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勇者の監視を頼まれた俺。  作者: 東海さん
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8

 大きなベッドで寝ているオットー。


「う~ん、うん?知らないベッドだ。」


目を開けると、そこは何時も自分が寝ている部屋のベッドじゃなかった。自分の部屋より大きく綺麗に掃除もしてあり、何より落ち着いた雰囲気が漂わせる部屋だった。


「あれ、ここは何処だ?えーと、確か酒場で飲んでて………思い出せないな。」


ベッドの上で胡座をかき、腕を組んで考えているとノックが聞こえてくる。


コン、コン。


「えーと、どうぞ?」


返事をするとドアからウィリアムが入って来た。


「殿下?じゃあ、此処は。」

「そう、王宮だ。酔い潰れたお前を運ぶのに苦労したぞ?」

「何で殿下が俺を運ぶんですか?まさか……俺の体目当てで!?」


両腕で自分の体を抱き締めて、ウィリアムの顔を見る。


「そんな訳無いだろ‼️」 「ですよね~。じゃあ、何故に?」

「もうすぐ勇者召喚を行うから、お前の話を聞こうと思ったんだ。はぁ~、俺だけだからいいが。他の者が居る時はふざけるなよ?」

「分かってますよ。でも、勇者召喚の事を聞かれても俺には分からないですよ?」

「神からは何も聞いてないのか?お前は、監視者なんだろう?」


ベッドに近付き、隣に座りオットーとの距離が縮まると、ドアから人が入って来た。


「すみませんお兄様、ちょっと宜しいですか?」


部屋に入ると、ウィリアムとオットーがベッドの近くに居る二人を凝視して固まる。


「シャル。どうした、何か用か?私は今忙しいのだが?」


シャルと呼ばれた少女はウィリアムの2つ下の妹で第一王女のシャルロットであった。

シャルロットは白く透き通る様な肌をしていて軽くウェーブした金色の髪を肩まで伸ばし、瞳はアイスブルーで小さな体躯が実際の年齢より、幼く見える。


「殿下、殿下。俺の考えすぎならいいんですが、姫様悪い方向で勘違いしてませんかね?俺と殿下の距離が近すぎますし。」


ウィリアムに耳打ちをすると、その様子を見て、シャルロットが顔を紅く染める。


「し、失礼しました!わ、私は何も、えぇ、何も見てませんから。」


慌てて何も見てないと言うシャルロットを見て、ウィリアムの顔から血の気がサァーと引いていく。


「ま、待って、シャル。お前は何か勘違いをしている!」

「大丈夫です、お兄様。世の中にはそういう人も居ると、シャルは分かっておりますから。世間の目は厳しいかも知れませんが、私だけはお兄様の味方です。」


ウィリアムは待てと止めるがシャルロットはそれだけを言い終えると、走って部屋から出て行ってしまう。走っていく姿を手を伸ばしたまま固まってしまうウィリアム。


「殿下、追い掛けないとまずくないですか?」


呼ばれて、ハッと我に帰り、シャルロットを慌てて追い掛けて行く。

部屋に1人残ったオットーは、殿下が戻ってくるまで、寝て待つ事にする。




「おい、起きろオットー!」 「う~ん。殿下、後一時間……くーくー。」


中々起きないオットーの体を揺すってお越しに掛かる!

その隣でシャルロットがウィリアムが起こすのに体に触れて揺らしているのを見て、やはり二人はそんな関係なのか?と頭の中で考え始めていると、漸くオットーが起きる。


「わ、分かりました。起きます。起きますよ。だから体を揺らすのはやめて、口から何か出そうになりますから。」


体を揺さぶられて顔色が悪くなり、ウィリアムの手を取って懇願する。やはり、その様子を砦で見ているシャルロットは少しドキドキしながら、見つめていた。


「殿下、姫様の誤解は解けたんですか?」

「あぁ、何とかな。お前も一緒に追い掛けてくれてもいいだろうに。」

「無茶を言わんで下さいよ。王宮で俺みたいな男が姫様を追い掛けたら、変態と間違えられて、物理的に首が飛びますよ!」


二人が仲良く喋っているから、中々、会話に入れないでいるとオットーから声が掛けられた。


「姫様は殿下に何か用事があったんじゃないんですか?」

「は、はい。そうです。お兄様、勇者様を召喚したら、私の旦那様になると聞いたのですが本当なのでしょうか?」


勇者を召喚を行い、姫を妻にさせて、勇者を自国に縛り付けようと思惑があったみたいだが、この国の王であるクワトロ陛下は娘が可愛くて猛反対をした事によってその話は白紙になっていた。


「その話は父上が反対して白紙になったから、シャルは気にしなくても大丈夫だ。」

「そうですか。性格も顔も知らない方と結婚はしたくなかったので良かったです。」


兄の言葉を聞いて胸に手を当ててホッと胸を撫で下ろす。シャルロットとしては、勇者という肩書きだけで結婚相手を決められるのは止めて貰いたかったので心の中で父親に感謝する。


