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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
8/55

第1の試練-閑話-

【勘違いされた方の為の前書き】

前回の話のことですが、別に主人公(鏡)をピンチにさせて登場人物(大雅)に助けさせる。そこから2人の恋が始まる的なストーリーは一切考えていません。

友人にBL路線か?と言われましたが、そんな路線無いので気にしないでください。

南雲晴輝は目の前で繰り広げられる戦いに息を飲みこんだ。


自分とそこまで離れていないであろう年の二人が殺しあいをしているのだ。


1人はこの世界に来て初めて知り合った一之瀬鏡。

1人はこの世界に来て初めて人を殺した立崎狂魔。


狂魔は両手にイメージのダガーを作り出して投擲する。鏡はそれをイメージのバットで弾いたり打ち返したりしている。


そこに晴輝の入り込める隙なんて無かった。鏡というこの世界で初めて出来た友達を助けたかった。でもそれは邪魔になるだけだ。こんな狭い通路ではバットを振り回している鏡の足を引っ張るだけなのだ。


目の前で鏡は傷つきながらも必死にバットでダガーを弾いている。後ろにいる晴輝に一本も通さずにだ。人間離れの身体能力で振り回しているバットは、たまに手から離れ空中で手元に戻ってこないブーメランの様に回転しながらダガーを弾いていく。


再びイメージでバットを作り握りしめて振り回す。そんな攻防が続くこと数回。鏡の右手の甲にダガーが深々と突き刺さり、握っていたバットが形を失ったのだ。


それでも狂魔の攻撃は止まなかった。連続で投擲されるダガーはやがて壁となり、通路を埋め尽くす。


晴輝は動かなくなった鏡に向かって駆け出そうとした。そんな晴輝の背後から、何の前触れもなく銀色の光が走り抜けていったのだ。


「なっ!?」


急な出来事に身構え、鏡を助けようと動かそうとした足が止まる。その一瞬の硬直の内に鏡にダガーが突き刺さる。


そんな未来の光景を脳内に思い浮かべて絶望したような表情で鏡に視線を向ける。


そこには、刺さるはずだったダガーを全て弾く存在がいた。


それは銀色に輝く毛並みを持つ狼。だがその狼は二足で立ち、拳を握りしめていた。いわゆる狼男と呼ばれるであろう存在だ。狼男は投擲されたダガーをその俊敏な動きをもって悉く弾いていく。


晴輝は混乱した。目の前の狼男はいったい何者なのか。鏡を助けていることから敵ではないと思いたいがその人物に覚えがなかった。もしかしたら鏡の生前の知り合いかもしれないが、もし違った場合はどういった対応をすれば良いのか、狼男はどんな風に行動するのかが不明だった。


そんな晴輝に声がかけられた。


「大丈夫」


たった一言。


晴輝は振り返る。そこには紅の髪を持つ女性がいた。


「あなたは?」

「凛」


凛と一言で名乗った女性がゆっくりとしていながら、流れるように晴輝の横まで歩いてきた。


「あれは、何なんですか?」

「獣化」


またも一言。


「獣化ということは人間、何ですね」


凛はコクりと頷いた。


目の前で繰り広げられる光景。ダガーを拳で弾くスピードに同じ人間である自分もここまでのことが出来るのかと自問する。


きっと何時かは出来るようになるかもしれない。それが数日なのか数ヶ月なのか数年なのかは分からないが。


狂魔はダガーの投擲を止める。それと同時に狼男の顔の部分から胴体にかけて獣だった箇所が人に戻っていった。


それから一言二言狼男とお喋りをすると、再びダガーを投擲した。


狂魔の投擲したダガーを、狼男が右手をパーに開いた状態で、目に見えない速度をもって爪を振るう。


一瞬の内に弾かれるダガーを眺めながら、この狼男には当たらないと感じ取ったのか、ダガーをイメージすることを止めた。

それから狂魔は一言二言狼男と鏡を交えて喋る。

聞きたいことが話し終わったのか、満足そうな顔で入り口に向けて移動を開始したのだった。


そして晴輝の横を通りすぎる瞬間。狂魔は呟いた。


「お前とは戦っても面白くなさそうだ」


狂魔の言葉が耳にベッタリと張り付いて離れない。


それはまるで呪いのようである。考えないようにしても頭の中で繰返し呟かれるのだから。


「お前に目の前の友達は助けられない」


違う形になって晴輝を苦しめる。


「僕も強くならなきゃ」


そう呟いた晴輝は何を思い出したのか。歯を強く噛み締めて誓うのだった。


-城前-


狂魔がいなくなってからの暗闇の通路は、その後何事もなく進むことができた。


暗かった通路から光溢れる外の世界に出たときは眩しくて目が焼かれたのかと思った程である。そんな出来事も合ったが、無事に目的地である城の目の前まで到着したのであった。


通路を抜けきれたのは凡そ100人。精霊とゴーレムで左右に別れていたが鏡よりも先にゴーレムが辿り着いていたことからどっちに進んでいても最終的にここまで辿り着けるようになっていたようだ。


