41.笑い
「───来週、俺とアルバートで家に行ってくるよ」
「来週…?でも、どうして……」
ジュリアに理由を聞かれるが、この場で言うわけにはいかないのだ。
「……アルバートが、母さん達に会ってみたいっていうんだよ」
「──。────。ああ、そうだ。私からヴァンスに頼んだんだ」
間はあったものの、アルバートが意図を察して頷いた。ジュリアは疑うような視線でヴァンスとアルバートを交互に見ていたが、ひとつため息をつくと、
「……分かった。それで納得してあげる。本当は私も一緒に帰りたいけど…」
「二人でここを離れるわけにはいかない。……ごめん、ジュリア。近いうちにジュリアも会いにいけるようにするから…」
そう言うと、ジュリアは呆れた目をした。
「じゃあ私のかわりにお兄ちゃんが全員分のご飯作ってくれるの?」
「うぐ……」
痛いところを突かれ、ヴァンスは何も返せない。
「帰れないのはこの施設を作るって決めたときから、分かってたことだし。……私が一緒に帰りたいって言ったのはそういう意味じゃないから」
「へ……?じゃあどういう意味なんだ?」
「それは…って、そこは聞かないとこでしょ⁉」
何故か顔を真っ赤にしたジュリアに怒られた。アルバートもかたまっているが、何か関係しているのかと考え、思いついたことをつい口にだしてしまう。
「もしかして、一緒に帰りたいのはアルバートが……」
「わ、ちょっ……言わないでよ‼お兄ちゃんのバカ‼」
「おい待て、殴るな!スープがこぼれる!」
二人のやり取りにレティシアが吹き出した。笑いは全員に広まる。
ヴァンスもジュリアも、アルバートも。
───皆、心の底から笑った。