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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
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「なあ、ボスはどんな人材を集めれば良いと思う?」

「その者達にどのような命令を下すおつもりですか?」

「そうだな、それで考えないとだな」


ノトは顎に手を当てて考える。今の自分に足りない物が何なのか?思い浮かぶのがたくさんありすぎて、浮かんできてはこれは自分でやればいいじゃないかと消えていく。


身の回りの護衛とかお世話をしてくれる執事とかメイドも良いかも。

予定管理は流石に手伝ってくれる人がいれば頭を酷使する必要が無くなって楽になるだろうからありだな。

後は効率を上げる為にボスと似たような地域派遣の戦士を増やすのも良いだろう。


「とりあえずは、護衛を1人と秘書を1人とボスとは別の地域に派遣する戦士を1人の計3人ってところかな」


「そうですか。護衛なら身体能力が高ければ男でも女でもどちらでも良いと思われます。秘書ならノト様の品位を落とさないように頭の回転が早く、顔も美しい女性がよろしいかと思われます。新たな戦士を所望するのであれば目の前にいるような強い男で良いと思います」

「そういう物なのか?」

「そういう物でございます」


ボスが思ったことを素直に話していきましたが、最後の言葉には「自分みたいな強く、役に立つ男がいるので新しい戦士など必要ありません」って聞こえたのは気のせいか?

まーいっか今は人材を集めることが何よりも優先度が高いからな。


「ボスは離れたところからついてきてくれ」

「かしこまりました」

「俺に何かあったときは頼むぜ」


ボスはその場で軽くジャンプすると天井の低い建物の屋根に飛び乗り、更にジャンプすると空を見上げないと見えないような位置に降り立った。


「さて、歩きますか」


ノトは道を歩きだした。ボスはノトの周辺を気にしながら屋根から屋根へと飛び移ながら移動を続けていく。


そしてノトが歩くこと数分


「ねぇねぇそこのお兄さん。私と楽しいことして遊びませんか?」


ノトが声のする方に振り向くとそこには、短めに切り揃えた茶色い髪。何かを期待しているのか上目使いで誘ってくるその低い姿勢では、ノトに2つの双胸をチラチラと見え隠れさせている。

普通の男ならイチコロだっただろう。

しかし、生前の記憶が残る人間不振のノトにとってはそんな手では引っ掛からないのである。


「俺が求めているのはお前見たいな下品な女ではない。清潔感のある心の美しく俺の為に尽くしてくれる女性だ」

「ちょっと何よそれ!もう信じらんない!」


目の前の女が体を起こした。予想に反してノトよりも身長の高いその女性は170位だろうか?そんなことを脳裏に考えている間にその考えは覆された。


「茶髪の能力を少しは予想して対策を考えとけば良かったか」

「バーカバーーカバーーーッカ!!!あんたはこれから私のためにヒィヒィ歌ってクネクネと踊ってくれれば良いのよ」


気づいた時には既に遅く、ノトの足下が泥沼となっていて、動かそうとすればするほど深く沈んでいく。


「底無し沼か?これは厄介だな」


ノトは底無し沼に足を捕らわれていたが、まだまだ余裕の表情を浮かべていた。

女性はそんな表情を気に食わなかったのか右手を横に伸ばすとそこから鞭を創り出した。


「私を楽しませて下さ.......... 」


目の前の女は最後まで言い切らないうちに、横から飛んできた砲弾によって飛ばされた。

正確に言えばそれは砲弾ではなく人間の反応速度を遥かに超えた速度で接近したボスの一撃だ。


「ノト様、大丈夫ですか?」


ノトは差し出されたボスの手を掴み泥沼から這い上がった。


「さてと、嫌だけどこの女の記憶を操作するか」


ノトはピクピクと痙攣を繰り返す女に近付く。

今から何をされるのか分からない女にとっては、1歩1歩近付いてくる恐怖に少しでもこの男から離れなければと思い地面をズルズルと這いずって逃げようとする。


傷だらけの震える体は地面を這いずるごとに小さな石で皮膚が裂ける。弱りきった肉体ではろくに移動も出来ないでいた。

ノトは逃げようとする女の目の前に回りしゃがむと、女の頭に右手をのせた。


「メモリー・リロード」


女の頭からフィルムが外に飛び出してきた。

ノトはそのフィルムを慣れた手付きで動かしていく。その光景は作業のようだった。


「メモリー・ブレイク」


女の目には頭の中から次々に消えていく楽しかった記憶や嬉しかった記憶。生前の物には、家族に認めて貰えなくって、家を飛び出した時に、寝る場所を提供するどころか愚痴まで聞いてくれた。そんな誰も認めてくれない自分を唯一認めてくれた優しい人との幸せな時間。


女は涙を流すごとにノトに必要が無いと見なされた記憶を失っていった。


「良かったなクソ女、少年少女との楽しい狂った歌や踊りと幸せな人との時間と一緒に目の前の恐怖の記憶を忘れられるんだからな」


涙を流す女を前にノトは狂ったように笑いだした。

この世界で長く暮らし続ける人は今のノト見たいにいつか何かの拍子に狂いだすだろう。


それは、自分の能力に自惚れた人や自分は特別何じゃないか?とか日々背負い続けるストレスによって壊れたように狂う人がいる。


だがノトは違った。生前に親友と恋人から絶望を味わったノトは、死ぬ前には既に狂っていたのだから。


「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッイーヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒーーーッア、下らねぇ」


ノトは自分専用の人形に成り変わった目の前の女に最後に吐き捨てるように呟いた。

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