様々な所から聞こえてくる声の中には「落とし穴が起動したときは死ぬかと思ったぜ」とか「鉄球が転がってきたときはダメかと思ったぜ」等という鏡が体験しなかった数々の罠の話題で盛り上がっていた。


そして、鏡が通路で出会った2人組。1人は銀髪にやたらと筋肉の付きが良く。それでいて体が細い大神大雅。もう1人は紅の髪に人形と間違ってしまいそうな美しい顔立ちの高嶺凛。2人の身長は大雅が低く、凛さんが高かった。それでも150の鏡よりは大雅の方が高いのだが。


そして気になるのが、2人が親密な関係だということだ。大雅に至っては、狂魔が言っていたように顔だけを見ていると30代位のおじさん、おっさんに見えるのだ。それに対して、凛さんは10代も終わる頃、大体大学生位のおねえさんといった見た目なのだ。


気になる。色んな意味で気になる。


「2人のことどう思う?」


そんなことを気にしていたらいつの間にかに晴輝が横に来ていた。


「どう思うって何のこと?」


とりあえずとぼけてみた。


「大雅さんと高嶺さんのことに決まってるだろ」


だよね。それしかないよね。やっぱり気になるよな。

鏡は少しだけ考える素振りをする。


「お似合いのカップルだよね」


そして口から出てきた言葉。それを満面の笑みで思ってもないことを言う。


「そうかな?」


うーん?と唸る晴輝。


(人様の恋愛に興味を持つのは感心しないぞ晴吉くん)


等と自分の事を棚に上げてそんな事を思っていた。


「でもやっぱり気になる」

「何がそんなに気になるんだ?」


再び気になると発言をした晴輝。それに取り敢えず首を傾げる鏡。


「うーん、何となく犯罪の気がするんだよ」

「それを言っちゃうと年の差結婚を認めないような言い方だよな」


「いや、違うんだ!決してそんな事を思って言ったんじゃ」


と慌てたように手を振る晴輝。


(気にするだけ無駄だと思うけどそんなことは言わないよ。だって、人には人の恋愛の仕方があるのだから。それが分からない晴輝には身をもって知る必要があるのだから)


等とニヤニヤしながら良い話し風に終わらせようとするが、自分の事は完全に棚に上げている鏡なのであった。


-数時間後-


「そろそろ行くぞ」


力強さを感じられなくなった声音で炎の精霊は立ち上がる。

通路から最後に出てきた4人以降誰一人としてここから出てきていない。元々大勢で挑んだにも関わらず、既にその数は1/3にまで減っている。


試練続行不可能だと判断する減りようである。だが炎の精霊は立ち止まれなかった。既にそれだけの犠牲を出しているにも関わらずにだ。

後ろに振り返ることが出来なかった。死んでしまった者達のためにもここで尻尾を巻いて退散することが出来なかった。


絶対に失敗は許されない。


例え俺が死ぬことになったとしても。


炎の精霊は城の内部に足を踏み入れ進んでいった。


-鏡サイド-


「どうやら進むようだね、鏡は大丈夫なのか?」

「んー、ゆっくり休めたし、腕の痛みも引いてきた。万全とは言えないけど大丈夫だろ」


背伸びしながら答える。チラリと隣を見ると通路にいたときに青ざめていた顔から一般的な肌色に戻っている。


「晴輝も大丈夫そうだな」

「それはもう完全復活!!」


ピースしながら高らかに宣言した。


元気そうで何よりと思ってしまった。


「よぉ、お前らこれからどうするんだ?」


声をかけてきたのは細マッチョおじさんの大雅さん。


「今失礼なことを想像しなかったか?」

何て言われて冷や汗が流れる。何故バレたし。


「それはそうとお前ら俺達と一緒に来ないか?」


その誘いに大雅の右斜め後ろに視線を向ける。

そこには、メイドのように付き従う凛さんが立っていた。


「あぁ、気にするな。少しだけ無口なところがあるけど基本的に良い奴だよ」


鏡の視線を読み取ったのかそんな事を言ってきた。


(少しだけ?最低限のことしか話さないの間違いでは?)


心の中で叫んでしまった。まずは落ち着こう。


「で、晴吉はどうすんよ?俺は良いと思うけど」

「は、晴吉?まぁ、僕もそれで良いよ」


鏡の問いかけによって、大雅と一緒に行くのを良いよと言ったのか、晴吉と呼んで良いよなのかが判断に悩む。

まぁ、嫌だと言われないから大丈夫だろう。そう思うことにした。


「話しは決まったな、なら俺達も進もうか」


こうして自分より強者である大雅に付いていくことになった。

主人公=俺TUEEEが異世界なろう作品の特徴なのだが...。今のところオッサンTUEEEな作品ですな。


まぁ、冗談はさておき、15の頃の作者は自分より2倍長く生きている30代はオッサンだと思ってました。

30代の方本当にすみません。すんげぇ若くて学生よりも元気でした。そう言えば小学生の頃は高校生にオッサン言ってたな(遠目)

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