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EP.11

どうやら本当にキスがタイムスリップの条件ではなかったみたいだ。黒子は俺の手を繋いだ後、時間移動を行なった。何らかの接触は必要だったらしい。ドキドキ…。


違うんだからね!別にこのドキドキは黒子と手を繋いだからドキドキしてるんじゃないんだからね!!


エセツンデレで気を紛らわそうとしても俺の気分は重いまま。ツンデレでオタクを悩殺はできるが非オタを殺すには物理的なツンのみが必要だろう。


『ちょっと待ってて』


そう言って黒子はこめかみを抑えて固まる。きっと古里飛鳥をサーチしてるのだろう、種臣の時にもしてた記憶あるぞ。

黒子がサーチしている間、少しばかり手持ち無沙汰になった俺は辺りを見回してみる。

時間移動を行なった場所は燈の家の前の道路だった。今立っているのも道路。ただ少しだけ違うのは燈の家の前ではなかったことだ。当然俺の家もない。見覚えのある景色と同じ様な同じではない様な…


きっとどこか違う場所にワープしてしまったのだろう。住んでいるのが田舎町でも俺の知らない場所は多い。


『終わったわ、夜まで待ちましょう』


出たー!黒子さんの十八番出たー!何の説明も無しに計画たてて実行する奴!ホウレンソウは高校生でも大事だよ!


でも、黒子だけが頼りなこの状況で俺が反抗する理由はない。


『さあ、私達のデートを始めましょう…』


いつからこいつは聖霊を封印する役割を持ったんだ。。。

白髪の短髪とかキャラ被りまくりだからやめてくれ…これから命を奪おうとしている人間たちのやりとりじゃねえな…


『私の秀吉君への気遣いって国民栄誉賞のレベルだと思うわ』


そんな簡単に得れるほど軽い賞じゃないだろ。俺に気を使っているという旨は理解できたけど感謝半減だ。


でも、ここまでのことを思い返すとこいつに感謝せずにはいられないこともまた事実。黒子の優しさを感じずにはいられないな。


『ありがとな、協力してくれて』


俺の感謝の言葉をアイスを舐めながら首肯するだけで一蹴。今時珍しい駄菓子屋での一コマは味気ないの一言だ。黒子について行くと到着したこの場所で小さい頃にお世話になったお菓子たちに舌鼓をうつこと数時間、日が沈み始めてきた。


またもや渡された厨二病全開の黒ローブといつ購入していたのかわからない鋭利なサバイバルナイフが、無言で時間だということを告げる。


日が完全に沈んだ頃俺たちは、公園に到着。久しぶりに訪れた公園に感じるのは前より綺麗になったという印象。暗闇の中でもわかる遊具たちの新品さを漂わせる色合いが少しの違和感を感じさせた。


『来るわよ』


隣に立つ彼女の一言で空気が変わる。さっきまでのゆったりとした時間とはうってかわって、かんがえないようにしていた死へのカウントダウンは着実に、そして確実に俺の元へと近づいてくる。


ーードクン…ドクン…ドクン…


呼吸が荒くなっていく。そのとき手汗でぐっしょりになっている右手に感触を感じた。黒子が手を握ってくれているのだろう。恐怖で前を見れない俺は静かに考える。


ーーこれは燈のため。いや、俺自身のためなんだ。


下を向いていた俺の前を女性の足が横切っていく。向こうからしたら変人2人が手をつないでいる異様な光景に見えただろう。

逃げる様に早足で、去ろうとする女性の後ろ姿をようやく捉えた俺は手を離し、左手に力を込め華奢な体の背中に鋭利な刃物を突き立てた。


グサッ…

今まで聞いたことのない様な不快な音が夜の公園に静かに響く。



人の身体に刃物を入れた時の感触。静かに溢れ出す血を見て俺はその場で背中から倒れ込んで腰を抜かしてしまう。


『痛っ…な、なに…?』


始めて見た驚きと痛みで歪んだ表情の古里飛鳥の顔を見た瞬間、俺は凍りついた。長く綺麗な黒髪をポニーテールにまとめ、目鼻立の整った美しい容姿、普段の愛想の良さを想起させる顔を歪ませたその表情は俺には確かに見覚えがあった。


