はこの私だっ」


 エスティアが突出し、ドラゴンに向けて剣を構える。彼は飛び上がり、ドラゴンの頭に剣を振り下ろす。


 瞬間、ドラゴンが爪を振り下ろし、剣と爪がぶつかり合う。


 ガンッ、と衝撃音がとどろき、エスティアが大きく弾かれる。しかし……ドラゴンもわずかに体勢を崩した。


 サラが跳躍ちょうやくし、空中で一回転する。そしてドラゴンの体に張り付き、剣を突き立てる。


暗黒王戟ダーク・シュートっ」


 サラの刀から闇がほとばしり、闇がドラゴンの身体を滅多切りにする。


「ぐあぁああああああっ、貴様ッこの技はっ」


 ドラゴンがサラに向けて大きく口を開ける。


 ――今だ。


 雷魔法制限を解除し、今度は火魔法を制限する。ドラゴンが動きを止め、俺をじっと見つめてくる。


「まさか、本当に我を討伐しようとしているのか?」


「何でそう思うんだ?」


「暗黒騎士王を用意して賢者が乗り込んできたのだ。本気で相手をしなければな」


 その時だった。俺達の居る大部屋の天井から無数のモンスターが現れる。


「火を噴け、力もて喰らい散らせ、我がしもべ達よっ」


 瞬間、サラが叫ぶ。


「怜司、私達には雷耐性がある!」


「分かった」


 手を空に向け、思い切り叫ぶ。


「全員消えろ。喰らいやがれ」


 全力の雷魔法を放った瞬間、部屋全体が閃光に包まれ何も見えなくなる(・・・・・・・・)。ドラゴンが笑った気がした。


 ――不味いっ。


 視界を失って初めて知る。自分の雷魔法が視界を奪うモノである事を……。これは俺の鍛錬不足が招いたミスだ。


「貴様が一番厄介そうだな。頂こう」


 頭天に凄まじい衝撃が走る。俺は一撃で意識をり取られた。無知から生じる失敗、異世界はゲームよりもシビアだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「「「怜司」」」


 閃光が去った直後に、私の視界を襲ったのは、この上なくショッキングな映像だった。


 怜司が、頭から血を流して倒れていたのだ。


 私の所為だという思いが湧き上がってくる。私が隠し迷宮(ダンジョン)に連れ込まなければ、怜司に魔法を撃たせなければ、こんな事にはならなかったのだ。


 私の所為だ……。


 瞬間、明るさこぼれる声が耳をでる。


「しっかりして、私達で何とかしなくちゃ」


 その言葉に意識を連れ戻される。昨日、怜司は私を助けてくれたのだ。今度は私の番だ。


 舞級魔法ダンシング・マジックで、闇の動物を作り、ドラゴンを襲わせる。これだけでは足りない。しかし……。


『ガチンッ、ガチンッ、ガチンッ、……ガタガタガタガタ……ガタガタガタガタガタガタガタガタ……ガタガタガタガタ』


 ――来たっ。


 アンデットモンスター達が、隊列を組んで部屋に押し寄せる。暗黒騎士王の能力で、ドラゴンからアンデットモンスターの支配権を奪ったのだ。


 パースが怜司を保護し、それを守るようにエスティアが立つ。これで暫く怜司は安全だ。後は私に掛かっている。


 私が夢級魔法ヴィジョン・マジックを撃てばそれで終わりだ。


 アンデット達を背に、ドラゴンに剣を向ける。


「勝負よ。あなたには倒れてもらいます」


「暗黒騎士王一人に、何ができると言うのだ?」


「言ってなさい」


 暗黒騎士王は最上位の戦闘職である。正面から戦えば、竜も相手取ることが出来るはずだった。

 

 しかし、いくら魔法を撃っても、どれだけ剣戟けんげきを繰り出しても、ドラゴンに隙は生じなかった。


 おかしい……。私は評価値300の暗黒騎士王なのだ。魔王の側近レベルの強さは有る筈なのだ。


 攻撃は当たっている。ドラゴンの攻撃もかわし続けている。しかし、すきが生じない。


「はあぁああっ」


 ――ガチンッ。


 最後の斬撃がドラゴンの腕に阻まれる。再び剣を振りかぶろうとしたが、脚に力が入らなかった。


 倒れ込むと、凍えるほど冷たい宝石の床が私を包む。


「貴様は強い。魔王の側近といい勝負を演じられるやもしれん。しかし、我を誰と心得る? 雷竜王ミラ=エレクト=シャイリンなるぞ」


「……雷、竜王?」


「つまり、世界で最も強い竜の一体という事だ。貴様は――」


「――――竜王と戦う無謀さを悔やんで死ね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