051
町が近付くにつれて、音も次第に大きくなって きた。
空気は震え、地面は微かに揺れている。
ここから町までの距離を今までの移動速度で計算すると明日には到着する予定だろう。
そう到着が明日なのだ、飲まず食わず休まず眠らずでの移動が可能な僕らで明日なのだ。
「遠いな」
「そうなのか?」
「あぁ、 僕にはこの距離は凄く遠いよ」
肉体的に疲れた訳ではない、鏡が抱くのは単純に歩くことに飽きてきたのだ。
変わらない景色、触れただけで壊れてしまう魔獣、風に乗って響いてくる町の音。流石に見飽きてきたのだ。
「つまんないな」
「見た感じ進んでるのかも分かんないもんな」
ポツリと呟いた言葉を、変わらない景色を見渡した晴輝が肯定してくれた。
「つまんないな」
再び呟いた言葉は誰にも届かなかった。
-赤い集団-
ざわざわざわざわ「今回の召集どう思うよ」ざわざわざわざわ「何が?」ざわざわざわざわ「1人を殺すのにこんな人数必要ないと思うんだ」ざわざわざわざわ「1000をちょっと超えてる位か?」ざわざわざわざわ「おまっ.....余裕で3000超えてるぞ」ざわざわざわざわ「うっそーん、そんないるん?」ざわざわざわざわ
彼ら3000人以上の人が集まっていたのは、現在鏡達が向かっている最中の町であった。
そこに集まる人の特徴と言えば、全員が共通して赤色に近い髪の色をしていた。
これは人によって違うが、額、頬、胸、手の甲、背中の何処かに、赤いイノシシの焼き印を押されていた。
他にもイヤリング、指輪、首飾り、ブレスレットなどにもイノシシのエンブレムを描かれていて、その装備品からは何かしらの特殊な能力が気付かれないように微弱ながらも付与されていた。
その付加されている能力のほとんどが「裏切り者の粛清」と言う名前の能力だ。
効果としては、完全な裏切り行為だとアイテムに認められた瞬間にアイテムが所持者を殺してしまうのだ。
でもこの能力は、まだ一度も発動したことがないのだ。
それは、ボスの下に付いていれば、嫌な思いよりも良い思いをするほうが多いのが裏切り者が出ない理由だったりもする。
力が全てのこの世界においては、いや、現実の世界でもそうだが、個の力より数の力が圧倒的なのだ。
「なぁ、今回の獲物を殺したら幹部にまで上れるかな?」
「さあな~参加するチームの数だけ難易度は上がるけど、今回の獲物は、俺達レッド・ボアだけで狩るんだろ?」
「それが違うんだよ。俺見たんだ、ブルー・シャークのクールな無口とグリーン・バードの姫様を」
「あの美人なロリ姫と鮫野郎が?だから俺らの隊長は今いないのか。ってことは今回の敵は隊長クラスの化物ってことか?」
「なぁ、その話しは本当か!!」
ブルー・シャークという言葉だけを嫌な顔をしながら喋る青年は三國 蓮。
次にでたグリーン・バードの姫様という言葉にロリと言う単語を強調させる青年は星園 流星。
そして、その会話に興味を持ったのか近付いてくる青年は赤崎 勇斗。
「私はあの姫様の処女を散らしたい」
「おいおい勇斗よ冗談でもそのような事を言うなよ。もし姫様のファンクラブが聞いていたら確実に消されるぞ」
「そうだぞ勇斗!!ロリは愛でる者であって、性欲を向ける対称じゃ無いんだぞ!!そして、よく聞けよ勇斗!!俺様の紳士的幼女の愛で方作法を..........」
「流星も少しは落ち着こうな」
勇斗の発言に冷や汗を流しながら宥めていた蓮は、流星の悪い癖である「ロリコンが語るロリコンの為の幼女様にたいする敬意と紳士的な愛で方講座」を語り始めないように、落ち着かせることを第1に動き出した。
今から紳士的な作法を語ろうとするその口を閉ざされた流星は不満そうな表情をするが、また後で勇斗だけに語れば良いかと取り敢えずは妥協してくれた。
「話しは戻るが良いか?」
2人が頷くことで同意を示すと、蓮は口を開いた。
「それでだ、今回の1人の少年に対して、3人の隊長とそのチームに属するメンバーでの合同任務での討伐のことについて何だが、目標となる影使いに隊長を3人もぶつけるんだ相当の手練れだろう」
青年は間を置いて再び話し始めた。
「もしそれを俺達3人が協力して倒せれば、一番攻撃に貢献したのを隊長にして、残り2人は副隊長に置くこともあのボスの考えたチーム構成なら可能だろう」
ここで、このチームの簡単な説明をしよう。
ノトの命令でボスが作ったこのチームは、ノトの能力によって、戦闘に特化されたボスが名のある能力者と戦うことで、その圧倒的な力を見せ付けて、その後にスカウトして作られたのだ。
ボスと敵対しても絶対に勝てないのなら、仲間の関係でいようと思ったのが、現在では5人も存在する隊長の中の3人が決めたことであった。
初期メンバーである「ブルー・シャーク」「グリーン・バード」「ホワイト・ウルフ」の3人だった。
更にその隊長達の強さに引かれた者達が自からの意思で、ボスの傘下に付くことを決めて集まって出来たのが現在の人数の多さになるに至ったのだ。
そして、人数が増えれば勿論のことだが、指揮命令系統が機能しなくなるのだ。
そこで、ノトがボスを通じて、優秀な能力者や戦績の高い能力者に隊長の席を作ることにしたのだ。
そして、新しい隊長として「レッド・ボア」と「ブラック・ホース」が選ばれたのだ。
隊長となる者には、ノトがその者の戦い方や能力を見て、これから名乗らせる隊長としての名前と言うなの称号を与えるのだ。その称号が部隊名にもなっているのは、3人の隊長がチームを区別しやすいだろうと考えて名乗り始めたからである。
そして、隊長にもなれば色々なことで自由に動けると言うものだ。
「ホワイト・ウルフ」内の男性メンバーがたまにする噂話で例えるのなら、隊長は女性メンバーの全員を一度は抱いているというのだ。
本当か嘘かも分からない話だが、隊長という者は、自分の部下にならどんなに酷い命令であってもできるのだ。
そんな隊長の命令を断る者などいるはずが無いのだ。断ったらどんな酷い扱いを受けるのかが分からない以上従順なペットのように隊長に尽くすしか生き残る道がないのだから。
そんな噂話が出回っているからこそ、この青年達のように隊長の性生活に憧れて、召集される度に戦績を競うように稼ぎだすのだ。その噂話が故意に流されているとは知らずに.......。




