始まり
何が起きているのだろうか。
朝起きたら僕の手はスライムになっていた。
起きて目をこすろうとしたらうまくこすれず、ひんやりとしてとぬちゃっとした感触が顔に張り付き驚いて何事かと手を見てみればスライムになっていたのだ。
最初は何事かと思った。新種の病気かなにかかとすら考えていた。
だが、原因は分かった。いや、思い出したという方が正確だろう。
1週間前のことだ母親にいい加減仕事を探せと言われ喧嘩になってしまったのだ。
明らかに自分が悪いのは分かっている、だが朝っぱらから(もう11時を過ぎていたが)起きてすぐに言われると気分を害するものだ。
正直タイミングが悪い。
俺はふて腐れて逃げるように外に出て意味もないのに渋谷へ向かう。
何をするわけでもないのだが、とにかく朝から何も食べていないのでとりあえずミクドナルドに行き、腹ごしらえをした。
腹も満たされたので次はゲームセンターにでも行こうかと移動中、突然パァンっと大きな音が鳴った。
驚き音が鳴った方を振り向くと渋谷の広告に使われている大画面に段ボールの箱を被った一人の男が映っていた。
「や!ハロー!このくそつまらない社会皆様どうも僕は神様です!!」
画面の方に目を向けていたが、多方向から同じような声が聞こえたので周りを見てみたらスマホもジャックされているようだった。むろん自分のスマホも見てみたが当然のようにスマホの画面には段ボールの自称神様が映っている。さらにホーム画面を押しても戻ることができなかった。この事態に周辺の人混みには軽く混乱が起きている。これどういうことなの!?と周りをうかがう者や、大画面に向かって切れるものもいた。
「突然なんだけど君たちの人生はどうしようもないからさ、だから神様である僕が君たちに力を与えることにしたんだ!」
「これで、世の中どうなるか、楽しみだなー!君たちも楽しみにしててねー!」
その後何事もなかったかのように大画面は元に戻り、スマホも正常の動作を保っていた。
元には戻ったが渋谷の混乱は戻らない。
俺はこの混乱を無視してゲームセンターへと向かった。
おそらくそれが俺の手から肘にかけてまでをスライムに変えたのだろう。
まず、この手はどうにかしなければならない手がスライムになったということは、ドアノブを回すことが出来ずこの部屋から出られないということだ。
とりあえず元に戻れと!念じてみる。
すると自分の手はスライムから手の形に形成され、元に戻った。
俺は部屋から出て階段を降り、茶の間に向かうとスーツをびしっと決めた黒髪で長髪の紙を一つにまとめた綺麗な女が俺の母親とテーブルに向かい合って話していた。すると母は俺の存在に気付いたのか、こっちに振り向きなぜか満面の笑みを浮かべ近づいてきた。
「あんた、良かったわねー!」
「は?なんのことだ!?」
「あんたの就職先がきまったのよ!!」
「ん!?」
「説明はあの綺麗なお姉さんから聞いて!私はあんたの分のお茶くんでくるから」
俺はとにかく、テーブルに座り女の話を聞くことにした。
「どうも、はじめまして重曹 封砂さん私は、こういうものです。」
すると、丁寧に名刺を渡された。
「これはご丁寧にどうもえーと・・・防衛省 “トイ”対策防衛チーム 村上 灯里?ええ!防衛省!?なんでそんなんが!?」
「重曹さん単刀直入にお話します。重曹さんには名刺に書かれてあるチームに入っていただきたいんです。」
「いや、急にそんなこと言われてもな、俺はただゆっくりダラダラと過ごしたいんだよ。残念だけど他をあたってください。」
正直めんどくさい、なんで国を守ってる連中がこんなクソニートをチームに入れるんだか
「そうですか・・・」
俺はもう話すことは何もないと思い席を立ち部屋に戻ろうとしたとき女は普通よりも声を低くし発言を返した。
「重曹さん体に何らかの異常をきたしてますよね?あなた、このままでは死にます。」
「え!?」
俺は驚いた。この女が俺の体の異変についてわかっていること、そしてこの状態では死ぬということに
「あなたに選択肢はない!あなたは、このまま放っておけば理性を失い最終的には死にます!そしてもし断った場合あなたはここで死ぬ!」
そう言い放ち女は俺に銃を向けた。
死ぬのか・・・それは嫌だなまだ全クリしていないゲームもあるし、見たいアニメもたくさんある。
「わかったよついていく、というか選択の余地ないよね」
「理解が早くて助かりますではついてきてください」
そういわれ、この女の後ろについていくことにした。
玄関をでると日がチカチカして眩しい。
まばゆさに耐え凌いだ先には高そうな黒塗りの高級車が止まっていた。
俺の優秀なエニート生活が終わる足音がした。