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勇者の監視を頼まれた俺。  作者: 東海さん
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4

アンナが事件を解決して1週間が経ち、漸く普段の日常が戻ってくる。


「いや〰️、大変だったね。アンナ。」


事件があった次の日から、どの様な経緯で起きた事なのかと聴取を取られ、被害者へのケア、男達の取り調べに付き添う等、多忙な時間を過ごしてきたアンナ。


「えぇ、誰かさんは直ぐに解放されてたみたいですけどね。」

「だって~、しょうがないじゃないか。俺は応援を呼びに行っただけだもん。」


オットーは見廻りの途中で(はぐ)れて経緯が分からず、最後に応援を呼んだだけと言う事で直ぐに解放されていた。


「だもんって何ですか?鳥肌が立つのでやめてもらえますか?」


凄く嫌そうな顔をして自分の両腕を擦るアンナ。その反応にショックを受けるオットー。ディーチはその様子を見ながら、溜め息を吐き、アンナに声を掛けた。


「アンナ、お疲れさん。忙しいかっただろうが、体は大丈夫か?」

「副長。確かに忙しかったのですが、体の方は何ともありませんから、大丈夫です。」

「そうか、トロワ隊長とアンナを少し休ませてはどうか、と話していてな?どうだろう、休みは要らないか?」

「副長、俺、俺は?俺も大変だったんですよ。アンナと逸れちゃうし、応援を呼びに詰所まで走りましたし。」

「副長、ありがとうございます。何日位休みが貰えるのでしょうか?」

「アンナに長い事休まれると困るんでな?2日しかやれんのだか、いいか?」


自分を無視して話を進める二人の顔を交互に伺う。


「副長、俺は「いえ、2日も貰えるなんて、嬉しいです。ありがとうございます。」………」

「アンナにはオットーの世話を焼かせてばかりだったからな。ゆっくりと休んでくれ。」


言葉をアンナに遮られて、何も言えなくなり、机の上で拗ね始める。

ディーチはオットーを呼ぶと、途端に元気よく返事をしてディーチに期待の眼差しを向ける。


「本来ならアンナと逸れた時点で罰則なんだが、応援を呼びに行ったりしたので、お咎めは無くなった。そんなお前に、休みが取れるわけ無いだろ!」

「そ、そんな~。うぅ、あァァァんまりだァァアァ!」


大の大人が机に伏せ泣き始めると、トロワが部屋に入ってきた。


「な、なんだ、どういう状況だ、これは?ディーチ?」


ディーチは事の顛末をトロワに説明をする。すると腹を押さえて笑い始める。


「はっはははは、そんな理由で泣いてるのか、オットーは?」

「隊長、そんな理由なんてひどいっす。俺なりに頑張ったんですよ!」


右手で笑い涙を拭いてオットーに、悪かったと謝る。オットーは顔をプイッと横に向けて拗ねてしまう。


「先輩の行動が気持ち悪いです。何とかなりませんか?」

「ア、アンナまで、酷いよ!俺が一体何をしたって言うんだ。」

「何もしないから、怒られるのでは?」


後輩のアンナに至極当然の事を言われて更に落ち込み始めて、また机に伏せる。


「分かった、分かった。オットーも休ませてやるよ!」

「た、隊長!それはいけませんよ!」


トロワの言葉を机の上で伏せながら、聞こえた様で耳がピクッと動き、チラチラとトロワとディーチの話を伺っていた。


「しかしなぁ、オットーが応援を呼ばなければ、アンナ一人で男三人を連れてこれなかっただろ。」

「それはアンナと逸れたからで逸れなければ、二人で連行は出来た筈です。」

「ん~、逸れたのは一方的にオットーだけの責任でもあるまい?アンナもオットーが居ない事に気付いたなら、探しに行くなり、待っていればよかったんじゃないか?」


トロワが逸れたのはオットーだけの責任じゃないと聞いて、確かにその通りだと納得してしまうアンナ。

(隊長の言う通りだわ、先輩を探すなり、待つなりしていれば男達も襲って来ずに逃げたかもしれない。勝手に先輩を役立たずと決め付けていた。)



トロワが言った言葉に顔色を悪くする、そんなアンナには誰も気付かず話をしていた。すると、拗ねていたオットーがトロワとディーチの話に割り込む。


「あの~隊長?いいっすか?」

「なんだ?拗ねてなくていいのか?」


皮肉混じりに返事を返してくるトロワに顔が引き吊る。


「アンナと逸れたのって、俺の所為なんですよ。俺が可愛い女の子を見付けて夢中になったのが悪いんであって、アンナは気付かず、あの場面に出くわしちゃたみたいなんですよ!」

「やはり、お前が悪いんじゃないか!」


オットーの頭にディーチの拳骨が落ちる。


「ぐぉぉ、痛てぇぇー、マジで痛い、いつもより痛い。」

「ふっははは、そう言う事ならオットー休みは無しだ。いいな?」

「うぅ、わ、分かりました。」


涙目になりながら殴られた頭を擦るオットーを見つめるアンナ。

(何で嘘を吐くの?私が暴言を吐いたから、それから先輩と逸れたのに。)


「アンナ。俺のせいで逸れちゃって、先輩なのに後輩のアンナの足を引っ張って、ごめんね?」


(『()()()()』あれ?今考えると似てる気がする。もしかして、あれは先輩?)



「い、いえ。私も悪かったので、先輩の所為だけじゃないですよ。」

「ど、どうしたの、アンナ?そんな事言うなんて、やっぱり怒ってる?」


オットーの所為だけじゃないと言われて狼狽える。


「怒ってないですよ、ただ…「ただ何?」自分にも駄目な所に気が付いただけです。」


アンナに近付き、左手で額を触り、もう片方の手を自分の額に当てる。


「な、何ですか!い、いきなり!」

「う~ん、熱は無いようだけど、大丈夫?」


顔を紅く染めていたアンナだったが、オットーの言動に顔から表情が消える。


「隊長、アンナの様子がおかしいので、もう少し休ませてあげられませんか?」

「お、お前。よく言えたな!?俺はこれで行くがアンナに殺されないようにな。」

「待って下さい。トロワ隊長、私もお供します。」


振り返りトロワにアンナの休暇を伸ばせないか?と訊ねると隊長に変な事を言われ、副長は隊長と一緒に部屋を出ていく。


「隊長、何を言ってるんだろうね。ねぇ、アンナ?」

「そうですね、仲間を殺す訳無いのに、先輩?少し向こうでお話しましょうか?」

「えっ!?ど、どうしたの?アンナ、顔が怖いけど?」


返事を返さず、オットーの手を掴み、詰所の奥まで引っ張って行かれ、奥からはオットーの叫び声が聞こえて来た。


「待って!アンナ、人の腕はそこまで曲がらないから~!」


(私の勘違いだったわね。こんな先輩があの()()の男な訳ない!)


残念なオットーでした。

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