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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
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第2の試練-③-

次回で終わらせるようなことを後書きにかいた事によって、文章が酷いことになったような気がする。

気付いたときには鏡が死にかけていた。全身に抉られたような穴を開けられているために、痛みに苦しんでいるのを風花が風の力でゆっくりと、傷を刺激しないように運んでいる。


一秒毎に傷口はゆっくりと塞がっていく。だが、一度できてしまった傷の痛みはなかなか引かないもので、激痛に蝕まれていた。


少し離れた所では、最後に見た時の姿よりも一回り縮んだ泥の鎧を大雅さんが爪で削り、凛さんは鎧の内部であるヘビの尻尾を生やした人型を斬ろうと刀を振るっている。


気絶している間に物事はだいぶ進んでいるようだ。

一人取り残されたような感覚に捕らわれてしまう。


何で大事なときに気絶してしまったのか。


鏡が傷だらけになるまで戦っていたのに何で無傷の僕が倒れてしまったのか。


それはたぶん僕が弱いからだ。強くなるんだって心の中で誓ったのに僕はまだ弱いままだ。


自分の体を眺める。今さらながらに気付いたが、全身に薄く風を纏っていた。


風切さんにも助けられていたんだ。動けない僕を助けてくれた。


それなのに僕は何をしていたというのか。


守るべき存在を失なってから皆の足を引っ張ってばかりだ。試練の時だってそうだ。鏡が来なかったらたぶんあの部屋の中にいた全員を僕の力で殺してしまっていた。


俯き、暗い表情を浮かべ、そして暗い表情のまま顔をあげて歩いた。それ以上先に進めば泥沼であるにもかかわらず、晴輝は不思議と風花によって施された全身に纏う風によって歩けるのが当たり前だと思い込んでいた。


だからこそ晴輝は泥沼にはまることなくその上を歩けた。


そして、傷だらけの鏡の元に近寄ろうとしている自分に気付き、足が止まった。


(鏡の元に向かう前にやることがあるだろ!)


泥の鎧を纏う白仮面を睨み付けて、拳を強く握りしめる。現在の鏡の状態が気になる。しかし、ここはまだ安全地帯ではないのだ。これ以上鏡が重傷を負わないうちに可及的速やかに泥の鎧を排除する必要があった。


そう思った。


だから、行動を起こさねばいけない気になって。


気絶していた遅れを取り戻すために。

友達がこれ以上傷付かないように。


晴輝は拳に炎を纏った。


・・・・・

・・・


駆けて、殴って、避けて、放つ。


それの繰返し。


近付いては炎を纏った拳で殴り、泥の砲弾が飛んでくれば避けて、拳に纏っていた炎を鎧目掛けて投げつける。


どうすれば相手に致命的な痛手を短時間で負わすことができるかの探りあい。巨大すぎる攻撃は泥の津波に全力で防がれ、小さい攻撃は当てることはできても連続で殴らなければ鎧の再生速度を上回ることはできない。


泥の鎧を纏う人外も晴輝の攻撃に対応するかのように、泥の砲弾が回数を増やす毎にその大きさを砲弾から弾丸へと小さく、そして、素早く放たれる。


その弾丸は晴輝の炎によって、乾燥し、ひび割れた所から突き破るように内部から放たれてくるのだから、回避が少しでも遅れれば拳が弾けて、激痛で動きが鈍り、二撃目でジ・エンドとなってしまう。


痛みに慣れていないのだから一撃たりとも喰らうわけにはいかないのだ。


だからこそ、外側だけを焼くのではなく内部までしっかりと火を通さなければ、泥の鎧は内部に蓄えた泥で攻撃し続けてくる。


幸いなことにボロボロにまで乾燥した土を操れないのが晴輝にとっての泥の鎧攻略の糸口である。

鎧さえ引っぺがしてしまえば、後は大雅さんなり、凛さんなりが目にも止まらぬ早さで止めを刺すことだろう。


だから晴輝は火力を上げる。


チマチマと殴りまくったところで再生速度が速いのだから何発か防がれる事を覚悟の上で最大火力を連続でぶつける。泥の津波が押し寄せてくるがそれすらも数でぶち破れば良いとさえ思う。