『え…あ、あ、燈…⁉︎』


目の前には俺が助けようとした幼馴染が血を流して倒れ込んでいる。


『あなた…誰?、…燈って誰…』


言葉の途中で吐血する少女は俺のことを知らないと言う…あの朝、種臣と共にいた女性の顔とは明らかに違う。


じゃあ誰なんだ…この娘は……


答えを求める様に黒子の方を振り向くと彼女は笑みを浮かべていた。


『おい!黒子!』


『………』


質問に答えずに無言のまま俺の手からナイフを奪うと再びその刃を燈にそっくりな少女へと向ける。


『痛ィ…やめ…て…や…めて…』


『フフッ…フフッ…フフッ…』


涙を流してこれ以上刺さないでと願う少女を無視して少女は行為を続ける。


グサッ…グサッ…グサッ…グサッ…


命を削り取っていく音が刻まれていく中で俺は傍観することしかできなかった。目の前の出来事に圧倒されて止めることもできず、ただ口を開けて見ているだけ。不意に少女と目が合う。


『あがっ…た、助け、て……』


助けを求めてくる少女の顔はどんどん血の気が引いて青ざめていっているようだった。

やつれていく表情を見て、俺の知るある人物に思い当たった。まさか…


『よ、陽子さん…なのか…?』


『せーかーい』


俺の質問に答えたのは黒子。その瞬間に止まっていた頭が再び活動を始めようとする。


『誰が2020年の4月7日にタイムスリップした、なんて言ったのかしら?』


しかし動き始めた頭はすぐにゴールテープを切らされてしまった。一連の事件が“ある1人の機械”のせいだということはすぐに理解した。



『私の目的は"日向燈を殺すことでなく、日向燈を消すこと"だった。』


開いた口が塞がらない…

少女への行為を止め、黒子が少しずつ俺に近づいてくる。俺の目と鼻の先に顔を持ってくると万遍の笑みで一言。



『未来で待ってて、すぐに会えるわ』


そう言うと唇を重ねてくる。俺の視界を光が覆う。

最後まで踊らされ抗うことを許されなかった俺は声も出せず涙を流すことしかできなかった。



少年が光に包まれ姿を消した後、夜の公園には少女2人が残る。


さてと、あの人が待っているんだから早くしなくちゃ。


『日向さーん、気分はいかが?』


『………』


口は微かに動いているから意識はあるみたいだ。


『あなたがどうしてこうなったか教えてあげる』


事の発端は日向燈の存在だった。あの人の隣を飛び回っていた虫のようなあの女が邪魔だった。自分から飛び去るのなら許してあげたのに、虫はあの人と寄り添うことを選んだ。だから消してあげた。最初は殺すだけでもいいかと思ったけど、どうせならあの人の中から消えてもらうことにした。

ゴールが決まればあとはルートを考えるだけ、実に簡単なことだった。


まずは時間移動のテスト、そこで今回のデモンストレーションも行なった。あの人にまとわりつく物でね。親を殺せば子供の存在はなかったことになり消える。実験は成功だった。


その次は、実際に虫を殺す作業。あれはとても気持ち良かった。快楽というものがどういうものなのかを知ることができてとても有意義な時間だった。


その次は、あの人をそそのかしてタイムスリップをする。現在の私が過去にいったことで事前に仕込んでおいたプログラムが過去の私の中で起動した。

日向燈を私が殺すのではなく古里飛鳥に殺させるよう仕向ける行動をするプログラムを。そうすることで事実が変わった。日向燈を殺したのは私ではなく古里飛鳥という事実に変わった。


