迷宮攻略 其の一
はい!まさかの二日連続投稿!
「ええ!?もう迷宮の中に?」
「ああ、俺らが来たと同時に中に入ってくのが見えた…全く、どうしよもうねぇ奴らだ」
シュンとティアちゃんと分かれアタシとイディアさんは迷宮前に居る。
どうやらゴルドさん達は先に入ちゃったみたい。
迷宮の入り口は少し独特な雰囲気で地面から急に地下に続く階段伸びていて不気味。
「まぁ、元々奴らから先に入る取り決めだったからな、入ってどれくらい時間経ってるんだ?」
イディアさんが気だるそうに聞く。
イディアさんは基本気だるそうにしてるけど、アタシ達のパーティで1番しっかり者だってアタシは気づいている。
今日はいつもと格好が違っていて、短刀を2本腰に装備して、荷物も多い。
「そうだな、大体1時間ってところか?もう少ししたら俺達も中に入ろう」
「了解です」
「おう」
「はーい!」
「おーけー」
とジールさんを抜いた他4人のメンバーが声を出す。
今日のパーティ構成は5人で前衛にタンクとして重戦士のガットさんと、探索と先制の役割でイディアさん、中衛は戦況のバランスと指揮を取るジールさんとアタッカー役のアタシ、後衛は支援役のミィちゃんだ。
互いに戦い方や立ち回りの最終確認を行って準備ばっちり!
そして、「よし、それじゃあ行くぞ!」といよいよ迷宮内に足を踏み入れる。
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ーフロル東門前ー
デート?今デートって言ったのか?deadの間違い?急になんだ?怖い……
「デ、デートっすか?……意味わかってる?」
「何を言ってるんですか?デートの意味はそのままですよ」
「はぁ……」
…まぁいいか…
急にデートしようって言われたからビックリしたが、反応を見るに特にそういうアレな感じでは無さそうだ……
「まぁ、とりあえず先にギルドに向かおうぜ、面倒な用事は早く済ませるに限る」
「わかりました。それならアマノさんは先にギルドに行ってください、私も後で行きますので、ギルド前で待ち合わせしましょう」
「ん?まぁそれはいいが……」
なんなんだ?今日のティアはよくわからん。
「んじゃ、先行くからな」
「はい、ではまたあとで」
「おう」
とりあえず、ティアと分かれギルドに向かう。ある程度回復したとはいえまだ体の至る所が痛い、しばらく無茶はしないようにしなきゃな。
ギルドまでは距離があるし色々考えながら歩くか……
そういえばあの防具屋に料金払ってなかったな……今回の報酬で払っとくか……それから今後の動きだよな……魔王を倒すにしたって何をどうすればいいのかさっぱりわからん……その辺はイディアに相談するか……それから今後の戦闘面での課題だよな……格闘スキルは必須な気がするな……これはどっかで修業が必要か……それから……それから…………
とそうこうしているうちにギルドに到着した。
ギルドの中は相変わらずで1、2階の酒場では朝っぱらから酒を煽っている連中がいる。
「朝からよくやるな……」
以外に昼間より朝の方がギルドの中は賑やかだ、おそらく朝にクエストを見繕って昼にはクエストに出て、夜はクリア報酬で飲む、その日暮らしの連中が多いからだろう。
とりあえず俺はクエストボードにたむろする連中を抜けて受付のある3階に向かう、3階にはいつも通りスーツを着こなした綺麗な受付のお姉さんがいる。
「あの……」
「はい!ご用件は何でしょうか?」と満面のスマイルを向けてくれる。やっぱ女性は笑顔が大事だよな、と癒されてる場合じゃないな。
「すいません、冒険者のアマノって言います。先日の件でお伺いしたんですけど……」
「え!?アマノさん!?失礼いたしました!すぐにご案内いたします!」と慌てた様子で4階の客間に通された。
ギルドの不手際で死にかけたし、結構お偉いさんが出てくるかもな……
ちなみに依頼書の件はイディア経由で聞いている。
数分後、二人の受付嬢と一緒に一人の優男が入ってきた。
男は魔導士のローブを着込んでいて一見弱々しく見えるが、その身のこなしには一部の隙も無い。
「初めまして、僕はアース国、S級冒険者第7席にしてこの町のギルド長、シリウスだ。この度はこちらの不手際で危険なクエストを受注させてしまいすまなかった」
この国でおそらく7番目に強い男が頭を下げた。
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ー東の迷宮内部ー
「前方ゴブリンファイター2体!ソルジャー1体!」
広範囲の索敵で素早く敵の戦力をイディアさんがみんなに伝える。
「魔法支援必要なし!ソルジャーを俺とガット、ファイターの方はイディアさんとアンリちゃんに一体ずつ頼んでいいか?」
「了解!」
「おう」
「はーい!」
ジールさんの素早い指揮でそれぞれ動き出す。
ゴブリンファイターはEランクのモンスターで、ソルジャーはーD、高ランクには人数をかけ、低いランクには最低限の戦力で応戦するのがセオリーみたい。
アタシはステータスに物を言わせ疾走し、ゴブリンに肉薄するそのまま反撃させる間もなく、首を切り落とす、流石にステータスの差がありすぎてEランク程度なら一瞬ね。
イディアさんの方はアタシ首を跳ねるよりも早く、ゴブリンの心臓に短刀を突き立てていた。
イディアさんが本気で戦っているところを見たことがないので少し気なる……
ジールさんとガットさんの方もすぐに決着がついた、ガットさんが攻撃をはじいてその隙にジールさんが大剣で止めをさしていた。
「全然余裕ね!!これならシュンが一緒でもよかったんじゃない?イディアさん?」
この程度の相手ならシュンが後れを取るハズない!それに戦わなくていいからアタシの頑張り見てほしかったなぁ。
「いやぁ、アンリちゃん、ここはまだ1階層目、下に行けば敵の数も増えてくるし、質も上がる、最低でもさっきのソルジャーが10匹一気に襲い掛かって来るって考えておいた方がいいよ」
そっか、まだ入ったばかりだしね、余計なこと考えないでアタシも集中しなくちゃ!