飛びそうになる意識を必死に抑えて、更に火力を上げていく。


そんな荒業ができるのも、傷だらけで動きのとれない鏡が後ろに控えているからだ。

すぐ側には風花がいるが、この場所が危険なのは最初から変わらない。死ぬときは死ぬ。それがここの常識である。


だから、晴輝は更に火力を上げる。


晴輝と泥の鎧との間に炎が走り、目の前を真っ赤に染め上げた。


・・・・・

・・・


「晴輝!そういうのは射線上に味方がいないときに放つもんだろ!」


慌てたような口調でギリギリに回避した大雅は叫ぶ。しかし晴輝は瞳が焼かれるような輝きと全ての音という音を駆逐するような爆音によって聞こえたのかすら怪しい様子だ。


「ちっ、凛!巻き込まれないように2人を連れて後方に下がれ」


大雅の声にコクリとだけ頷いた凛は鏡と風花の元まで移動を開始した。


「あのバカは他人にどんな影響が出るか気付いてないのか?」


酸素を求めながら広がる炎の津波は、周囲の温度を急上昇させていく。

チリチリと熱を浴びて獣の姿から人の姿に戻った大雅は火傷で傷む肌にヒリヒリとした感覚を覚えながら呟いた。


晴輝は仲間の一人である。しかし、大雅にとっては、獸化した状態では毛先を燃やされ火だるまにされるという恐怖しか感じなかった。


「この戦いが終わったら常識と他人への配慮と加減をみっちりと教えてやる」


大雅の声は爆音によって晴輝には聞こえなかった。


・・・・・

・・・


敵の動きが鈍くなった。だから火力を上げた。


敵の鎧が薄くなった。だから火力を上げた。


人外の姿が露出された。だから火力を上げた。


それから数秒の沈黙。火力を上げすぎて気絶してしまっていたことに気づいた。だから火力を上げた。


トラウマを克服するために火力を上げていく。

トラウマを塗り潰していくように火力を上げていく。


晴輝の炎が視界を埋め尽くしていく。その光景に近付ける人はいない。


鏡ならもしかしたらと思うが、その鏡を守るためにやっているのだから近付いてきてほしくない。


晴輝は火力を上げる。敵は必死に残りの泥を防御に回すが、晴輝の炎によって泥としての機能を果たせていなかった。


何度も何度も火力を上げては気絶し、火力を上げては気絶する。


その行動を繰り返していく内に晴輝の中で変化が訪れた。


ストレス耐性。それは全体的に見れば小さな変化かもしれない。しかし、晴輝にとっては、大きな変化であった。


炎を見てもストレスにならなくなった晴輝は更に火力を上げていく。


再生速度を上回る火力によって、泥の鎧としての機能を果たせていなかった。


更に火力を上げたら空間が炎によって埋め尽くされた。ギリギリのタイミングで鎧を脱ぎ捨てたのか直撃を避けた人外が上半身裸の状態で右腕のみを火傷していた。


「地面が固まった?」


後ろから聞こえてきた声にチラリと地面を見下ろすと、流動的に流れていた泥が嘘だったかのように思えた。だが、実際には地面に窪みが多数できていることから地面が完全には戻っていないことがわかった。


だが、それがわかったところでどうなることも無い。晴輝は再び視線を上げて目の前の人外を睨む。


フードを目深に被っていたから見えなかったが、人外の体は頬から爪先に向けて左右に鱗が生えていた。そして、神秘的な森の中では、木々の隙間から射し込む一筋の儚い光が鱗を照らし、人外の鱗を緑色に輝かしていた。


その姿は神々しく、危険地帯にいるはずなのに絵画を観賞するかの如く見惚れてしまった。


そんな一瞬の空白を埋めるように人外が駆け出し、近接戦に移行する。


形勢逆転。


人にはそれぞれ得手不得手が存在する。圧倒的優位な遠距離から一方的に攻撃していた晴輝。だが、次の瞬間には拳の届く範囲に近付かれ、一方的に殴られ、蹴られ、そして、尻尾を軸にした回し蹴りによって、吹き飛ばされた。


地面を二度三度跳ねてから引き摺られるように滑ると、背中の皮を捲られたような激痛に顔をしかめる。


痛みに耐えて目を見開くと、目の前には拳が迫りくる。


そして、晴輝の視界に訪れたのは、人外の拳ではなく、人外の腕が凛のイメージで作られた日本刀によって切断される光景と背後から超高速で駆け抜けてきた獣化状態の大雅による銀色の閃光。


戦闘は瞬時に大雅と人外の近接戦闘に移行した。


ただでさえ凛に無事だった腕を切断され、片手のそれも晴輝に手酷い火傷を負わされた腕で、大雅の速度からなる攻撃全般を防ぐことができるはずもなく。


鳩尾に拳を突き刺され、一瞬で背後に回った大雅の鋭い爪によって、背中から胸部にかけてを貫かれ消滅してしまった。


「終わったな」


終わりこそ呆気ないものとなった。

地の文が多過ぎて言葉が少ない気がする。どうすればバランスのいい作品に仕上げることができるのか?作者の永遠の課題になりそうです。

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