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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
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046

笑い疲れたノトはボスと女に指示を出して、2人が屋上に上ったのを確認してからまた歩きだした。


「あの女には何をさせようかな?今の記憶なら秘書もできるだろうけど護衛でも良いのかな?メイドだと少しイメージと違うんだよな」


ノトは新しい獲物が食い付いてくるか、その辺の獲物を見付けるまで暇なので、新しい人形である女の有効活用を考えていた。


その時だった「キャーッ」と遠くから若い女性のような叫び声が聞こえてきたのだ。


「やっぱ予定の後2人を捕まえてから決めても遅くは無いよな」


ノトは考えることを止めて、声のした方に向かった。


薄暗い路地の更に奥に進んで行くと、路上の片隅に色々な物が落ちていた。

その落ちている物の全てが、今では光を失っていた。


「ここに落ちているものを全て拾えば、凄い数になりそうだな。後で回収するかな」


ノトはニヤリとした笑みを片隅に倒れている服の乱れていて、大事な部分が丸見えの少年少女に向けながら先に進んだ。


曲がり角は幾つか曲がった先に目的の人物を見つけて、建物の影に隠れて様子を見る。


激しくぶつかり合う男と女の男の方を見て言葉を失った 。


筋肉が程よく引き締まったその肉体は、長年鍛えられてきた立派な物だと分かる。でも問題はそこではなかった。


どうしよう。スキンヘッドじゃあの男の能力が何なのか俺には全く分からんぞ。


そう、目の前の男の頭頂部はツルッとしていて、髪の毛が1本もはえてないのだ。

光を当てたら反射するのではないか?と思わずにはいられない。


「あーどうしよう」


迷った結果建物の屋根にいるボスと女に視線を向ける。

ノトに視線を向けられたことによって、2人は屋根から飛び降りてきた。


「なぁ、あの男の能力はなんだと思う?」

「判断できません」

「そうか、流石に分からないよな」

「お力に慣れなくて申し訳なく思います」


今から切腹しようと小刀を創り出したボスとショボーンと俯く女。2人を励まして、その感情を元に戻した。

帰ったら2人の設定を変更するか。と新しく予定に組み込むノトであった。


「迷っていても仕方がないか。ボス、今から俺が囮になるから向かってきた所を押さえてくれ。女は何かあったときにボスのサポートを頼む」

「かしこまりました」


ノトは2人に簡単な指示を言い渡すと、建物の影から出て激しい運動をしている男の元に近すぎない位置で立ち止まる。


「その位で止めてはどうですか?」

「あぁん?誰だよお前。さてはお前もこの女とヤリたいんだろ?」

「んな訳あるか、クズが」


ノトは吐き捨てると男を蔑むような目を向けた。

男はノトの目を見て慌てて女から離れて、ズボンを履いた。


「へへっ、俺様がスキだらけの内に攻撃しとけば当たったものを」

「お前は、バカか?俺はお前見たいなクズに不意討ちするようなクズじゃないんだよ。逆に待ってたんだから感謝しろよ」

「けっ、その減らず口が何時まで言えるかな」


短気な性格だな。だが予定通りだそのまま進んでこい。

男が余裕の表情を浮かべるノトに対して更に怒りだした。その表情のまま数歩進んだときにそれは起きた。だがノトにとっては、予想していた現象だったので、それほど驚きは無かった。


短気な男の足を止めたのは、空から降ってきた隕石に体を地面に叩き付けられた事によるものだ。

勿論、隕石だと錯覚した物体は、ボスの人間の目には見えないスピードでの落下とその強靭な肉体による物理攻撃だ。


「さて、早く終わらせますかね」


ボスによって、左肩から左足が胴体から裂かれた男は、自分に何が起こったのかを理解していないのかポカーンとした表情をしている。


普通なら即死だろう。しかし、この世界では魂さえ壊れなければ絶対に死ぬことはない地獄の世界だ。


今更ながらに自分に起こったことを理解した男は叫び声を上げた。

それは、痛いから叫んだというのもあるだろう。

しかし、目の前の男は痛みよりも目の前にしゃがんだノトがこれからいったい何をするのかが分からない。


この声を聞いているであろう誰かに助けを求めて、叫び声を上げたのだろう。

それももう手遅れになってしまった。


「メモリー・リロード」


ノトは目の前で叫ぶ男のこれまでの記憶を見て、男に向ける目が蔑みからまた一段下がった。

その目を向けられた男は声を出すことが出来なかった。いや、息すら出来なくなっていただろう。


自分の頭から飛び出しているフィルムが、この世界に来たときにチームリーダーに教わったルールから現実の世界では絶対に実現出来ないであろう暴力と強姦の数々。


目の前の男が自分に向ける目が既に人を見る目ではなくなっていた。男は自分の頭から飛び出した記憶を見て今までの事を後悔していた。

今の今まで暴力を受ける対象になりたく無いと恐怖で他人に流されるまま流されたその結果がこれか。


「これが人の道を外れてしまった俺への罰か......」と今までの行いをフィルム越しに見て、昔を懐かしむように思い出した男は全てを諦めたように呟き罰を受け入れたように目を瞑った。


「オール・メモリー・ブレイク」


男がこの世界に来てからの全ての記憶を不快に思ったノトはこの世界での記憶を全て消し去った。

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