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二人が固まっていたら、ドアをノックする音が響く。
コン、コン。
「殿下お茶と軽食をお持ちしました。中に入っても宜しいでしょうか?」
「あぁ、入ってくれ。」
ウィリアムが頼んでいたお茶と軽食をメイドが運んできてくれた様だった。メイドが部屋にカート押して入ってくるとウィリアムに一礼する。二人が椅子に座るとお茶を入れて軽食のサンドイッチをテーブルに置いて、頭を下げて部屋から出て行った。
「まぁ、茶でも飲んで落ち着こう。」 「そ、そうですね。」
起きてから何も食べてなかったオットーはお茶より先にサンドイッチを手に取って食べる。口の中で新鮮なレタスがシャキシャキと音を立て、チーズが濃厚で一緒に入っているハムとの相性が抜群だった。
他のサンドイッチもどれも美味しくて、ウィリアムが一つを食べている間に三つ平らげる。
その食欲に呆れて見ていると、喉に詰まらせたのかお茶をゴクゴクと飲み干す。
「落ち着いて食べたらどうだ?誰も盗りはしないぞ?」
「す、すいません。お腹が空いていたもので、やっぱり王宮は凄いですね。たかがサンドイッチがこんなにも美味しいんですから。」
お茶が無くなったオットーは自分の分を入れ直したら、黙々とサンドイッチを頬張る。
「オットー、食べながらで良いから聞いてくれ。」
ウィリアムに食べながらで良いと言われて食べながら耳を傾ける。普通は王太子であるウィリアムが話すとなれば食べるのを止めて話を聞くものだが、オットーは一切気にせずに食べていた。
自分で言った言葉通りに食べながら聞くオットーを見て、気軽に接してくれる事を内心で嬉しく感じていた。
「この前、オットーを勇者の教育係にする件だが無理だった。そこで勇者の世話係を野ってもらう事になった。」
淡々と喋っているが、オットーは教育係は無理だろうと思っていたので無理と言われても驚かなかったが、世話係と聞いて驚き、サンドイッチを喉に詰まらせて胸を叩いてお茶を飲み干す。
「はぁはぁ、サンドイッチを詰まらせて死ぬかと思った。殿下、冗談ですよね?勇者の世話って言われても何していいか分かりませんし」
「残念だが、父……陛下が決定した事だ。お前が居た隊には後から連絡が行くはずだ」
この国の王様が決定した事だと言われては何も言えない。
(あ~ぁ、終わっちゃたか、今の生活は結構気に入ってたのにな。隊長に迷惑掛けっぱなしだったな。副長は俺が居なくなって喜ぶかな?アンナは……まぁ、しょうがないか)
「分かりました。世話係、引き受けました」
「すまんな、苦労を掛けさせて」
「いいんですよ。それが俺が神から承った使命ですからね。嫌なら断ってますよ。気にしないでください」
笑顔で自分の使命だと言う。そんなオットーを見ると罪悪感が軽くなる気がしたウィリアム。
「そう言って貰えて助かる。余計な事をしてしまったのではないか、と考えてしまっていたからな」
「嫌だな~、殿下は気にしすぎですよ。俺としては助かってますよ。どうやって監視しようかって、ない頭で考えてた位ですからね。感謝してます」
頭を下げてお礼を言う。オットーの除隊は決まったが明日の仕事はどうなのかとオットーに訪ねると、自信満々に日頃の行いがいいので今日から5日間休みだと胸を張ってウィリアムに告げる。
為らばとその休みの間に除隊の手続きを手配する事を考えてオットーには勇者召喚が行われるまで、このまま王宮に泊まって貰う事にする。
「それならば問題はないな。オットーにはこのままこの部屋に泊まって貰うから、そのつもりでいてくれ」
「えっ!? いいんですか?あの~、食事の方は?」
「食事も此方で手配するから心配するな。」
