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ラスト・レジェンダ 剣と魔法と異世界転生  作者: 漬け物
第一章 冒険者の街フロル
2/22

異世界に転生


―――――――――――――――――――――――


「起きて!シュン!」


  誰かの声が聞こえる…


  「起きてったら!シュン!」


  俺は目を覚ました、あたりは暗くて俺の目の前には長い真紅の髪をポニーテールにしている小さい頃から一緒に育った幼馴染のアンリが居た。


  「なぁ…俺はどれくらい気を失ってた?」


  アンリの目は充血していた。きっと俺のために涙を流してくれたのだろう。


  「10分ぐらいよ」


  「そうか…」


  たったの10分で前世の記憶を蘇らせるなんて無茶するな。


  「アンリ…手鏡持ってる?」


 「家にならあるけど…何に使うの?」


  どうやらアンリは俺の突然の行動に不安を抱いてるみたいだ。


  「ただ顔を確認するだけだよ」


  アンリは不思議そうな顔している。


  「そう、ならそこの水で顔見ればいいんじゃない?」


 アンリに言われ俺は水たまりを覗き込んだ。


  そこには黒髪と黒い瞳の18歳の少年が写っていた。うん…見覚えのある顔だ。どうやら異世界転生には成功したらしい、このなんとも言えない中の上の表現が合う自分の顔を忘れるわけがない。


  さて次に確認することは【ステータス】だな。

  俺は昔からやっていた【ステータス】の表示を行った。



 アマノ シュン【Lv.1】

【体力】15

【力】14

【耐久】12

【敏捷】15

【魔力】5

【精神】13

【スキル】【片手剣Lv3】

【魔法】

【ユニークスキル】【???】



  ふむ、ユニークスキルの表示が見えないな…


「シュン?どうして急に【ステータス】なんて確認してるの?」


  アンリが不思議そうな顔をしている。


「いや、ユニークスキルが増えたんだけど確認できなくて…」


  アンリが俺の【ステータス】を覗き込んだ。


「ほんとだ!凄いじゃん!シュン!」


「でも確認できなきゃ使えないだろう?」


「うーん…スキルのことならシュンのお父さんが一番知ってるじゃん!今から聞きに行こ?」


「親父に?たしかに親父は昔、冒険者やってたみたいだけどわかるかな?」


  俺の父親(異世界)は昔凄腕の冒険者だったらしい、賞金首の高レベルモンスターとの戦いで足を怪我をして引退して今は母とのどかに暮らしている。


  「とりあえず行くだけ行ってみるか」


  俺とアンリが住んでいる場所はライゼン村といいアース国の最南端に位置する、モンスターの強さは国内最弱と言っていいだろう。


  アース国は魔王が支配する国の暗黒界と面しており、王都の北側に進めば進むほどモンスターも強くなって行く、ゆえに暗黒界から一番遠いこの村は比較的安全だ。


  自分の記憶の確認をしていると自宅に着いていた。


  中に入ると親父がちょうどリビングでコーヒーを飲んでいる姿が見えた。


「おじさん!シュンが【ユニークスキル】を覚えたの!」


  アンリの話を聞くと親父が俺の方へやってきた。


  「シュン…お前…覚醒者(かくせいしゃ)なのか!?」


  「覚醒者?」


  覚醒者なんて単語初めて聞いたぞ、マルクのやつ説明不足か?


  親父はそのまま話を続けた。


  「覚醒者とは突発的にユニークスキルを身に着けたものをいうのだ」


  なるほど、この世界ではユニークスキルは特別なもので、ゆえに発現した者は覚醒者か


「その覚醒者?かはわからないけど、気が付いたら発現してたよ」


  親父は少し寂しそうな顔をしながら頷いた。


  「そうか、覚醒者となったものは巨大な運命と向き合うこととなるらしい」


  親父は何か分かっているような口ぶりだった。


「親父…実はずっと前から考えてたことがあるんだけど」


「村を出て冒険者になりたんだろう?」


「え?知ってたのか?」


驚いた、てっきり親父はそういうのには鈍感だと思ってた。


「そらぁ、俺はお前の父親だからな!その面だと明日にでも出ていちまいそうだな」


「うん…明日にでも俺は旅に出たいと思ってる、だからその前にどうやったら【ユニークスキル】を確認できるか聞きたいんだ」


  「【ステータス】を見せてみろ」


  俺は強く念じ【ステータス】を表示した。


  親父はまじまじと見るとやがて口を開いた。


  「シュンの【ユニークスキル】は確認はできん」


  親父はきっぱりと告げた、そしてこう続けた。


  「だがしっかりと発現はしているよ、一度発動すれば【ステータス】で確認できるようになるだろう」


  どうやらユニークスキルの獲得は問題なくできてるらしい。


  「ありがとう、それだけわかればいいや、後はそのうちわかるでしょ」


  親父は思い出したように俺とアンリに言った。


  「そういえば…山猪(やまいのしし)を二人で狩ってくると言って出かけていったが…その様子だと狩ってないよな?」


  山猪とは山に生息する小ぶりのモンスターだ。見た目は名前の通り猪で発達した牙が特徴だ。モンスターの中では最弱の分類に入るが、戦闘慣れをしてないと痛い目を見るモンスターだ。

 ちなみにその肉はかなり美味い!


