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2EP.2

やっぱ声優さんって演技上手すぎるだろ…。


場所はショッピングモールのアニ○イト。

拘束デート先で黒の組織をまいて逃げ込んできたハックくんの家は、まさしくオサレなモールで行き場のないオタクが逃げ込める場所だった。


今期のアニメのPVやCM風の円盤宣伝、主題歌の告知をするモニターの前で息を呑む。家のテレビで見るのとはまた違った興奮を覚える。この気持ち、わかる人いないかな…。店内で垂れ流しのBGMにするのはもったいないと思うほど神すぎるアニソンと、モニターで流れるアニメの関係性がゼロなのはご愛嬌だ。それにしても…今期は、熱い!!



「ひ・で・よ・し・くーん」


おっと、もうお迎えが来てしまったようだ。アニメ愛の沸点を超え蒸発した感情を急速冷凍するのはとなりの黒子さん。さっきまで隣で店員さんが品出しをしていたはずなのに、いつの間に入れ替わったんだ…。


「私がお花を摘んでいる間に勝手に行ってしまうなんて、男性の態度としてはどうなのかしら?」


「ふっ…。黒子よ、俺は一人の男である前にオタクだ…」


「そんなオタクとこれから映画を見る者としては…そのクッキーを買うのは、やめてほしいのだけど」


普段、あまり感情を表に出さない彼女が珍しく薄目で引き気味に見るのは俺の手元にあった一つの菓子箱。50%引きのシールが貼られたその箱の名は、『お○ちゃん、おやつだにゃん♡』。可愛らしい幼女がプリントされた包装に包まれたものだった。


「さすがの私も、引くわ」


知らない人もいるかもしれないから、一応説明しておこう。この店には漫画、ラノベ、CD、DVD、グッズなどの数多くの宝物が置かれているがその中には食べ物も存在しているのだ!比較的小さい店舗であるこんなところにも置いてあるなんて、アニ○イトさんは食べ盛りの成長期オタクになんて良心的なお店なのだろう。


そんなお店の恩恵を享受しようと小腹を満たす目的で手にとってみたのだが…同行者は不満があるようだ。俺はただお腹が空いているだけなのに…。



「さっき食べたラーメン、少し麺が伸びていたと思わない?」


お腹が、空いてる、だけ、なのに…。


「秀吉君は、麺を三玉も追加していたわね」


オナカガ、スイテル…。


「たくさん食べる男性って素敵だと思うわ」


…。


「でも、あなたが本当に食べたいのは、それに描かれているような可愛い女の子なのかしら?」


「やめてぇぇぇぇぇえええええ!!!!、段々と声を大きくするのやめてぇえ!!店員さんみてるから!!お客さんもみてるからぁぁぁあ!!」


黒子の容赦のない言葉責めに白旗をあっさり挙げた俺です。そんな床に膝をついて俯く俺に責めの手を止めない彼女は、


「はぁ…。あなたの欲望のままに動くその姿勢はとても好きよ。でも、そういのって、ほら、世間ではロリ…プフッ…」


…。


「悪いことではないわ、あなたたちが言っていた可愛いは正義ですものね。でも実の妹がいるのに“お○ちゃん、おやつだにゃん♡”って…プフッ、フフフッ…ど、どうなのかしら」


…。


「何度も言うけど、悪いことでは決してないと思うわ。ただ、その、世間体というものがあるでしょう?今は、フフフ…ネットショッピングというものもあるというのに…ププッ…勇者ね」


「は、ハハハハ…。クッキー買っただけで憧れの勇者になれるなら本望だぜ…!」


「ええそうね。魔王を倒した伝説の武器はその箱になるのでしょうね」


………。

くそおっ…!!!!こいつぅぅうう……。

勇者のHPを言葉責めだけで0にしたこの女は、魔王よりも凶悪な裏ボスだった。この悪魔め…、買ってみたいという衝動に抗えず行動に移してみたらすぐこれだ。

ネットショッピングぅ?

はっ…!冗談やめてほしいね、店で直接手に持ってレジまで運び、バックまで入れなければ真に購入したとは言えないだろ!


「美晴さんが知ったら、どうなるのかしら?」


嗜虐的な笑みを浮かべながら、スマホについているカメラのレンズを俺に向けさらっと爆弾投下の準備を進める幼馴染。


「あの、黒子…さん?」


「あなたが、幼女の妹に欲情するって知ったら…面白いことになりそうね」


「黒子様。どうかお許しください。全てはあなたの望むままに」


勇者は悪の手に落ちました。土下座する俺の写真を撮って満足した悪の権化は携帯をしまい、さらに俺を惑わしてくる。


「そんなに幼女が好きなら、私に頼んでくれればよかったのに。あなたのためなら幼女くらいすぐになるのに…」


「は…、なんじゃそりゃ?黒子の子供の頃の写真でも見せてくれるってことか?」


「ふふ…。そういうこと、かもね?やっぱりあなたをいじめていいのは私だけだわ」


楽しげな様子で出口へ向かう彼女に会話を打ち切られてしまったため、俺も商品を棚に戻して後を追う。周りの人の目が、痛い。これは自業自得だからしょうがないか…。

気づけばもうすぐ上映時間が迫っている。先を歩いていた女の子に追いつくと映画館のある二階へ行くためのエスカレーターに乗り込んだ。


 この映画館、チケット購入が無人の機械…だと。俺が知っているのは、綺麗なお姉さんからプリ○ュアのチケットを直接もらうというあの背徳感にあふれたカウンターでの購入だったのに…。


