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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
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048

少女の妄想を垣間見たノトは、何事も無かったかのようにボスと女とスキンヘッドに道端に倒れていた少年少女の回収を命令した。


顔を両手で覆う少女に視線を向けると「言っちゃった、勢いに任せて告白しちゃったぁ。しかも私の夢が叶ったぁ」とか嬉しそうに悶えながら呟くもんだから呆れて何も言えなくなる。


「とりあえず終わらせるか」


悶える少女に手を伸ばす。後少しで触れる距離になると、少女はノトから後退した。


「どうしたんだ?」

「何となくですよ」


-10分後-

その後もノトはスキあれば、少女の頭を狙っていた。

それは別に責任を取りたくないからという理由ではない。単純に言えばノトの経験から来るものだ。

絶対的な忠誠を抱く人形とは違って、いざと言うときに裏切る可能性が高いと言うのが人間ってものだ。


そんなやつを近くに置いておくよりも、記憶を操作して、絶対に裏切らない人形にした方が色々と安心できるからだ。


「くっ、何でだ?何で当たらない!」

「ノトさんの攻撃速度が私の移動速度よりも遅いからですよ」

「何で避けるんだよ!」

「ノトさんに頭を触られると、記憶を失うのはあのおじさんを見たら分かることですし、失敗で終わったからこそ、私の頭から手を放した瞬間にフィルムが消えたのを一度見たので、できるだけ触らせないように避けるだけですよ」


どこからどう見ても戦闘向きではないノトの能力では、戦闘能力を保有する少女には、早川(はやかわ) 琴梨(ことり)には、全く手が届かなかった。


ここは言葉で誘導すれば良いのか?確か琴梨の脳内での俺は、優しいおにいさんだったか?それとも、傷付いた少女を慰める王子だったか?

琴梨は俺に何を求めてるんだよ!!と思い出して呆れてしまう。


「そんなに逃げていたら抱擁は勿論、頭を撫でることも出来ないじゃないか」

「はぅっ、ノトさんとの愛を選ぶのか記憶を選ぶのか。ノトさんは私に超難しい選択を迫りますね」

「そんなに難しいことか?」


琴梨はどっちの選択をしたら幸せになれるのかを「あぁー」とか「うぅー」とか唸りながら必死に頭を回した結果、答えをだした。


「胸なら....胸なら撫でて良いですよ」


まさかの選択肢外の発想に辿り着いた琴梨に「こいつ頭大丈夫か?」と目の前に立つ存在の頭に対して、哀れみの視線を向ける。


だが、同時にこれは1つのチャンスでもあった。胸を撫でることを許可したのだ、なら触るふりして一気に頭を掴めば逃げられないのではないか?と。


この作戦では、反応速度がノトよりも高い琴梨に、どのタイミングで仕掛けるかによって全てが決まる。


琴梨の胸に手が触れるか触れないかの距離から、一瞬で頭まで持ち上げる。

これは挑戦が1度きりの絶対に失敗が許されない最難関クエストだ。


ノトは勇気を奮い立たせて、覚悟を決めた。


「今から.....触るぞ」

「ん....」


ゴクリと唾を飲み込んだノトに対して、琴梨は目を瞑った。

その表情は、好きになった男に「私の体を好きにして良いよ」と声に出していないはずなのにそう耳に.....心に聞こえてくるようだった。


ノトは琴梨の表情を見てニヤリと笑みを浮かべた。


今なら成功率が格段に上がったな。だけど俺には失敗は許されない。慎重にいかせてもらうぞ。


ゆっくりと琴梨の胸に伸びていくノトの手は、失敗は絶対に許されない。そういう緊張感からか震えていた。


ゆっくり近付くは亀のごとし、素早く跳び跳ねるはうさぎのゴトク。ノトは手を胸から上にずらして、頭に狙いを付けた。


うぉぉぉぉぉぉー!!!届け!!!

速度を増した右手が琴梨の記憶を忘却するために近付いていく。


未だに目を瞑っていることに勝利を見出だしたその時だった。


「ふっ」という音と「ヒュン」という音が重なって聞こえてきたかと思えば、頭に伸ばした右手は下から上げられた手刀によって弾かれた。


「いーってぇー、何で頭に伸ばしたことに気付いたんだよ?」

「風の音を聞いたからですよ」

「お前はどこの世界の住人だよ」


呆れ果てたノトは、溜まりに溜まった溜息を体の外に吐き出すのであった。

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