その次は、彼をそそのかしてこの時間に移動。私にとってとても都合が良かったのは"この町の特徴"だった。彼が異変に気付いてしまえばこの計画は破綻していたのだから。後は日向陽子の行動を予測し、私が殺すだけ。あの人が殺してしまうと事象に介入しすぎて記憶が残ってしまうかもしれないから、こうやって私がとどめを刺す。


『って説明してもわかるはずないか』


『………』


意識は完全になくなってしまったようだ。人の話を最後まで聞かないなんて失礼な女。そういうところ、あなたの娘とそっくりだわ。


『恨むなら、自分の子供を恨むのね』


さてと、

ここからが本番だ。あの人を現在に1人で帰したのは最後の作業を終えるため。未来で待つあの人に再開するため、私は公園を出て動き始める。残された少女の周りには血の水溜まりができていた。


『娘と何もかもそっくりね…ムカついたからたくさん刺しちゃった』


やっと邪魔が全部消えた。これからのあの人との未来を思い浮かべると笑みが溢れてしまう。


ーーあの人の隣に居ていいのは私だけなんだから。






誰が開けたのだろうか、黒いベージュのカーテンから対比のように明るい日光が体を照らす。勉強机の上には昨日の晩にやり残した宿題のノートが乱雑に置かれていた。


どこか幻想的に見えなくもない、いつもの自分の部屋の机の上を見ながら、宿題をやり忘れたことも幻想だったりするのではなかろうかと考えてみたが…現実だった。


その時俺のベッドに女の子が1人。機嫌の悪い俺を気遣ってくれたのだろうか、顔を出していた。昨日、1人でゲーセンに行った時に出会った娘だ。



ちなみに女の子と言ってもぬいぐるみである。


俺はぬいぐるみはベッドの上に置く派の人間だ。ゲーセンで取ったラブ○イブのぬいぐるみが寝起きの主人を出迎えているだけである。


しかし…、そのぬいぐるみの効果は絶大!

全速前進〜ヨ〜ソロ〜!!!

前言撤回、最高の朝である。

朝日もサンシャインやね!

寝ぼけているせいかいろいろ混ざってしまった気がするがまぁいいだろう。




『お兄ちゃーん!朝やぞーー!起きろー!』


ドアをノックする音と共に可愛らしくも芯のある力強く透き通った声が聞こえる。


朝からオタク全開の兄貴をドアの向こうから呼ぶのは妹だ。

ノックもなく部屋に入ってパンツ一丁の兄貴を見て赤面したり、オタク色に染まった兄貴を見て

『昔の兄貴はもっとカッコよかったのに…』

とボソッと声を出す妹ではない。


よくできた妹御だ。ノック大事…すごく大事。

野球と年頃の高校二年生にとってノックはすごく大事だよ。


『お兄ちゃんまだ寝てるのー?入っちゃうよー?』


『起きてるよ、すぐ下行くから。』


『早くしてねー!ご飯冷めちゃうよー!』


答えた後、俺はすぐに制服に着替え始める。


『ダサいよなぁ…』


思わず本音が漏れてしまうほど気に入らない制服の袖に腕を通す。制服はブレザータイプで上下どちらも深緑色。ネクタイには高校の校章がプリントされていて柄物になっているがとにかくダサい。

Yシャツの上にカーディガンを着ることで少しでも見栄えを良くしようと試みたが0が0.5になったくらいだろう。


デザインした人のセンスが爆発している制服は、ある意味生徒に課せられた三年間の呪いのようなもの、でもしょうがない芸術は……爆発だからな!!!