  「行こうとしたんだけど、途中でシュンが気を失っちゃって」


  アンリが申し訳なさそうに言った。


  「悪いが明日の宴で使うんだ、今からでも頼んでいいか?」


  俺たちが住んでいるライゼン村は半年に一度、朝から宴を開いて一日中どんちゃん騒ぎをする。   

  その中で山猪の丸焼きは大人気なのだ。


  「私はいいけど…シュンは大丈夫?」


  俺の急に倒れたのでアンリは心配してる様だ。


  「ああ…大丈夫だよ、明日には村を出るから戦いのおさらいもしたいしね」


  「ねぇ…ほんとにそんな急に出て行っちゃうの?」


  アンリは今にも泣きそうな顔で俺の服を引っ張る。


  「うん…この村に居てもレベルは上がらないからね」


  「それはそうだけど…」


  この世界には【レベル】という概念がある。しかしよくあるRPGのようにモンスターを倒したらすぐにレベルが上がるわけじゃない。

  レベルを上げるには【レベリングストーン】という石に触れなければないなら、その石は基本的には村、町に一個は置いてあるものだが、この辺境のライゼン村には置いてないのだ。


  「とりあえず行こうぜ、時間が遅くなればなるほど狩がしにくくなる」


  「うん…行こう」


  俺とアンリは家を後にして、山猪が生息する山の中へ入って行った。







  「……この足跡かなり近いな。」


  山に入って数分ほどで山猪の新しい足跡を見つけた。


  「まずは俺が一頭やるからアンリは見ててくれ」


「わかった!でも危なくなったら私も加勢するよ!」


「その時は頼むよ」


 アンリの【ステータス】は明確には覚えてないが俺よりは高かったはずだ。


  アンリは三年前にアンリの親父さんに連れられて、となり村に行ったことがあった。

 その時に【レベリングストーン】に触れて【ステータス】を更新したのだ。


「アンリのレベルって6だったっけ?」


「うん!そのくらいかな?」


 俺のレベルは1だから5も差がある。

【ステータス】自体は実質倍以上は違うだろう。


  そんなことを考えていると茂みからノソノソと山猪が出てきた。


  「きたよ!」


「わかってるっ!」


 山猪は俺たちを見つけると「ブルルル」と唸り猛突進をしてきた。


  「っ!」


 俺はかろうじて横に飛び山猪の突進を避ける。


  山猪の突進は恐ろしく、発達した牙を武器に猛スピードで突進して来るのだ。

 俺ぐらいの【ステータス】だとひとたまりもない。


  俺は再び猛突進をしようとする山猪に剣を向けた。


  俺とアンリが装備している武具は鉄でできた片手剣とド○クエでよくある旅人の服みたいなものを装備している。


  「ブルルル」


  山猪が突進してくる。そこに合わせて俺は【片手剣スキル】を発動する。


【ドライブ】


  【片手剣スキル】【ドライブ】は自分の任意の方向に高速移動しながら、そのスピードを乗せて剣を振るう技だ、移動距離は大体3メートルから5メートルほどだ。


「ブゴッ!」


  俺は突進してくる山猪とすれ違うように脇を抜け【ドライブ】を放つ。


  剣が山猪の胴に食い込み血しぶきを上げた。


「ブ…ゴ…」


 山猪は致命傷を受けたらしくそのまま倒れた。


「ふぅっ!こいつの脇抜けるのやっぱり怖いな、下手すると【ドライブ】の勢いで突進に突っ込む事になるから普通に死ぬ」


  俺が冷や汗を流しているとアンリが駆け寄ってきた。


  「シュンすごいね!いつもならもう少し手間取るのに今日はあっさり倒しちゃった!」


  そう、いつもなら【ドライブ】は使わずにもっと慎重に戦うのだが、明日には村を出ようと思っているのでなるべく試せることは試すべきなのだ。


  「次はアンリの番だな、そろそろ仲間の断末魔に反応してもう一匹くる頃だろう」


「うん!頑張るよ!」とその時


  「ブルルル」


  茂みの中から山猪が突進してきた。


 アンリは突進を避けようとせず剣を山猪の進路に構えた。


  「ブルルル!」


  山猪が剣と接触するとまるで自分から切られに行くように綺麗に両断された。


「はい!私の方がシュンより早く倒した!」


「ありかよ…」


 本来なら山猪の突進に耐えられず剣を持っているアンリが吹っ飛ぶはずなのだが、【ステータス】によって俺の倍以上の力を持っているアンリは突進の衝撃に耐えられるのだ、むしろ山猪の勢いを利用してぶった切るとは…


