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違う感じの主人公を書きたくなったので書いてみました。
ここはユーシリア王国の首都ユーシー。
季節は春、よく晴れた昼下がり。
暖かな陽気は人々を眠りに誘う。皆が働く中でここにも一人、陽気に誘われ机の上で気持ち良さそうに寝ている青年が居た。青年の短髪の青銀色が窓から指す日の光が当たりキラキラと光っている。
「くーくーくー。」
「こいつは、起きろ!起きんかー!」
寝ている青年の耳元で叫ぶ人物がいる。その人物はオレンジ色の髪をし、長い後ろ髪を縛っている。眼鏡を掛け神経質そうに見え、歳は30代位の人物。
「えっ?なんだ!?なんだ、なんだ?」
耳元で叫ばれて青年は飛び上がって辺りを見回すと、そこには額に青筋を浮かべ眼鏡がキラリと光り、冷たい眼差しで見てくる人物が居た。
「こんな昼間っからいい身分だな。えぇ、オットー?」
「ち、違いますよ?ディーチ副長。やだなぁ~、俺が寝るわけ無いじゃないですか?なぁ、アンナ?」
「ディーチ副長。オットー先輩は確実に寝てました。」
アンナと呼ばれた女性は赤毛の髪をうなじで揃えている、歳は成人仕立ての15~16歳位だろうか、これまたオットーを冷たい目で見る。
「ちょ、お、お前は、な、何を言ってるんだ!」
「アンナはこう言ってるが、何か言いたい事はあるか?」
「え~と、そうだ!この陽気が悪いんですよ。俺は人一倍やる気は有るのにこの陽気が俺を」
かなり無理な言い訳を遮るようにディーチから拳骨が振り下ろされる。
「ぐぉぉぉ、痛てぇー。」
「くだらん言い訳をするな。さっさとアンナと見廻りに行け!」
「えっ!?私ですか!」
「そんな嫌そうな顔をするな。こいつ一人で行かせたらサボるに決まっているだろ?その点、アンナと一緒に行けばサボる事はできまい?」
「はぁ~。分かりました。」
心底嫌そうに溜め息を吐くアンナを見てオットーは顔を引きつらせた。
「アンナ?俺、先輩よ?」
「残念ながら知ってますよ。ほら、行きますよ。」
アンナが先に行ってしまい後ろを追い掛けてオットーも部屋から出て行った。
その後ろ姿を見て溜め息を吐くディーチに後ろから声を掛けられる。
「どうした、ディーチ?溜め息なんか吐いて。なんかあったのか?」
「なんかあったのか?じゃないですよ。トロワ隊長。オットーの奴がまた仕事中に寝てたんですよ!あんな態度でよく衛兵が勤まるものですよ。」
「オットーの奴またか?あいつも懲りないな。はははは、」
トロワと呼ばれた男性は金髪を短く刈り上げていて、隊員達には父親の様に慕われていた。
「笑い事じゃないですよ!此方の気持ちも考えて欲しいですよ。」
「オットーはやる時はやるからな。多目に見てやれ。」
「トロワ隊長はオットーに甘すぎます。」
二人は暫しオットーの事を話していた。
ディーチに言われ、見廻りをしながら、大勢の人が賑わう市場を歩いていく。
そこには色々な店があり、ある人は屋台で食べ物を売り、またある人は服を売っている店を見ながら食べ歩きをし、皆一様に笑顔を浮かべていた。
「あの~アンナさん?怒ってますか?」
名前を呼ばれて振り返りオットーの顔を見て溜め息を溢し、また歩き始める。
無言で溜め息を吐かれたオットーはアンナの後を大人しく着いてく他なかった。
「オットー先輩はどうして衛兵になったんですか?そんな体たらくで。」
「おい、体たらく言うな。此れでも一応貴族だぞ。俺は。」
「そうですね。男爵家の三男様でしたっけ?」
「うっ。それを言われると……」
後輩のそれも女性のアンナに言われ泣きそうになるオットー。
「何泣きそうになってるんですか?」
「うるせぇ、泣いてなんかないやい!」
「発言が子供みたいなんでやめてもらえますか?はっきり言って気持ち悪いです。」
「そこまで言うか?俺の何処が気持ち悪いってんだ!」
