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EP.4

投げかけられた言葉はキャッチボールをする意図を感じない全力投球の球速160km。


差し出された右手を凝視しながら俺の脳内ではプチパニックが起こっていた。



日本は礼儀と伝統に重きをおく国。

教室という閉鎖社会においてでもそれをわきまえて隣人である俺に対して握手を求めるこの娘からは今時のJKにはない品格を感じる。


全国のJKに失礼だぞ!だって?

Pとイチャイチャしてるのに品格もなにもないだろ!!!



それは置いといて…

となりの席くんの俺に挨拶をする←わかる。

挨拶と共に握手←わかる。

会いたかったわ←わからない。


頭が混乱していて思考が追いついてこない。

パニック秀吉さんが手を差し出そうか決めあぐねていると…


『私のことは黒子でいいわよ。』


俺の右手を強引に掴むと一言。


久しぶりに女の子の手に触れちゃった☆

や、柔らけぇ…

男子とは明らかに違う異性であることを実感させる細くしなやかな手だ。



ちなみに女性は男性の手と指をよく見るらしいよ!いつも手は清潔にね☆(俺ぺディア調べ)



最後に女の子に触れたのは高1の夏だったか…

頭に浮かぶのは悪魔の顔…

今となっては思い出したくもない過去の契約書を脳内で閲覧してしまう。


そんな俺の嫌な思い出の扉を開いたことには気づくはずもない彼女は微笑みながら自分の席に着く。


『春日さん、申し訳ないのだけれどまだ転校の書類が残っているから職員室まで一緒に来てもらえるかしら?』


高校2年生の始まりを実感させる新学期の連絡事項を説明した後、転校生に投げかけられた安藤先生の言葉にはい、と返事をした後朝のHRの終了を告げるように2人は教室を出て行った。



台風の目、クララジェーンが去った後の教室は大惨事になっていた。被害者はもちろん俺1人。


『春日さんとどういう関係なんだ!!』


『許嫁とかなの⁉︎』


『おまえリア充だったのか!!??』


あっという間に俺を取り囲んだクラスメイトたちは好奇の感情が赴くままに答えられもしない量の質問を投げかけてくる。


俺は新学期早々人気者になってしまったようだ。陰キャラの同士諸君、すまない。

俺は今日からスーパーヒデヨシとしてグレートマックスに生きていくぜ!!



バカなことを考えていたせいでクラスメイトたちの質問に答えられず苦笑いをしてあたふたしている俺を無言で見つめる4つの目。


2つは血走っていて、無言で裏切り者!!と怒りを露わにしている友人の目。


2つは訝しげな視線でこちらを睨む幼馴染の目だ。


『お前たちはやく体育館に行けー!始業式が始まるぞー!』


始業式が始まるにもかかわらず教室に残っていた俺たちに怒りを混ぜた大声をあげた学年主任に急かされ、2-Aの生徒たちは急いで体育館に向かう。


式の最中は静まりながらもクラス連中の雰囲気はどこか浮き足立っている。まるで与えられたおもちゃではやく遊びたい子供のようだ。おもちゃ側からしたらたまったものではないんだけどね。


2人に対してどう説明すればいいのか必死に考えていたのと、この後にも待っているだろう質問攻めに頭を悩ましていたせいか始業式はあっという間に過ぎ去ってしまった。



その後も予想通り、授業が終わり休み時間になる度に1番後ろの席に人が集まる。その中には他のクラスからも転校生の顔を一目見ようとしたのだろう知らない顔がいくつもあった。


意外だったのは転校生さんが質問に対して曖昧に言葉を濁すだけだったことだ。当の本人たち2人が曖昧なことしか言わなかったためだろうか、4時間目の授業が終わった頃には教室は普段の日常を取り戻していた。



流行って…気付いたらすぐ過ぎ去ってるよね…人気者タイムは終了デスハヤイネ。



朝から続いた苦行の疲れがいつもよりもお腹を空腹にしていた。待ちに待った昼飯の時間、


逃げるように弁当箱を持って早足で教室を出て図書室に向かう。教室で食べないのが陰キャラSTYLE。騒がしくない落ちつきと憩いの場へと足を進める。



ドアを開くとそこには既に先客がいた。



『遅いですぞ!秀吉殿!』


遅かったかな、俺?

この子なんでこんなに早いの?

