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遅くなってすみません。
オットーが勇者と会う前迄時間を遡る。
トロワの元にウィリアムからの手紙が届く。オットーから話を聞いたウィリアムが勇者に会わせる前に急いで書いた手紙であった。
「ウィリアム殿下からの手紙か」
手紙を開封して手紙を読むとそこには勇者を召喚したのでオットーとアンナを勇者の世話係としたいので二人を王宮に手配してほしいと書いて在った。
尚、オットーは既に王宮に居て話は通してあるとの事、トロワにはアンナに話をしてほしいとと書いて在った。
「オットーとアンナの二人か。二人の代わりを補充してくれるみたいだが、寂しくなるな」
オットーとアンナの掛け合いは隊の中でも名物になっている。それが見れなくなる事を残念に感じるがウィリアムからの手紙を無視する訳にもいかないのでアンナを部屋に呼ぶ様に他の隊員に伝える。
暫くすると部屋をノックするので入る許可を出すとアンナが入ってくる。
「隊長、お呼びと聞きましたが何でしょう?」
「アンナ、よく来たな。取り敢えず座ってくれ」
部屋に入ってきたアンナをソファーに座らせて呼び出した訳を伝える。
自分が勇者の世話係として呼ばれている事を聞いたアンナは驚きを隠せない。
「何故、私が呼ばれるんですか? 私はその他の衛兵の一人に過ぎないんですが?」
「それは俺にも分からん。しかし、ウィリアム殿下からの手紙にそう書いてあるんだ。因みにオットーも世話役らしいぞ」
「は? 先輩が? もしかして私を巻き込んだのは先輩ですか?」
「どうだろうな、その可能性はあると思うが。本当の所は俺にも分からんからな。」
「と言う訳でアンナ、明日からは詰所じゃなくて王宮に行ってくれ。門番には話を通してるらしいので名前を伝えてオットーに来てもらってくれ」
「明日からですか。………分かりました」
「急ですまんな。後で代わりの者を行かせるから引き継ぎだけ頼む。引き継ぎが済んだら今日は上がっていいぞ。」
「はい、失礼します」
部屋を出て引き継ぎの準備に向かう。
「さて、次はディーチに話さないとな。はぁ~」
オットーとアンナが引き抜かれる事を副長であるディーチに話さなければいけないが、ディーチはあれでオットーに良くしてやっていたのでどういう反応が返ってくるかを考えると頭が痛くなるトロワだった。
机に戻って来たアンナは自分が担当していた見回りのルート等を確認し、伝える為に簡潔な報告書を作る事にした。
「何で私が勇者様の世話役を。私を巻き込んだのが先輩なら、文句を言ってやる。」
自分が呼ばれなかったら、オットーだけが衛兵の仕事を止めて勇者の世話役をする事になっていた筈。そうしたら、また会って話すことが出来ないと思うと少しモヤっとしてしまう。
そんな事を考えながら報告書を書き上げると丁度引き継ぎの者が来たので、報告書を渡して説明をしていく。
昼には引き継ぎが終わってその事をトロワに伝えると帰っていいと言われて家に戻る。
家に戻って来て一人部屋に居ると明日から行く王宮の事を考えてしまう。
「はぁ~。勇者様はどんな人だろう? それに世話役って何をすればいいんだろう?」
自分で本当にいいのだろうかと色んな事が頭の中で浮かんでは消えていく。
明日の事を考えると溜め息しか出なかった。
翌日を迎えてアンナは服装に悩んでいた。
「どんな服装で行けばいいのよ! 私服で王宮に行ける訳もないし、どうすればいいのよ」
暫く考えたが衛兵の制服で向かう事にする。
「制服返してなくて良かった。衛兵の制服ならおかしくないよね」
王宮の近く迄、来るとそう言って自分の制服姿を見ておかしい所はないかをチェックして門番に自分の名前を告げると少し待つ様に言われて待っていると直ぐにオットーがやって来る。
「やぁ、アンナ。良く来たね。案内するから付いてきてよ」
「その前に先輩に聞きたい事があるんですけど、いいですか?」
「うん、何でも聞いてよ。俺が知ってる事なら答えるよ」
アンナが緊張してるだろうと思い、聞きたい事は教えてあげようと笑顔で答える。
「じゃあ、遠慮なく。何故私が勇者様の世話役に為ったのか? その理由を先輩は知りませんか?」
「え、いや~その。それは知らないなぁ~。何でだろうね?」
明らかに動揺を隠せないオットーの目は泳ぎまくっていた。
「やっぱり、先輩。何かして私を巻き込みましたね?」
「や、やだな~。そんな訳無いよ。ほ、本当だよ。ほら、この目を見てよ。」
アンナの追及を逃れようと必死になり、自分の目を見て信用して欲しいと訴えるがその目は信用出来る程に澄んだ目をしておらず、死んだ魚の様な目をしていた。
「先輩。「は、はい!」その目を見て信用しろと? そう仰るのですか?」
アンナの声が低くなり、慌てて返事をするオットーは顔から冷や汗が流れる。
「はぁ~。もういいです。さっさと案内してください」
「は、はい!此方です」
アンナが折れて案内をする様に言われて普段と違いキビキビと動き案内をする。
(全く、そんなに怯えなくてもいいのに。私ってそんなに恐いのかな? そんな事ないよね、うん。私より副長の方がもっと恐いよね。)
「ハックシュン!」
「どうした、ディーチ? こんな時期に風邪か?」
「すいません、隊長。風邪は引いてないので大丈夫です。大方オットー辺りが私の悪口でも言ってるんでしょう。しかし、オットーとアンナが抜けるのは痛いですね。二人はいいコンビでしたから」
「そうだな。まぁ、代わりに派遣して貰える者に期待だな。」
「どんな奴が来てもオットーよりはマシだと思いますよ。」
「オットーも真面目にやれば仕事は出来るんだがな。まぁ、向こうに行ってもアンナに怒られてそうだな」
「はは、その可能性は大いにありますね。アンナが怒ると副長の私よりも恐ろしいですからね」
「確かに。あれは恐ろしいな。オットーもよくアンナを怒らせるものだ、俺だったら、絶対に出来ん」
「私にも出来ませんよ。」
アンナは知らなかった、トロワとディーチが怒っている自分を恐ろしく思っている事に。
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