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2EP.8

激動の夏休み。短期集中妹支援プログラムも今日が最終日だ。あれから手伝うこと数日が経過している。ブサイク高校生が、若々しい中学生たちにあまり馴染めず黙々と仕事をしていた話を聞きたい人いる?いないよね?だから省略。


休みなのに早く起きてしまう特殊能力がオート作用してしまった俺は、朝の光を浴びるためカーテンを開ける。


「いい朝だぜ!」


「朝というものを良い、悪いで判断するのはどうかと思うわ。晴天か曇天かを判断基準とするのもあなたらしい浅はかな考えね。朝鮮出兵と呼ばれるあの出来事並みに浅はかだわ」


俺のことを馬鹿にするのいいけど、昔の偉人が行なった行為を馬鹿にするのはやめなさい。


「前日が日照りで猛暑だとしたら、涼しさを感じるような曇天は悪いものではないわよね。むしろ快晴を鬱陶しく感じる。でも、前日が台風だったとしたら快晴は喜ばしいものよね。むしろ曇天だったらまだ雨が降るんじゃないかって悪いものと感じてしまう。結論から言えば天気なんて人間のエゴよ。人間が自由気ままに良し悪しを判断し組み上げるエゴブロックよ」


そもそも"天気を組み上げる"なんて日本語はない。それにエゴを強調したい比喩なら少しばかり強引な気もする。


「それもエゴね。日本語を定型化して狭い固定概念に囚われて造語を否定するその腐った精神がエゴだわ。むしろあなた自身がエゴ、あなたはエゴで構成されたエゴブロックよ。ほら、早くその『寝癖頭の髪の毛パーツ』を取りなさい。取ってあの頭の出っ張りを私に見せなさい」


「これは地毛だ!取れるわけないだろうが!人を指が2本しかないプラスチックの人形扱いするな!!」


あれ?ついツッコミを入れてしまった俺なのだけれど、そもそもこの部屋には俺1人しかいないはずだからツッコミを入れることなんてないはずなのだけれど。後ろを見るとどこから引っ張り出したのか俺の中学生時代のジャージを着た黒子さん。太陽光を反射する銀髪にも見えるその短い白い髪をもつ黒子さん。いい朝と言っただけで人をレゴブロック扱いしてくるレゴ子さんが、椅子に座っていた。


「なんでおまえがここにいる…?」


「人間がどうしてここにいるのかという哲学的な問題をここで引っ張り出すのね秀吉くんは。いいわ、その話に乗ってあげる。私という存在が生まれたのはあの日あなたが……」


「やめろ、やめてくれ、やめてください。そんな話は聞きとうございません。お願いだからちゃんと答えてくれ……」


「私はちゃんと答えたかったんだけど…まあいいわ。私がここにいる理由は1つ。秀吉くん、あなたに会いたかったそれだけよ」


ドヤ顔を見せつけるあたりが、全くドキドキできないこの状況。黒子は今の台詞に俺がドキドキしていると思っているらしいが、俺はそんなラノベ主人公ではない。あんなにちょろくない。目の前に座っているのは確かに美少女ではあるけど、あの黒子さんだ。突然家にやってきてデートに誘うやつだ。結論、性格に難ありということ。日本のトップアイドルの趣味がアリを殺すことだったらファンになんかならないだろう。結婚すると公の場で発表しても、『あ、そうなんですね。婚約相手はキリギリスですか?』くらいの感想しかないに違いない。普段から俺をアリくらいにしか思ってない黒子にドキドキなんてしないぜ。


それに…


「ここにいる理由になってないじゃないか。なんでおまえが俺の部屋に上がり込んできているんだと聞いている」


「ピッキングよ」


「なーんだ、母さんが入れたのかー。まったく、俺の許可もなく黒子を部屋に招くなんてうちの母親は…ってえ?ちょっとまって?もう1回言って?」


「ピッキングよ」


いや、"ピッキングよ"じゃねえよ!涼しい顔してなんてこと言ってんだよ!普通に犯罪じゃねえか!!


「これは新境地の開拓…美少女が犯罪を犯す姿フェチの秀吉くんを思って仕掛けさせてもらったわ」


「そんなフェチじゃない……」


「そうみたいね…秀吉くんって胸が大きな女性が…」


「あーあーあーあああ!!!やめてよもう!出て行ってよもう!!」


黒子が手にしていたのは、健全なる男の書。ただの嫌がらせだった。


「お兄ちゃーーん?準備できてるー?開けるよー?」


そんなところに美晴の声が扉の奥から聞こえる。ノックの音も聞こえたから扉の前にいることは確実。そして開けることももう確実。


「あ、黒子さん…。おはようございます」


「おはようございます、美晴ちゃん」


可愛い女の子が俺の部屋に2人もいる。これだけ見れば誰もが興奮を隠せないと思うかもしれないけれど。黒子さんは堂々と美晴の前で男の書を開いている。むしろ音読をする小学生のようにその書を高く上げ、美晴の目にとまるようにしている。案の定…


「え……」


美晴ちゃんの目に入るわけで。そして黒子ちゃんも追い打ちをかけてくるわけで。


「秀吉くんが、私の胸では弾力が足りないから豊胸手術をしろ!って言ってきたんだけど…どう思うかしら美晴ちゃん?秀吉くんが渡してきた参考資料がこれで…」


あはははははー。僕、黒子さん嫌ーい☆


「最低の兄の部屋の空気を吸うのが限界なので私、外に出ますね。1階で朝ごはん食べてるんで何かあったら呼んでください。すぐに警察呼ぶんで」


バタンッ!!、と。

閉められたドア。美晴の表情は曇天を通り越して雷雨、台風の域。それに対して黒子の方は…。


「いい朝ね!!!!」


満点の青空、快晴のように清々しい笑顔だった。

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