授業が終わってすぐさま図書室へ向かった俺より早いっておかしくない?


『はっはっは!!まだまだですな〜秀吉殿!!吾輩のスピードについてこられないとは!!!』


体型に似合わない素早さを持つ高松氏は口の中にご飯を入れながら意気揚々と叫ぶ。



うわ…汚っ、、、

口の中のものはしっかり飲み込んでから喋ろうね!友達同士でも最低限のマナーは大事だと思うな!!



図書室内で飯食ってるやつがマナーの話をするなと言いたい気持ちはわかる…


だがしかし、

図書委員である高松が言うには図書委員で昼休みの当番の生徒は昼飯を室内で食べていいというルールらしい。俺はその恩恵に預かっているというわけだ。




『そんなことより、あの怨那とはどういう関係なのです⁉︎

秀吉殿には説明責任を果たす義務がありますぞ!!!』


知らん!こっちが聞きたいくらいだ…

階段ですれ違ったくらいで初対面に変わりはないという旨を話してみたが、、


『なるほど、嘘ではない様子ですな…』


『さすが高松…話がわかる男だ』


友人づきあいが長いだけあってすんなりと話を飲み込んでくれたようだ。

しかし、意外とあっさり信用してくれたもんだな…そんなに信用してくれているのか…俺は嬉しいぞ友よ。。。


『秀吉殿のその脇を見れば一目瞭然ですぞ!状況に困惑して冷や汗をかいてしまったのですな!!可愛い女子に話しかけられて汗をかくヘタレな秀吉殿がリア充な訳ないですな!(笑)』



脇のあたりだけ緑色が深緑色になっている。俺たちの友情は脇で確認できるほど安いものだったようだ。


『告白されたみたいになってたけど、結局あれからあの娘と話してないんだよな…』


『それは感謝するべきでは?

おかげでクラスの連中の興味がむかなくなったのは事実でありましょう?』



確かにそうだ。

高松氏の意見は正論だろう。

でも、彼女の発言がそもそもの発端な訳だし…

なんだか手のひらで踊らされていたようにも思える。俺の慌てふためく様子を楽しんでいたとか?さすがに違うか。。。


『それにしても可愛かったですなぁー、2次元にしか興味の吾輩の目にとまるとはなかなかすごいですぞ!!』



何様なんだこいつは……


『今までは日向殿が単独トップでしたが、春日殿の登場により荒れますぞぉ〜、男たちが放ってはおかないでしょうな!!!』


『だろうな』


『ライバルが秀吉殿なら吾輩でもアタックすればいけるかもしれませんな…』


寝言は寝てから言って欲しい。



高松の言う通り告白じみた挨拶をもらったからといって俺のリアルが変わることはない。あんなに可愛い子が俺にしたことなど、クラスに早く馴染むための演出だと思われていることだろう。

今頃はクラスの男子たちが必死にアピールしようと話しかけているだろう教室の光景が目に浮かぶ。


転校生の話からオタトークへと話がうつり、箸も進みお互いの箱が空になった頃図書室のドアを開ける音と共に聞き覚えのある声が響く。


『やっぱりここにいたぁ!!!!探したんだよ!!!!』



男が2人だけという意味深な空間の中に入ってきたのは腐ってはいない女子。


『ひ、日向殿ですと!!我らが聖域に女神が降臨なされた…!この素晴らしい昼休みに祝福福を!!!!』


1人で盛り上がっている高松氏とは対照的に俺は少しばかり焦る。

燈の用件はさすがに誰でもわかるだろう。


『あの娘とはどういう関係なの!!!あなたには説明責任があります!!』


目の前でまだ興奮しているキモオタと同じ言い回しの幼馴染の言動に若干引きつつも高松にしたのと同じ説明を繰り返してみる。


『知り合いじゃなかったら、“会いたかったわ”なんて言う訳ないでしょ!!!』


う〜ん、、

燈ちゃんには通じないみたい。。。

キモオタには通じたのに。。。


『本当に知らないんだって…』


『どうせ小さい頃に結婚の約束をした仲とかなんでしょ⁉︎ザクシャインラブなんでしょ⁉︎』


『違うわ!!』



リアルな修羅場って面白いですなぁ〜

ご飯が進みますぞぉ〜

とか言ってるキモオタマジウザイ。

ご飯が進むとかいってるけど弁当箱はもう既に空じゃないか…


『本当にしらないんだって!!

