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勇者の監視を頼まれた俺。  作者: 東海さん
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何とか書けたので投稿しました。

剣を杖の変わりにして詰所に入ってくるオットー。


「おい、オットー。遅刻だぞ!」

「仕方ないじゃないですか。副長のしごきのせいで、体が痛いんですよ。」

「それは、普段からお前が弛んでるからだろうが!もういい、早く自分の席につけ。」

「へーい、分かりましたよ。」


投げやりの返事を返すオットーにディーチが怒鳴ろうとすると隊長のトロワが入ってきた。


「「「「隊長。おはようございます。」」」」

「あぁ、皆おはよう。ディーチ、ちょっといいか?」

「私ですか?分かりました。」


オットーを叱ろうとしたが隊長のトロワに呼ばれたのでは、そちらを優先するしかなかった。オットーはそんな事とは知らず自分の席にたどり着き、机に伏せる。


「はぁ~、やっと着いた。副長には隊員の事を考えて欲しいよ。ねぇ、アンナ?」

「私に振るのやめてもらえますか?先輩と違って書類仕事がありますので。」

「あ~、それって昨日の奴だよね?副長のせいで手伝えなかったから、悪いなと思ってたんだよ。未だなら手伝おうか?」

「結構です。後ろ見た方が良いですよ。」


アンナに言われて、後ろを振り返ると青筋を浮かべたディーチが仁王立ちしている。


「あ、あれ?副長。隊長に呼ばれたんじゃ?」

「そうか。俺のせいで手伝いたくても手伝えなかったのか!それは悪い事をしたな。オットー。」


低い声で名前を呼ばれ冷や汗が滝の様に出るオットー。


「嫌だな、冗談、冗談っすよ。副長のせいな訳無いじゃないですか。なぁ、アンナ。」

「手伝えなかったのは、副長のせいらしいですよ?」


取り繕うオットーに引導を渡すアンナ。


「ア、アンナ?ここは冗談で終わらせる所でしょ?」

「すみません、先輩。私、冗談が言えないもので。」

「少し向こうで話そうか、オットー。」


奥に連れていかれるオットーの背中は売られていく子牛の様だった。



ディーチからの長い説教を受けて席に戻るなり机の上で寝ようとするオットーに声を掛ける。


「先輩。また副長に怒られますよ?その度に巻き込まれる私の身にもなってください。」

「後輩が先輩を庇うのは当た………なんて嘘ですよ、そんな怖い顔しないでよ。アンナ。」


睨まれてビビるオットーはアンナの機嫌を損ねないように起きて書類仕事を始める。

(後輩に睨まれてビビる先輩が何処にいるのよ。)

情けないオットーを見てこうはなるまいと心に誓うアンナ。


「オットー、見廻りの時間だぞ。アンナと行ってこい。」

「副長。また私ですか?他の人は?」


アンナが見渡すと視線を逸らす者、仕事を思い出したと部屋を出ていく者であっという間にアンナしかいなくなる。


「まぁ、そういうことだ。オットーの世話は任せたぞ。」

「副長。俺、体が痛いって言いましたよね?「なら訓練で」さぁ、行こう、アンナ。人々の平和を守りに。」


ディーチが訓練の言葉を出すと部屋を出ていく。昨日とは違って機敏な動きに溜め息しか出ないディーチはアンナに申し訳ない気持ちで一杯になる。


「では、行ってきます。」



渋々オットーの後を追いかけて出ていくアンナに今度、有休を取らせる事を真剣に考えるディーチであった。



オットーに追い付き、大通りから見廻りを始める。


「ごめんね、アンナ。情けない先輩で。」

「自覚がある事に驚きです。」

「えっ、あのね、アンナ。ここはそんな事は無いですよ。って言うところじゃないかな?」

「前にも言いましたけど。私、嘘は付けないんですよ。ごめんなさい、先輩。」


謝られてへこむオットー。(俺ってそんな情けないの?)

自問自答を繰り返してるオットーを置いてアンナは一人で歩いていってしまう。

アンナが離れていくのに気付かず、立ち尽くし独り言をブツブツと言っているオットーを街の人は避けて行く。



アンナが大通りから裏道に入るとオットーが付いて来て無いのに気付くが居ても居なくても一緒だと思いそのまま路地裏に入っていく。

暫くして我に還ったオットーはアンナが居ないことにやっと気付く。


「あれ?アンナ。おーい、アンナ。」

「衛兵さん。相方の人は先に行っちまったぜ。」

「えっ!?本当?早く追い付かないとアンナに怒られる。ありがとう。おっちゃん。」

「良いってことよ。頑張ってな。」


おっちゃんに手を振ってアンナを追い掛ける。



その頃アンナは路地裏の奥で若い女性の声が聞こえてきてその場所に向かう。



「嫌、離して、離してよ!」

「ここなら誰も来やしねぇよ。大人しくしな。」

「暴れない方が身の為だぜ。」


男は女性にナイフを押し当てて黙らせる。ナイフを見た女性は恐怖に震えて声が出せなくなってしまう。


「待ちなさい。何をやってるんですか!その女性を離しなさい!」


何とか現場に着いたアンナは声を上げて女性を離すように言うと男達が振り向く。


「また貴方達ですか?今度は見逃しませんよ。」

「ちっ!おい、この女もやっちまうぞ?」「そうだな。なかなか綺麗な顔してるしな。」

「逆らいますか?良いでしょう。少し痛い目にあってもらいますよ。」


男達に向かってサーベルを抜き、構える。男達は女性を逃げられないように服を切り裂き、その布で動けないように縛ってしまう。


「最低ですね。女性の敵は許せません。覚悟しなさい!」


アンナが男達の懐に入り込み、そのまま柄で男の鳩尾を殴る。


「ぐぇ!」「おい、だ、大丈夫か?」


蹲る男に問答するもう一人の男。その間にアンナはサーベルでもう一人の男の足に斬り掛かる。

アンナの剣が足を斬る瞬間とアンナは後ろから衝撃を受けて倒れてしまう。


「っ!もうひ……と……り……」


アンナの意識はそこで闇に沈んでいく。


「ちっ!お前ら、何やってんだ?こんな簡単な仕事も出来ねぇのか!」

「すまねぇ、兄貴。この女が強くて」


兄貴と呼ばれた男がはなしを遮る様に殴り付ける。


「言い訳するんじゃねぇ!殺すぞ。」

「悪かったよ。怒らねぇでくれ。」


兄貴に怒鳴られ震える男達は言われたままに女性とアンナを縛り付けて路地裏に消えていく。




「あっれ?アンナ何処に行ったんだ?見廻りのルートには居ないぞ?もう詰所に戻ったのか?ヤバい、アンナと一緒に帰らなかったら、また副長にしごかれる。急いで戻らないと。」




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