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勇者の監視を頼まれた俺。  作者: 東海さん
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 神から言われた事をウィリアムに何て言うか、ベッドでゴロゴロして考えていたら、ノックされて返事をするとメイドが入って来た。


「オットー様、ウィリアム殿下がお呼びです」

「あの~先にウィリアム殿下と二人で話出来ませんかね? 伝えたい事があるんですが」

「分かりました。ウィリアム殿下に聞いてきますので、少しお待ちください」


 メイドがウィリアムに聞きに行ってくれたので、その間に伝える事を腕を組んで考える。

 

 (先ずは俺の事を知る人はこれ以上増やさない。勇者は二人とも監視する事。そして一人では監視が無理なので、アンナに手伝ってもらう。その際に監視の事は秘密って、アンナにどう言えばいいのさ)

                                   神から言われた事を考えてもいいアイディアが何も浮かばない。無い頭で考えているとメイドから話を聞いたウィリアムが部屋に入って来た。


「オットー。私に伝えたい事とは何だ? 神の言葉の事か?」

「実はですね…………」


 ウィリアムに勇者は二人とも監視する事、一人では無理だと言うとアンナに協力して貰えと言われてどう伝えるかを考えている事を伝える。


「それはアンナと言う女性にも力を与えると?」

「そうそう力を与えないそうです。更に監視の事は秘密にしろって言われました。これでどうやって手伝って貰えって言うですかね?」 


 ウィリアムに泣き言を言うと少し考える素振りを見せてオットーに話し掛ける。


「そのアンナと言う女性は此方で何とかするから、気にしなくていい」

「でも、隊長と副長に迷惑を掛けるのも嫌なんですよ。隊長は良くしてくれましたし、副長も何だかんだ言って良くしてくれましたから。はぁ~」


 勇者の監視にアンナも引き抜く事に負い目を感じてしまうオットー、普段なら「じゃあ、お願いします」っと言って任せてくるのに、ここまで負い目を感じるのは隊長と副長にかなり世話になっていたからだった。

 

「そのアンナを引き抜くが代わりに優秀な人員を手配する。」


 代わりに優秀な人員を用意すると言われると副長が喜びそうで複雑になるオットーであった。


「兎に角、今から勇者に会わせるから付いて来い」

「分かりました」


 勇者二人が待つ部屋に行く。部屋の前に行くとメイドが中に居る勇者にウィリアムが来たことを伝えに行き、部屋に入る。 

 部屋に入ると男女の視線が此方に集まる。短い茶髪の髪を立ててオットーを見る男。黒い髪を肩で揃えてウィリアムを見る女。


(この二人が勇者か。女の子は可愛いと言うより、綺麗って感じだな。男の方はうわ、メチャ見られてるよ。気まずいな)


「お待たせして申し訳ない、勇者殿」

「いや、いいんだけどさぁ、その人が俺のお付きの人? 出来れば女の子が良かったな」

「大丈夫です。気にしないでください」


 男はオットーが自分の世話をすると知って明らかにガッカリする。女は自分には関係無いので、オットーを見ても何の反応もしなかった。

 

「え~と、オットーです。よろしくお願いします」   

「あーケイゴ・()()()だ」


 (えっ!? その若さで‼️ 自己紹介で何てカミングアウトするんだよ。この後、気まずいじゃないか!)


 ケイゴの頭を凝視してしまう。オットーがケイゴを見ていると嫌そうな顔をして聞いてくる。


「何をそんなジロジロ見てるんだ?」

「えっ、いや、その何て言いますか、若いのに大変ですね。」

「そりゃ、大変に決まってるだろ」

「そ、そうですよね。大変に決まってますよね。心中お察しします」


 (あの若さでカツラなんだから大変に決まってるよな。自分でカミングアウトしたからってジロジロ見るのは失礼だし、極力見ないようにしよう) 


 平民と思われるケイゴに家名が有る事を知らないオットーは勘違いしたまま頭を見ないように心に誓う。


「私はサエコよ。宜しく」 

「此方こそ宜しくお願いします」


 女の子はサエコと名乗り家名を言わないのでオットーの勘違いは続く。


「サエコ殿には後日に世話役を紹介するので待って欲しい」

「大丈夫です。出来れば女の子でお願いしますね」

「勿論だ。二人の部屋を用意してあるので、今日はゆっくりと休んで欲しい。此方の願いを聞いてくれて感謝している。ありがとう」


 一国の王子が頭を下げる姿に驚くケイゴとサエコ。周りのメイドが止めに入るが一向に聞き入れずに頭を下げ続けるウィリアム。


「頭を上げてくれよ。王子様に頭を下げられると落ち着かないから」

「元の世界に帰れるんですから、頭を上げてください」


 ケイゴとサエコが言って漸く頭を上げる。メイドに二人を部屋に案内する様に言って二人は部屋を出て行った。


「いきなり頭を下げるから、驚きましたよ」

「此方の都合で二人を別世界に呼んだのだから、頭を下げて感謝を伝えるのは当たり前だ」 


 当然の事をしたまでだ。と言うウィリアムを見る。自分達の都合でこの世界に呼んで手伝うのが当たり前だと言える立場に在ってもちゃんと感謝を伝えられる

ウィリアムを嬉しく思うオットー。


 (こんな人だから付いて行きたいと思えるんだ。) 


「オットー、お前が居た隊には話を通しておいた。アンナの事もな」 

「そう……ですか。お手数をお掛けしてすみません」

「いや、私の方こそ神から力を貰ったお前に頼ってしまって申し訳ないと思っている」


 頭を下げられたオットーは慌てて止めに入る。


「殿下、止めてくださいよ」

「しかしな」「殿下。前にも言いましたけど俺が神から頼まれた事です。殿下の手助けを感謝こそすれど、迷惑と思う筈がありません」


 言葉を途中で遮り、自分が思っている事を再度ウィリアムに伝える。


「すまんな」

「殿下、ここはありがとうでいいですよ」


 笑いながら冗談ぽっく告げるオットー。


(本当にこいつは出来れば今の隊に居たいだろうに。オットーには頭が上がらないな)


「ありがとうオットー」

「どういたしまして」


 部屋には二人の笑い声が響いた。



 

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