それに昔から今まで付き合いのある女の子なんて燈くらいだし…』



必死の弁解のおかげか燈はようやく口を閉じてくれた。まだ怒っているのか顔は少し赤いがひとまず落ち着いてくれたようだ。


『本当にしらない子なの?』


問いと共に急に近づけられた顔。

柑橘系の香水だろうか、いい匂いがする。勢いで黒く綺麗な髪が俺の顔にあたりそうになる。至近距離で見つめてくる大きな瞳、色気を感じてしまう小さな息遣い…


近い近い近い近い近い近い可愛い近い!



唾を飲み込みながら無言で頷くと顔を離して独り言だろうかぶつぶつと何かを呟くこと数秒後、



『うん!!わかった!!秀くんは私に嘘ついたりしないもんね!』


笑顔でそんなことを言う。彼氏がいなかったら勘違いされてもおかしくないぞ…その笑顔…


ゲホッゲホッ、ゴホガハッ!


わざとらしい咳の主は2人の世界から完全に置いていかれていたオタクだった。


っていうかわざとする咳でむせるとか呼吸器官大丈夫か…?現実に引き戻してくれた友人の体を気遣っている俺の隣の席に燈が腰を下ろす。


『それにしても可愛かったよねー黒子ちゃん!!


私、最初お人形さんかと思ったもん!』



『あの白髪は綺麗だったなぁ…』



『“先天性白皮症”といって、生まれつきメラニンが欠乏してしまうという症状は世界中で例があるのです!国によっては天使の遺伝子とも言われているらしいですぞ!』



天使の遺伝子はウイリアムス症候群じゃなかったか…?いや、今口に出すことでもないか…



『高松くん物知りだね〜!』


『そ、それほどでも…デュフフフフ…』



意外にも女子とまともに話せる高松の対人スキルの高さとキモい笑い方にドン引きしつつも会話は続く。



『どこか“人間らしさ”を感じない見た目なんだよなぁ』



『そうかなぁ?2人が前に言ってた‘可愛いは正義!!’ってやつじゃないの?』



『日向殿の言う通り!!可愛いは正義…可愛ければそれでよいのですぞ!!』



可愛ければなんでも許されたら法律は1つしかいらないだろ。それに気になるのはあの“春日”という苗字…



そんな会話の途中にまたドアを開く音が鳴る。今日は来客が多いな、と思いつつ視線を向けるとそこには噂話の張本人であるアルビノの天使が…


『え…』


『あれ、黒子ちゃんだ!!』


『天使降臨キタコレェェェ!!』


三者三葉のリアクションに反応することなく無言で歩き、いつの間にか俺の目の前にいる天使様。



『今日の放課後、体育館の裏で待っているわ、秀吉君。』


そう言い残すと足早に図書室を去ってしまった。しばしの沈黙が訪れる。



『やっぱりザクシャインラブじゃん!!!!』



『秀吉殿…腹切りの介錯人は吾輩が務めさせていただきますぞぃ!!』



沈黙を破る2人の叫びに頭を抱えるしかない俺。天使様は人間に試練を与えて遊ぶのがお好きなようですね…



試練というものが島巡りのように簡単にいかないことを知った俺は目の前にいるしまキングとしまクイーンを倒す方法を昼休みの残り数分で考えるために思考を開始した…












初めまして、作品を書かせていただいてる蓮華。と申します。初めて作者として読んでいただいている皆様の前に姿を出させていただきます。


まずはここまで読んでくださっている読者様に感謝を…ありがとうございます!


物語としてはやっと序盤がおちついたところでしょうか。タイトルにある“ヤンデレ”要素が全く無いじゃないか!!!と思っている皆様、大変申し訳ないです(汗)もうしばらくお待ちいただけると嬉しいです。


作者の顔が作品に与える影響は少なくないというのが身勝手な持論なのでこれ以上は語らないでおきますね…


と言いながらも最後に少しだけ、、、

この話を境に物語がようやく動き始めます。ここまで付き合ってくださっている読者様には本当に感謝しかありません…ありがとうございます!もうしばらくお付き合いしていただけると作者冥利につきるというものです…



では、短いながらもこのあたりで筆を置かせていただきます。後書きまで目を通してくれた読者様に3度目の感謝を…



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