  「よし…帰るか、二匹もいれば明日の宴で足りるだろう」


  「うん!帰る!」


  どうやら俺より早く倒したのが嬉しいのかアンリは上機嫌だ。


  帰り道、アンリがずっと「う〜ん」と唸っていた。考え事をしているようだ。


  「どうしたんだ?」


「私は今悩んでるんだよ!」


「何に?」


「それは…まだ秘密だけど…」


  くそ、すごい気になる。

 しかし教えてくれる気配がないため俺は諦めた。


  家に着くと親父はまだリビングで一人椅子に座っていた。


「なんだ親父、先に寝ててよかったのに待っててくれたのか?」


「ああ…そんなところだ、ところでシュンよ」


「ん?なんだよ?」


「俺は考えに考えてある決断に至った!」


「なんの話だよ」


  親父のやつ急にどうしたんだ?


  「明日の旅の出発は認めない!」


「はぁ?何言ってんだよ、そもそも認められなくっても俺は出て行くぞ?」


「まぁ話は最後まで聞け」


  俺は親父の言葉を待った。


  「明日は俺と模擬戦をしろ、そこで俺に一撃与えることができたなら明後日、旅の出発を認めよう」


「え、本気か?」


  親父とは週に一回木刀を使って模擬戦を行う。それは三年前から始めたことだが今まで一回たりとも一撃すらいれられなかった。


「俺に一撃も与えられない奴が冒険者になってもすぐに死ぬのが関の山だ!これは譲れないぞ」


  今までの俺なら不可能だ、【ステータス】も圧倒的に違いすぎる。簡単に言うと俺がスキルを使って加速するより、通常時のスピードが俺の三倍はあるだろう、それぐらい差がある。


  「どうしてもか?」


「ああ…しかし俺も【スキル】を使ったんじゃ全く話にならないだろう、だから俺は【スキル】は使わない、それでどうだ?」


  それでどうだと言われてもその条件で今まで手も足も出なかったんだが…しかしそれは昨日までの俺だ。前世の記憶を取り戻していきなり強くなるなんてことはないが、それでも今までよりはいくらかマシになってるはずだ。


  「わかった。じゃあ模擬戦は明日の15時からでどうだ?」


 「その時間で構わない」


  アンリが何か言いたそうな顔をしているが話はこれで終わりだ。俺は家で休むのではなく山に向けて足を進めた。


  「ねぇ!シュンってば!」


  俺についてきたアンリがずっと騒ぎ立てている。


「なんだよ?」


「なんだよじゃないわよ!勝てる相手じゃないわ!無茶よ!」


  確かに今までの戦いを振り返っても勝負にすらなっていなかった。


「それはやってみなくちゃわからないだろ?」


「わかるわよ!シュンのレベルがもう少し高ければまだ可能性はあるかもしれないけど、今のステータスで勝てるわけないわ」


  ごもっともな意見だ、今のステータスだと戦いにならない。だが【片手剣スキル】だけはレベリングストーンに触れなくても更新されている、スキルを上手く使えばいけるかもしれない。


  俺の今の【片手剣スキル】はLv3だ。持ってる【スキル】は【ドライブ】と【スラスター】の二種類だけだ。だが俺にはこの二つで勝つ方法を考えていた。


「負けたら次の日にもう一度挑むよ、その次も負けたらその次だ、勝つまでやれば負けないってやつだ」


「はぁ〜もう勝手にして!」


 アンリは呆れたようにため息をついた。


「ところでシュンは今どこに行こうとしてるの?」


  俺とアンリは再び山に向けて足を進めていた。


「山猪相手に軽く【スキル】の確認をしようとね」


「ほんと?それなら私もついていくわ、万が一の時のためにね!」


  アンリは付いて来る気満々だ…


  「いや、アンリは村に戻っててくれ、あと一時間したら帰るから」


  「でも夜はゴブリンも活発になって一人だと危険だよ?」


「大丈夫だよ、そんなところまで行かないから、村の手前で山猪を待つよ」


「うーん…わかった!無理はしないでね」


  「おう」


  アンリは眠かったのかいつもより聞き分けが良くすぐに帰ってくれた。


「よし…行くか」


  俺は山の奥へと走り出した。

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