「話はそれだけか?俺はオットーと話があるからシャルは部屋を出ていってくれるか?」


言葉に慌ててオットーが待ったを掛けてウィリアムを押して後ろに下がらせる。


「殿下、その言い方だと誤解されますって。姫様なら別に居てもいいんじゃないですか?」

「そうだな。シャルも一緒に聞いてくれて構わないぞ。聞いていくか?」

「いいえ、私には構わず、オットー様とお兄様でどうぞ。」

「姫様、俺みたい奴に、様は付けなくていいのですよ?そ・れ・とチラチラと俺と殿下の顔を交互に見るの止めてもらえませんかね?殿下とは本当に何も無いんですよ?」

「なら、私の事をシャルと呼んでくれたら、止めます。」


愛称で呼べと言われて、困ったオットーは隣にいるウィリアムに助けてくださいと目で合図を送る。合図に気付いたウィリアムは爽やかな笑顔で答える。


「いいんじゃないか?他の者の前で呼ばなければ。シャルもそれでいいだろ?」

「はい、私は他の方の前でも別に良いのですけれど。それで納得します。」


兄妹だけで話を纏めてしまい、頭を抱えたくなったオットーだったが、本人も言ってる事を断るのも、それはそれで失礼に当たるのかと思い、渋々二人の意見に従うのであった。


「それで何の話をするつもりだったのですか?」


聞かれたので顔を見てきたウィリアムに頷いて答える。その際に耳元でこれ以上は他の人に言って欲しくない事を伝える。

シャルロットに学生の時にオットーが夢の中で神に会い、監視を頼まれた事を教えてやると驚いた顔で、オットーを見つめる。


「あ、あの~、それは本当なのですか?とても信じられないんですが。」

「そうだな。学生の頃にオットーに助けて貰った事がある。本人は隠していたみたいだが、私だけは直ぐにオットーだと気づいたのだ。普段のこいつは、ダラダラと過ごしていたのに、その時のオットーの動きは常人とは思えない動きだったよ。」


学生の時の話を懐かしそうに窓の外を眺めながら語る兄を見てシャルロットはオットーを見ると、苦笑をしていた。


「その時にオットーを捕まえて質問したら、神に頼まれ事をしたのだと白状したよ。」

「あれは質問って優しい感じじゃなかったですよ?軽く脅迫入ってましたし。」

「そうだったか?私的には質問になるんだがな。」


突っ込まれたウィリアムは口元で手を隠す様に軽く笑いながら、オットーを見ると溜め息を吐いて諦めた様だった。


「オットーは神からどんな人物か、聞いてないのか?」

「最初に言いましたけど、頼まれただけで他は何も言ってくれなかったですね。そうだ!良いことを思い付きました。」

「なんだ、何を思い付いた?」

「今から俺が………寝れば神様に会えるかもしれません。」


真剣な顔で二人の顔見て話すと顔を見合わせてシャルロットはそんな事が出来るんだと信じている様子。


「オットーよ、それはお前が寝たいだけじゃあるまいな?」

「で、殿下。そ、そ、そんな事ある訳なゃいじゃなゃいですか!」


図星を刺されたオットーの目は泳ぎまくりの噛みまくっている。


「はぁ~、取り敢えず試してみるだけ試してみるとするか。」

「流石殿下。物は試しですからね。」

「調子に乗るな。昼にまた来るから、その時に話を聞こう。行くぞ、シャル。」


ウィリアムはシャルロットを連れて部屋を出て行き、昼までに自分の仕事を片付ける事にした。


「シャルは昼からどうする?」

「私はお母様と他のご婦人の方とお茶会がありますので、お昼からの話し合いには参加出来ません。」


残念そうにウィリアムの誘いを断り、自室に帰っていった。

二人が出て行き、部屋に残ったオットーは神様に会って話が聞けるように祈って普段寝れない豪華なベッドで睡眠を貪るのであった。




昼になると、ウィリアムがやって来ってくると、オットーは起きていて珍しく困った顔で悩んでいる所だった。


「何か悩んでるみたいだが、どうだった。神とは会えたのか?」

「えぇ、まぁ。会えた事は……会えたのですが……」


歯切れが悪いオットーを見て、何か大変な事を神に言われたのだと思い、きを引き締めて、何を言われたのかと訪ねた。


「えーと、ですね。勇者召喚で呼ばれるのはニホン人の学生らしいんですよ。」

「ニホン人?聞き慣れない言葉だな。しかも学生って歳は12から15位か。」

「いや、勇者が居るところは18でも学生みたいなんです。それで召喚されたら。やっぱり帰れるのか聞いてくると思って神様に聞いてみたんですが……」

「聞いたら、神はなんと?」


この先の言葉を言うのが躊躇っていると再度、聞かれたので素直に言われたままの事を伝える事にした。


「はぁ、じゃあ、言いますよ?「好きにしたらいいんじゃねぇ?帰りたいなら帰すし、残りたいのなら残ればいいじゃねぇ?」と言われました。」


神の言葉を伝えると部屋はシーンと静まり返る。


「…………ちょっと待って、それは本当に神の言葉か?お前から聞いた話に出てくる神とイメージが合わないんだが。」

「はい、俺が会った神様に間違いありませんでした。」

「神の口調がおかしいだろ?発言も神の威厳が感じられないぞ?」

「俺も言ってみたんですが、何でも部下の方が喋り方を変えたらどうかと言われて、直してるみたいです。」


神からの言葉に期待をしていたに、いざ聞いてみると期待が大きく外れて落胆を隠せない。落胆するウィリアムを見てやっぱり言わない方がよかったか?と考える。



二人は暫くの間、無言で固まったまま動けなかった。




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