「強いて言えば………全部?」
自分の存在全てを否定され膝から崩れ落ちて両手を着く。
「ほら、遊んでないで見廻りをしますよ!」
「えっ、なーんだ。冗談か。もう人が悪いな、アンナは。」
近付き肩に手を掛けようとすると全力で避けるアンナ。
「あれ、アンナ?なんで避けるの?」
「何となくです。気にしないでください。」
アンナはオットーをその場に残し歩いていく、オットーの目からはキラリと光る雫が零れるが誰にも気づかれる事は無かった。
二人が街中を見廻っていると、騒いでる人の声が聞こえてくる。
「何かあったみたいですね。行きますよ、先輩。」
「頼もしい後輩を持つと涙が出るね。はぁ~。」
声を掛けると走り出し、その後からオットーが追い掛けていく。
現場に着くと嫌がる若い女性に冒険者らしき二人組が絡んでいた。
「なぁ、俺達と遊ぼうぜ♪」
「そうそう、三人で楽しい事しようぜ♪」
冒険者は若い女性の腕を掴んで離さない様にしている。
「離してください。私この後仕事があるんです。」
「お困りの用ですね。お嬢さん。私が来たからには、もう大丈夫です。」
気が付くと女性の横にいるオットーを見て呆れるアンナ。
(何故普段からその動きをしないのか、本当に嫌になる先輩だ。)
「なんだよ。衛兵の兄さんかい。俺達は女を口説いてるだけだぜ。」
「そうだぞ、衛兵の出番じゃないぜ。」
「そうは言ってもね、嫌がる女性を無理やり口説くのは感心しないな。早くその汚い手を離しなさい。」
「言ってくれるじゃねぇか、衛兵だからって俺達が手を出さないと思ってるのか?」
「おう、馬鹿にされたんじゃ、いくら温厚の俺達でも我慢できないぜ。」
「ふっ。お前達が束になって掛かってきて無駄だよ。」
オットーの言葉に身構える冒険者二人組。
「さぁ、アンナさん。やってしまいなさい。」
「「えっ!?」」
「先輩、本当にカッコ悪いですよ。自分で煽ったんだから、自分で処理してください。」
オットーの言葉に呆れて無視をするアンナ。
「えっ、アンナさーん。出番ですよ。」
「嘗めやがって。おい、やっちまうぞ。」「おう。」
冒険者二人組に捕まり、好き放題に殴られ蹴られるオットー。
絡まれていた女性は手が離れたのでそのまま逃げて行く。
「た、助けて~。アンナ~。」
「本当に頼りない。貴方達止めなさい!それ以上やるなら捕縛して牢に入って貰いますよ!」
男達はアンナの言葉を聞いて、オットーから離れて去っていく。
「うぅ、アンナもう少し早く助けてよ。」
「先輩も一応衛兵でしょ?チンピラ風情の冒険者にやられてどうするんですか?」
「はい、すみません。」
オットーに肩を貸して詰所に戻る。アンナには何故オットーが首にならないのか不思議でしょうがなかった。
「オットー。どうしたその怪我は?」
「あっ、ディーチ副長。これは女性を守った名誉の負傷です。」
「何平気で嘘ついてるんですか?守ろうとした女性は先輩が一方的にボコられてる時に一人で逃げて行きましたよ。」
「ちょ、だからアンナ。なんで本当の事言っちゃうの?女性を守った名誉の負傷でいいじゃないか?」
「すいません。私嘘は付けないもので。」
「はぁ~、もういいオットー。今から訓練だ。」
「ちょ、ちょっと。ディーチ副長。見てこの怪我、今日の所はやめておきましょう。ねぇ、そうしましょう。じゃあ、これで失礼しますね。」
逃亡を図ろうと踵を返そうとすると、襟首をディーチに捕まれ引きずられていく。
「副長、副長。怪我人ですよ俺。」
「そんなに騒げるなら大丈夫だ。今日はみっちりしごいてやる。」
ディーチに連れられていくオットーを見て、手を振りながら、離れていくアンナ。
「あ~、アンナ。待って~。お願い助けて~。」
この後、ディーチにしごかれたオットーは訓練場で屍の様に動かなかった。
此方は投稿が遅いかもしれません。話もすぐに進まないかも、それでも良ければ読んでください。