「秀吉君、何をしているの?早く買わないと頭がカメラの人が出てきちゃうわよ」


「わかってるよ…えっと、これは画面をタッチするのか…。って痛ぇ!!!!」


画面に触れた瞬間、右手の人差し指に刺激が。まだこの季節じゃないはずなのに…。これが、等価交換なのか。便利だが、その代わりとしてお客にダメージを与えるなんて…。何かを得るには、それに応じた対価を支払わなければならないのか…。全く、残酷な世界だぜ。


「オタクの錬金術師さん?チケットはもう買ったからいくわよ」


「いつの間に!!っていうかお前…もしかして静電気のこと最初から知ってたのか?俺に買うように促したのはこのためだったのか?」


「さぁ?」


 露骨に目をそらすあたり相当怪しいと言える。これは、追及してやろう…!


「私が知っているのは、愚かな錬金術師が愚かにも社会の門を開いていることくらいかしら…」


「それをいうなら社会の窓だろ…っておい!!ほんとに開いてるじゃねえか!いつから開いてるの気づいてた!?」


「あなたが富永家を出たあたりかしら」


「早く言えよ!!!!!!!!!」


「だって、新手の露出プレイかと思ったんだもの…付き合ってあげるのがパートナーの役目でしょ?」


なーにが"パートナーの役目"だ…!若干、頬を赤らめてそういうこと言うな!

全く…、こいつめちゃくちゃ楽しんでやがる…。おや?


俺の頭に?マークが浮かんだのは、卵が産まれるからではない。黒子の購入したチケットを確認したからだ。そこに記載されていたのは、当初見たかったタイトルではなく…少女漫画原作の実写化映画のタイトルだった。CMで見た記憶が正しければ、俺のような非リアオタが見たらあまりの青春の眩しさに視力を失ってしまうような内容だったと思う。つまり、見たくない。


「おい、黒子!!なんでこれなんだよ⁉こんなの全く見たくないし、興味もないぞ!!お金は俺が出すから買いなおそうぜ!」


「はぁ…。秀吉君が妹に欲情するようなお兄さんだったって美晴さんに伝えなきゃいけないだなんて。神様は私になんて残酷なことをさせるのかしら…」


黒子、いや、黒子様がこれ見よがしに突き出すスマホの画面に映るのはあの箱を持った俺の姿だった。おそらく俺に話しかける前に写真を撮っていたのだろう。これはもう、どうしようもない。このお方が飽きるまで揺すられることはすでに確定した事実。ならば、俺が取るべき行動は…、


「いやーー、サンキュー黒子ー。実は俺、とーーってもこの映画が見たかったんだよーーー。一人で見るの恥ずかしくてさーーー。いやーーマジ助かったわーー(棒)」


「当然でしょ。私はあなたのパートナーだもの」


ちょっと反論してやろうかと思ったが、笑顔でそんなこと言われたらできないじゃねぇか。こいつはいろんな意味で恐ろしい子だよ、全く。思わず口元が緩んで小さく言葉が出てしまう。


「やっぱずるいよ、おまえ」


「フフッ…女の子は少しずる賢いくらいが可愛いでしょ?」


不意に右手に温もりが…。それは細くしなやかな幼馴染の手。楽しげな様子が手を通して伝わってくる。少し強めに握ってくるその手に俺の体は引かれ、薄暗い映画館内を先導され歩いていく。どうやら売店に向かっているようだ。


「秀吉君は何食べる?醤油バター?醤油バターよね?醤油バターの大きいサイズを二人で食べましょう!」


「あぁ、そうしようか」


さっきまでの悪魔の態度はどこ吹く風。目を輝かせメニューを見るその姿は、デートを楽しむ女子高生の女の子そのものだった。そんな姿を見せられて、さっきまでの恐怖心を感じなくなってしまうチョロイ俺です。まぁ、その、なんだ、休日にこんなに可愛い子と映画を見に行けるなんて男が嬉しくないわけないのだよ、うん。これはね、しょうがないね、うん、しょうがない。


そんな無言で頷く後ろにいる俺の姿にかまいもせず、彼女はポップコーンの注文を始めるのだった。























お久しぶりです。蓮華。です。

最新話の投稿が遅くなってしまい申し訳ないです。自分としては毎日投稿したいくらいなのですが、リアルっておっくうですよね…上手くいかないものです。


そんな愚痴は置いといて、今日からバンバン書きます。連休中の暇つぶしに、休みがない方のつかの間の息抜きに、自分の作品が利用していただけるならこんなに嬉しいことはございません。がんばらせていただきます!


彼を想い続ける今はなき誰かのことを思い出し涙が出てしまった作者はこのあたりで失礼させていただきます。

では、短いながらもここまで読んでくだっさった読者の皆様、ありがとうございました。



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