039
目が覚めると誰かが僕の顔をのぞきこんでいた。
ボーとする頭で今までのことを思い出そうとするけど辛いような悲しいような....そして嬉しかったようなそんな漠然としていて、忙しいそんな夢を見ていた気がする。
「鏡、大丈夫か?」
「晴…輝?ここは?」
「覚えてないのか?」
晴輝が心配そうな顔から困ったような顔をする。なんでそんなに困ったような顔をするのかは鏡には分からなかった。
「ここは第2の試練跡地だ」
横から声をかけたのは大雅だ。大雅はどこか怒っているのか声に怒気のようなものが混じっている。
いや、怒気だけではない。よくみるとその目には得たいの知れない何かを見るような目をしている。
「どうしてそんな目を僕に向けるの?」
僕はどうしてそんな事を言ったんだろう?
僕には分からない。
「すまないそんな気で見ていた訳じゃないんだ」
「鏡....大雅を許して、光太郎が死んだことで滅入ってるだけだから.......」
「そうですね、でも僕は大雅さんのことで怒ってませんので安心してください」
「そうして貰えると嬉しい」
大雅さんのことで怒っていないと僕の表情を見て分かったのか凛さんの顔が一瞬微笑んだように見えたが場の空気をよんでか直ぐに無表情に戻る。
泣き声に混じる叫び声と何かを殴るような低い音が聞こえて、周りを見渡すとフィロスが俯いて地面を何度も何度も拳を打ち付けていた。
「俺がぁ.......俺がぁぁぁぁっ弱かったせいで!!....光太郎がぁぁぁ.......」
フィロスは己の弱さを嘆き地面を拳で何回も何回も叩き付ける毎に皮膚は破れ、骨は砕け、壊れる毎に少量の灰が漏れだすなかフィロスの拳は再生を繰り返す。
ソフィアはそんなフィロスをどうしたら良いのか分からずに背中に密着して、手をお腹に回して抱き寄せるように無言で慰めていた。
僕達は試練を成功させた。それでも大雅達にとっては光太郎は死んだことになっている。
光太郎が本当は死んでいないことを知っているのは鏡だけだ。だから僕は何も言わない。言っても誰も信じてくれないし死者を冒涜するなと怒られるだけだから。
だから鏡はこの場にいるのに全く相応しくない表情になってしまうがその事に気付くものはいなかった。
それでも周りを見渡すと僕以上に相応しくない人がいるから安心していられることに不快感を覚えてしまった。
勿論結衣さんだ。たぶん晴輝以外の人に全く興味が無いんだろうな。
「暗い空気の中でイチャつける結衣さんに脱帽」
鏡は誰にも聞こえないようなぶつぶつといった感じで呟いた。
僕はその後色々なことを考えながら時間が過ぎるのを待つのであった。