「うん!分かった!アタシ、シュンの分まで頑張るよ!」
「おう、あまり無理はしないでくれよ、俺がシュンに怒られちまう」
「よし!それじゃあどんどん行こう!」
ジールさんの掛け声でアタシたちはさらに迷宮奥へと進んでいく。
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ーギルド内4階ー
S級冒険者それは冒険者ギルドでは認定されない階級だ、なんでも王都の王様に直々に認めてもらわないとなれないらしい、そしてこの国にいるS級は全員で10人、その中でも細かく序列は決められていて、下位4名は東西南北にある都市のギルド長としてこの国を守っている。そのほかの者たちは特殊な任務や魔王軍との前線で戦っているらしい。
まぁ全部イディアに教えてもらったことだけど。
「まさか、この国のトップの実力者に会えるとは、光栄だね」
「ふふ、僕はそんな大層な人間じゃないよ、何たって僕より強い人はまだ6人もいるんだから……」
顔は笑っているのに目が笑ってねぇ、結構バトルジャンキーだったりするんだろうか……
「さて、そんなことよりも謝罪と報酬だ。カリン、サーラ」
シリウスに呼ばれて一緒に入ってきた受付嬢の二人が前に出る。
クール系のさっき俺が最初に話かけた方の女性がカリン、小柄なかわいい系がサーラだろう。
「この度は私共の手違いで大変申し訳ございませんでした!」と二人が頭を下げる。
「いやいや、こうして命がありましたし、そんな思いつめた顔で謝らないでください」
なんかこの空気感に堪えられないからフォロー入れておこう。
「ふふ、君は器が大きいね。この際だからはきっり言うけど、クエスト危険度の表記ミス、受注ミスは死に直結する、実際ランクが1階級違うなら死亡率は99%だよ、ちなみに残りの1%は逃走成功ね」
それを聞き、さらに青ざめた二人が再度頭を下げる。
いや~ぶっちゃけこの空気感本当に苦手なんだよね……学校の友達が先生にガチ説教食らってるの目撃してるみたいな……
「本当にもう大丈夫ですんで!さっきも言いましたけど命もありましたし、そしてわざわざ救援も呼んでもらって、倒れてるのを運んでもらいました、これ以上の謝罪は不要です」
「だそうだ、寛大なお心感謝いたします、カリン、特にサーラ、今後このようなことが無いようにしてくださいね」
「はい、ありがとうございます」と二人が部屋を出ていった。
「さて、ここからは報酬の話と、Dランク冒険者の君がどうやってあの推定ーBランクを倒したのかを教えてくれるかな」
さて、どうしたものか……別にユニークスキルのことは隠してないけど、何だかこの人にあの戦いのすべてを教えるのは少し気が引けるな……
……まぁいいか……特に隠してないし
「それじゃあ、まずは赤と青のオーガについて…………」
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ー東の迷宮第2層ー
「ガットさん!そっち行った!」
「了解!!ふん!」
ガットさんは大剣を横なぎに思いっきり振るう。
重戦士らしい豪華な攻撃でゴブリン二匹が宙を舞う。
「とどめ!やぁ!!」
宙に飛ばされたボロボロのゴブリンに止めをさす。
「ふぅ、流石にちょっと疲れてきたよぁ」
「だな、そろそろ3階層への階段が見えてくるころだし、休憩しようか」
周りにモンスターがいないことを確認して、いったん腰を下ろす。
「それにしても広いな、それに明るい」
イディアさんが不思議に光る壁を触りながら言う。
迷宮の中は思った以上に明るい、本来は松明や魔法ランタンなどの明かりを出せるアイテムが必要になるみたいだけど、今回は迷宮内の壁から光が溢れ出していてアイテムは必要ないほど明るい。
ここまで2階層の終わりに来るまで時間にして3時間、マップありでこの時間ならこの先はどのくらいかかるんだろう。確か出発前にイディアさんが5階層の迷宮なら3日以上かかることがあるって言ってたっけな……このペースなら今日中には帰れそうな気もするけど……
「それにしてもゴルドさん達に追いつかないね」
「あいつらなら探索済みの階層は猛スピードで抜けてるんじゃないか?あいつらの目当ては迷宮攻略じゃなくて金銀財宝だ」