ガッツポーズを取り喜ぶオットー。食事でこんなに喜んでくれるなら、これからも用意をしてやろうかと考えてしまうウィリアム。
時は進み勇者召喚の日を迎える。
この日を迎える間のオットーは食事を食べてはベッドの上でゴロゴロしていた。泊まっている部屋を担当してくれたメイド達に声を掛けては相手にされないオットー。お陰でメイド達からの評判はあまり良くない。
評判が最悪じゃないのは、断られたらしつこく誘わない、余り手が掛からないといった事が要因として挙げられる。
「どんな勇者が来るのかな?性格が良いと良いなぁ。でも性格が良くても女好きなんたよな」
自分の事を棚に挙げるオットー。暫くベッドでゴロゴロしていると部屋がノックされる。
「どうぞ」
返事をするとウィリアムが部屋に入って来た。
「あっ、殿下。召喚は無事に終わりましたか?」
訪ねるとウィリアムは困惑した顔で何とか無事に召喚が終わった事を伝える。
「無事に終わったのなら、どうして困った顔をしてるんですか?何かありました?」
「じ、実は召喚が行われて現れた勇者が………二人居たんだが鑑定を掛けさせて貰った結果二人とも勇者の称号があったのだ」
「えっ!?嘘ですよね、二人?俺はどちらを監視すればいいんですか?」
「わ、私に聞かれても答えようがない。だが一人の勇者は女性だったから残りの一人が対象じゃないのか?」
勇者の一人が女性だと聞かされて驚くがそれならば監視するのはもう一人の勇者で決まりだと思い安心する。
「後で勇者二人に会わせるから、神に何か聞けないか、試してみてくれ」
「そうですね、そうさせてもらいます。男の方で決まりだと思いますが何故二人居るのかを聞きたいと思います」
「あぁ、頼んだぞ、私は居なくなるが後でメイドに呼びに行かせるからその時に勇者二人を紹介する」
「はい、分かりました」
返事を聞いたウィリアムは忙しなく部屋を出て行った。ウィリアムを部屋で見送ったオットーは神と話をする為に眠りについた。
「良く来たな。それで儂に何が聞きたい?」
目を開けると神がオットーを椅子から見下ろして声を掛けてくる。
「あれ?口調が元に戻ってますね。何かありました?」
「ウッ、部下に言われて変えてみたら部下に不評でな、元に戻したのだ。アイツ等が言うから変えたのに歳を考えろだとか、若作りするなとか。思い出してきたら、腹が立つ」
どうやら前の口調は部下に不評と言う事で元に戻した神は言われた事を思い出して地団駄を踏む。神も地団駄を踏むのだと変な事を考えていると再度神から問われる。
「まぁ、いい。で儂に何が聞きたい?」
「え~と、召喚された勇者が二人居た事と男の方だけ監視すればいいのかを聞きたいんですが」
「答えは二人ともだ。儂はお前に勇者の監視を頼んだんだからな。二人居る事はお前が死にそうなって儂が呼んだ時に伝えたはずだぞ?」
勇者二人の監視とアンナに瀕死にされた時に伝えたと言われて頭を抱えて困惑する。どうやって二人も監視しろと言うのか?神にその事を伝えると何とかしろで終わってしまった。
「何とかしろって言われても俺一人では二人も監視出来ませんよ。特に女の方は無理ですよ」
「なら、女の方は頑丈なお前を瀕死に出来るアンナと言う女に任せればよい」
「それは、アンナにも力を授けるってことですか?」
「力をそう何人にも与えれる訳がない。後、監視の事を伝えるのは禁止だ。じゃあ、頼んだぞ」
神がそう言うと視界が白く染まっていく。目を開けると元の部屋に戻っていた。神から聞いた話をウィリアムにどう伝えるかを考えるが今の所は何も思い付かない。
「もぉ~、どうやってアンナに手伝って貰えって言うのさ。下手したら俺、アンナにヤられるかもしれないのに。嫌だなぁ~」
そう言うオットーの顔はどこか嬉しそうに見えた。
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