なみ
水面に浮かんだ自分の姿。
じっと見つめていたら
じわじわ怒りと、悲しみが浮かんできて
思いきり手をふりあげて水を叩いた。
胸の高さまである水を叩いてはみたけど、そこまでスッキリしなくて
やっぱりもやもやした。
暑さの残る十五時。
死んでしまおうかと凪いだ海に入ってみて気づいたことは
私は死ぬことなどできない。
ということ。
そんな、大それたことを自分の意思で私ができるはずもなかった。
私は臆病なだけの普通の人。
誰からも特別な感情をもたれない普通の、人。
それでも、生まれてしまったのだから私は生きなくてはいけない。
いい人に、ならなくてはいけないのだ。
水の中に入り、自由な動きができないことを感じると
ひたすらに安心した。
突然、水は動き出した。
よせては、ひいて
ひいてはよせて
動く水は光に当てられキラキラ輝いた。
黒い私を拒むかのように、キラキラ輝いた。
とても眩しくて、私は海を出た。
ビショビショにぬれた服や髪の毛はとても重くて
まるで心の重さを、表現しているようだった
秋も近づいてきたせいか、
夕暮れは涼しい風が吹く。
砂浜に座り波を見つめた。
同じことを繰り返しても飽きないのですか。
波打つことに、意味などあるのですか。
思いを綺麗に流すことはできますか。
感情などない海に問うた。
返事はない。
私は生きていていいのですか。
ザザァン
静かに海が動く
やはり、返事はない。
よいしょと立ち上がり、
海に背中を向けて歩き出す。
繰り返す波の動きをみて
明日を生きる力をもらった。
また、窮屈な日々を生きなくては。
なんてことはない。
だって、多くの人がやっていることだもの。
普通の私ができないわけはない。
さぁ、生きよう。