「確かに……単体のゴブリンがちらほらいたわね……概ね進路を邪魔してるゴブリンだけ倒して進んでいるんでしょう」
エルフのミィちゃんが言うと「確かにな」とジールさんがいう。
「そういえばイディアさん、なんで倒したモンスターの魔石をそのポーチに入れてるの?」
迷宮内のモンスターは極小の魔石を落とす、倒した際に魔素でできた身体は消えてなくなり、代わりに魔石を落とすのだ。
でも落とす魔石は小さすぎてお金にならないって話だったけど……
「気にしないでくれこれは万が一の時に使う奴だ」
「使う?何に?」
「それは秘密」
「うー-、けちー」
「さて、そろそろ進もうか、早く終わらせて、キンキンに冷えたエールを飲もう」
「それはいいな、終わったらみんなで宴会だな、ジールのおごりで」
「俺のおごりかよ!まぁこのクエスト終わったらたんまり貰えるんだ、いくらでも奢ってやるさ」
「わーい!」
「楽しみね」
「期待してますよ、リーダー」
「次は3階層だ気を引き締めろよ」
アタシたちは3階層目に足を踏み入れた。
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「で、最後は奴の耐性を上回った俺の剣技が奴に止めを刺したのだ!」
ふぅ、語ったぜぇ……俺の名場面を事細かくな!意外と話し出したら興がのってしまった!
「ふむふむ、素晴らしいな……ユニークスキルをフルに活用した戦闘にギリギリの駆け引き、話だけじゃ判断が難しいが、最後の全魔力の魔法でダメージを与えていなかったら、きっと奴は倒せていなかっただろうね」
む、確かに、あの勝利は奇跡的なものだ、ティアにも後でお礼言っとくか……
「話は分かった、これは極めて異例なケースなので一応、各ギルドに共有しておこう」
「え?マジ?結構恥ずかしいな……」
「安心したまえ、名前は出さないでおくさ、それに君のようなタイプは次々トラブルに巻き込まれるだろうし、自然と名前はこの国に広がっていくだろう」
「そんな不吉なこと言わないでくださいよ、まぁ最終的には魔王を倒すんで、名前は広がるでしょうがね」
「へぇ魔王を倒すか……」
やべ、必要ないこと口走った!?
「ふふ、期待しているよ、それじゃあ今回の報酬だ、受け取ってくれ」
ドンッ!と机の上に袋が置かれた。
「金貨50枚だ、受け取ってくれ」
「え、ええええええ!?そんな貰えるのかよ!?」
「これでも少ない方だ、そして君には個人的にこれを送ろう」
シリウスから一本の杖を渡された、大きさは40センチぐらいか?小さいわりにちゃんと重さを感じる。見た目は何の変哲もない木の杖だが、先端に赤い宝石が埋め込まれている。
「俺、魔法とか使わないっすよ?」
「ふむ、では仲間にプレゼントするといい、きっと喜ばれるぞ」
仲間で魔法使うのってティアしかいないが、まぁいい、貰えるものはもらっておこう。
「それでは、今回は時間をもらって悪かったな、次の用事があるのだろう早く行きたまえ」
あれ?ティアと待ち合わせしてること言ったか?
「それじゃあ、失礼しますよ」
なんかいろいろ見透かされそうで嫌なので早々に立ち去る。
「それでは、また」と部屋を出たタイミングで聞こえてきた。
ギルドを出ると人だかりがギルドの前で出来ていた。
「なんだ?」
人だかりの中心には、黒いワンピースを着込んだ金髪のエルフが壁にもたれかかっていた。
そのエルフはどっかで見たことある顔をしていた。
着込んでいるワンピースは腰の部分を絞っていて、彼女のスタイルの良さを強調している、美しい金髪はセミロングの長さで、軽くパーマが掛かっている。すごい俺好みな格好をしてやがる……
「あ……」そこで彼女と目が合った……彼女は何故か俺の方に駆け寄る。
「アマノさん、遅かったじゃありませんか……それでどうですか……似合います?」と頬を赤らめてティアはそう言った。
か、可愛すぎんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!と心の中で絶叫をした。
迷宮攻略もデート回もまだまだここからですね!
※まだメインヒロインは決まっておりません。