心の中でシャナクを唱えながら呪いの解除を試みつつ、一階に降りてリビングに着くとそこには見知った顔が2つ。


『秀、早く食べなさい。美晴が作ったご飯が冷めちゃうでしょ。』


『お兄ちゃんの制服、いつみてもダサいね!』


『兄貴に対してダサいとはなんだ!まったく……いただきます。』


父がこの世をさって三年も立ってしまうとさすがにこの三人の食卓に違和感は感じなくなる。

シングルマザーとして俺たち2人を育てている母親には頭が上がらない。

妹もただの血の繋がった妹ではない。



この美晴ちゃんは義妹だったりするのだ。

最初はギャルゲ設定でウハウハだと思っていたのだが、三年前美晴の両親がどちらも事故で亡くなった事は重すぎる現実だった。


俺から見たら美晴は父の弟の娘さん、いとこの関係に当たる。


容姿端麗、学業優秀、運動はちょっと苦手という同年代の男子はほっとかないだろう。俺が中学生ならほっとかないだろう!

いや、陰キャラの俺にはには無理だなほっとこう…


スカート丈が短すぎないのが秀吉的にポイント高いわね!!素晴らしい!!合格よ!!


実際、義妹って気を使う存在だから画面の中みたいに幸せな関係を簡単に築けるわけじゃないよ、マジで。恋心なんてもってのほかだし、いろいろ大変だ。



今でこそ仲は良いが以前までは

『秀吉さん』という‘‘さん’’付けだった。


天下統一した人みたいになってるし、ゲージショットの弱点キラーが効きすぎィィィー!


ちなみに俺はパズル派かストライク派かと聞かれたら、ストライク派だ。


パズル派のCMでドロップが全部ハートになるやつ!!

あれは非リアの怒りを買ったね!!


あれを見た後、美晴が赤面してもじもじしながら協力プレイを申し込んできたのだが…


マシンア○ナはソロでもできるぞといったらめちゃくちゃ怒ってたな…空気読めとか言ってたし… よくわからん。。



そんなことを考えながらも手作りの目玉焼きの箸は進む。


『料理もできるなんてうちの妹はいい娘じゃのぉ。』


『もぅ…急に褒めないでよ』


顔は俯いていて見えないが照れているのだろうか?可愛いからやめて!勘違いしちゃうから!惚れたらどうするの!あぶないあぶない。。。


ちょっとした仕草にドキドキしちゃうのは陰キャラの性質かしら?

違うよね!

男の子だからだよね!

陰キャラの性質はちょっと手汗をかきやすいことだよね!俺だけか…。。。


そんな男心を斬り捨てるかのように箱の中のアナウンサーは黙々とお喋り中。富永家の朝のBGMを担当されているとも知らないこの人が不憫でならないぜ…。


『二人とも遅刻しないようにね、私は先に行くから』


『『いってらっしゃーい』』


母が先に家を出てから数分後、美晴も先に中学校に行ってしまった。彼女は今年から中学三年生、受験生にあたる。昨日も夜、勉強してたっけ…優秀すぎる妹御…



それに対して俺はまだ一人でテレビを見ていた。


内容は都会の人たちに最近の出来事について質問するという企画。田舎町に住んでいる人間は都会に憧れてしまうのは道理だ。


この田舎町のキャッチコピーが

“50年変わらない街並み”であることをTVで質問に答えているチャラチャラした人が聞いたら、爆笑するよね絶対。


それに昔、女子高生が刃物で殺される物騒な事件も起きている。犯人が未だ捕まっていないとか怖すぎるだろ…。


特産品は焼きそばのソースとかまんじゅうだっか、地元の人間が知らないグルメは何級になるの?スーパーフライ級?

あふれる気持ちを表すために愛を込めて花束でも送るか!


この町のことに想いを馳せていても時間はしっかり流れている。


現在の時刻は午前八時

遅刻ギリギリの時間になっているのに気づくと俺はやりかけの宿題を入れたバックを持ち急いで家を出る。


すると、


家の前には少女が一人。


我が家の隣に住む女の子が一人。


幼馴染の女の子が一人。


どこか気品を纏わせ艶やかな白銀の短髪。青い瞳をこちらに向けると笑顔を見せてくる。


俺の目の前には、容姿と対を成す名前を持つ幼馴染の‘‘春日黒子”が立っていた。


『ずっと待ってたのよ、秀吉君』







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