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アンナが事件を解決して1週間が経ち、漸く普段の日常が戻ってくる。
「いや〰️、大変だったね。アンナ。」
事件があった次の日から、どの様な経緯で起きた事なのかと聴取を取られ、被害者へのケア、男達の取り調べに付き添う等、多忙な時間を過ごしてきたアンナ。
「えぇ、誰かさんは直ぐに解放されてたみたいですけどね。」
「だって~、しょうがないじゃないか。俺は応援を呼びに行っただけだもん。」
オットーは見廻りの途中で逸れて経緯が分からず、最後に応援を呼んだだけと言う事で直ぐに解放されていた。
「だもんって何ですか?鳥肌が立つのでやめてもらえますか?」
凄く嫌そうな顔をして自分の両腕を擦るアンナ。その反応にショックを受けるオットー。ディーチはその様子を見ながら、溜め息を吐き、アンナに声を掛けた。
「アンナ、お疲れさん。忙しいかっただろうが、体は大丈夫か?」
「副長。確かに忙しかったのですが、体の方は何ともありませんから、大丈夫です。」
「そうか、トロワ隊長とアンナを少し休ませてはどうか、と話していてな?どうだろう、休みは要らないか?」
「副長、俺、俺は?俺も大変だったんですよ。アンナと逸れちゃうし、応援を呼びに詰所まで走りましたし。」
「副長、ありがとうございます。何日位休みが貰えるのでしょうか?」
「アンナに長い事休まれると困るんでな?2日しかやれんのだか、いいか?」
自分を無視して話を進める二人の顔を交互に伺う。
「副長、俺は「いえ、2日も貰えるなんて、嬉しいです。ありがとうございます。」………」
「アンナにはオットーの世話を焼かせてばかりだったからな。ゆっくりと休んでくれ。」
言葉をアンナに遮られて、何も言えなくなり、机の上で拗ね始める。
ディーチはオットーを呼ぶと、途端に元気よく返事をしてディーチに期待の眼差しを向ける。
「本来ならアンナと逸れた時点で罰則なんだが、応援を呼びに行ったりしたので、お咎めは無くなった。そんなお前に、休みが取れるわけ無いだろ!」
「そ、そんな~。うぅ、あァァァんまりだァァアァ!」
大の大人が机に伏せ泣き始めると、トロワが部屋に入ってきた。
「な、なんだ、どういう状況だ、これは?ディーチ?」
ディーチは事の顛末をトロワに説明をする。すると腹を押さえて笑い始める。
「はっはははは、そんな理由で泣いてるのか、オットーは?」
「隊長、そんな理由なんてひどいっす。俺なりに頑張ったんですよ!」
右手で笑い涙を拭いてオットーに、悪かったと謝る。オットーは顔をプイッと横に向けて拗ねてしまう。
「先輩の行動が気持ち悪いです。何とかなりませんか?」
「ア、アンナまで、酷いよ!俺が一体何をしたって言うんだ。」
「何もしないから、怒られるのでは?」
後輩のアンナに至極当然の事を言われて更に落ち込み始めて、また机に伏せる。
「分かった、分かった。オットーも休ませてやるよ!」
「た、隊長!それはいけませんよ!」
トロワの言葉を机の上で伏せながら、聞こえた様で耳がピクッと動き、チラチラとトロワとディーチの話を伺っていた。
「しかしなぁ、オットーが応援を呼ばなければ、アンナ一人で男三人を連れてこれなかっただろ。」
「それはアンナと逸れたからで逸れなければ、二人で連行は出来た筈です。」
「ん~、逸れたのは一方的にオットーだけの責任でもあるまい?アンナもオットーが居ない事に気付いたなら、探しに行くなり、待っていればよかったんじゃないか?」
トロワが逸れたのはオットーだけの責任じゃないと聞いて、確かにその通りだと納得してしまうアンナ。
(隊長の言う通りだわ、先輩を探すなり、待つなりしていれば男達も襲って来ずに逃げたかもしれない。勝手に先輩を役立たずと決め付けていた。)
トロワが言った言葉に顔色を悪くする、そんなアンナには誰も気付かず話をしていた。すると、拗ねていたオットーがトロワとディーチの話に割り込む。
「あの~隊長?いいっすか?」
「なんだ?拗ねてなくていいのか?」
皮肉混じりに返事を返してくるトロワに顔が引き吊る。
「アンナと逸れたのって、俺の所為なんですよ。俺が可愛い女の子を見付けて夢中になったのが悪いんであって、アンナは気付かず、あの場面に出くわしちゃたみたいなんですよ!」
「やはり、お前が悪いんじゃないか!」
オットーの頭にディーチの拳骨が落ちる。
「ぐぉぉ、痛てぇぇー、マジで痛い、いつもより痛い。」
「ふっははは、そう言う事ならオットー休みは無しだ。いいな?」
「うぅ、わ、分かりました。」
涙目になりながら殴られた頭を擦るオットーを見つめるアンナ。
(何で嘘を吐くの?私が暴言を吐いたから、それから先輩と逸れたのに。)
「アンナ。俺のせいで逸れちゃって、先輩なのに後輩のアンナの足を引っ張って、ごめんね?」
(『ごめんね』あれ?今考えると似てる気がする。もしかして、あれは先輩?)
「い、いえ。私も悪かったので、先輩の所為だけじゃないですよ。」
「ど、どうしたの、アンナ?そんな事言うなんて、やっぱり怒ってる?」
オットーの所為だけじゃないと言われて狼狽える。
「怒ってないですよ、ただ…「ただ何?」自分にも駄目な所に気が付いただけです。」
アンナに近付き、左手で額を触り、もう片方の手を自分の額に当てる。
「な、何ですか!い、いきなり!」
「う~ん、熱は無いようだけど、大丈夫?」
顔を紅く染めていたアンナだったが、オットーの言動に顔から表情が消える。
「隊長、アンナの様子がおかしいので、もう少し休ませてあげられませんか?」
「お、お前。よく言えたな!?俺はこれで行くがアンナに殺されないようにな。」
「待って下さい。トロワ隊長、私もお供します。」
振り返りトロワにアンナの休暇を伸ばせないか?と訊ねると隊長に変な事を言われ、副長は隊長と一緒に部屋を出ていく。
「隊長、何を言ってるんだろうね。ねぇ、アンナ?」
「そうですね、仲間を殺す訳無いのに、先輩?少し向こうでお話しましょうか?」
「えっ!?ど、どうしたの?アンナ、顔が怖いけど?」
返事を返さず、オットーの手を掴み、詰所の奥まで引っ張って行かれ、奥からはオットーの叫び声が聞こえて来た。
「待って!アンナ、人の腕はそこまで曲がらないから~!」
(私の勘違いだったわね。こんな先輩があの仮面の男な訳ない!)
残念なオットーでした。
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