第2の試練-②-
どこで切ればいいのかもわからず、だいぶ長い文章(?)になってしまい改稿が遅くなりました。
奥に進んでいくと大陽の光届かない薄暗くも神秘的な場所に辿り着いた。
そこには1人の人物が岩の上に座っていた。しかしすぐにそれは人ではないことに気付かされた。『尻尾』それも猿のようなふさふさとした尻尾ではなく、ヘビのような尻尾。
その人物の顔は白い仮面を付けており表情が見えない。仮面は子供の落書きのような黒く塗り潰されたような大きな目が2つあり、口の部分には小さく塗り潰された跡があった。
そして、肌の露出を極力避けるためかフード付きの長袖を着込んでおり、足首まで覆う長ズボンを着ている。髪の毛はおろか肌色が一切見えない。そして、全体を良く見てみると服もズボンも泥のように流れ、その形を一定に保っていなかった。
岩に座っていた人のような何かは立ち上がった。
その瞬間慌てたような大雅さんの口砲が、立ち上がったばかりの人のような何かの上半身を吹き飛ばした。
これで試練は終わり。上半身を吹き飛ばしたのを確認した後にそう短絡的に思ってしまった。しかし、すぐに発せられた大雅さんの下がれの指示を受け、全員が正体不明の何かから距離をとる。
異変はすぐに起こった。
ブクブクと膨れ上がり、何事も無かったかのように上半身を再生させた目の前のそれは前よりも更にその身を大きく膨らませていった。
泥の鎧。それを全身に纏い更にこの場にある土という土を全て流動的に変えて鎧に取り込んでいく。
「のわぁ!」
「鏡さん今いきます!」
地面が泥沼とかした事によって足を捕らわれたのを空を飛んで回避した風花によって救出された。
他の面々も泥沼から自力で抜け出せた物の、その辺にあった木にしがみついているために徐々に中心地点である泥の鎧を纏う人の元に流されつつある。
そして極めつけに尻尾であるヘビのような尾が、流されて近付いてきた流木を掴み投げてくる。
自分の場合は風花を背負っているから一定時間なら空を飛んでいられるが他の面々は、足場が狭い上に投げられた流木を受け止めることが出来なければ泥沼に落ちてしまい、流されて終わりである。
そして唯一投げられた流木を掴めるのが大雅さんである。
けれど凛さんに至っては投げられた流木に飛び乗って泥人間(ヘビの尻尾付き)の胴体を日本刀で切り裂いてしまった。
あ、晴輝が投げられた流木を燃やそうとして足元の木ごと燃やしちゃったよ。
「風花、晴輝を助けにいくよ」
「はい!」
泥沼に足を捕らわれてもがきながらも、脱出を試みる晴輝の両手を掴み空を飛ぶ。
「凛さんに斬られた跡が綺麗に消えてるね。てな訳で晴輝、両手を掴んでいるうちに口から火炎放射して泥を乾燥させて」
「え、えぇ、く、口で?」
「はやく、はやく」
「う、わかったよ」
ボバァと口から炎を吹き出した。その炎が泥に含まれている水分をいくらか蒸発させていく。パサパサとひび割れたのを大雅さんの口砲で吹き飛ばした。
「もっと火力上げられる?」
「試してみ、ゴバァ」
「ど、どうした晴輝!?」
一瞬だけ光ったかのような強烈な炎を口から吹き出した晴輝が、そのままぐったりと気を失ってしまった。
その間にも目の前の異形は、失った鎧の一部を増強するように地面から汲み上げた泥を全身に覆っていく。
「しまったぁー!?」
「えっと鏡さん、晴輝さんは大丈夫なのですか?」
忘れていました。はいそうです。
だってさ?克服したんだと思ったじゃん?少し前の戦闘でも普通に敵さんを丸焼きに燃やしまくってたからさ。
それに無理させてた自覚は無いけどやっぱり本人は無理してたんだろうな。
そうだ、これからは注意しよう。そうしよう。
「えっと、鏡さん?」
「え?あぁ、風花は知らなかったね。晴輝が炎を見るのが怖いことを」
「ええぇぇぇーーーー!?」
その日一番の絶叫がジャングルにこだました。
・・・・・
・・・
・
(さてと、どうしたものか)
ぐったりとうなだれる晴輝の両手を掴みながら、風花をおんぶして空を飛ぶ鏡は思考を巡らせる。
現在泥の鎧を纏うヘビのような尻尾が特徴な人間のような何かに対して、大雅さんと凛さんは決定打となりうる攻撃ができないでいた。
鏡視点から見てもそれは仕方がない事だと思ってしまう。なんせ敵が泥なのだから殴っても、切り裂いても、すぐに周りの泥を集めて失った分以上を補給するのだから徐々にその大きさも出会いの頃から比べると10倍を軽く越えているような気がする。
そんなピンチな状況なのに残念な事だが、唯一決定打を与えうる晴輝は炎の恐怖心によってダウンしてしまった。
「鏡さぁぁぁぁん!、そろそろ限界ですぅ」
気付くと高度が下がり、泥沼に足を浸けそうになる。
「安定した足場があればな」
そんなことを呟きながら硬い地面を思い出して、しみじみと呟いた。そして気付く。この世界はイメージした事を現実にできるということを。
頭の中に描かれた地面と地に足をつけたときに感じる足裏の感触を思い出して魔力を流し込む。
泥沼に足の指が触れるか触れないか。そんな距離感で鏡の足は泥に沈むのではなく、その上に立つことができた。
でもそれは能力を発動している鏡だけであり、両手に掴んでいた絶賛気絶中の晴輝には効果が及ばないもので、ズブズブとゆっくりと泥のなかに沈んでいっている。
「風花、晴輝を頼めるか?」
「はい、任せてください」
背中にしがみついている風花に問えば、二つ返事で引き受けて貰えた。
風花は鏡の背中から降りると、晴輝の背中に触れて少しだけ体を浮かせると近くにあった木の上に降り立った。
それを確認した鏡は、流れる泥の上を足を沈めずに駆けながら同時進行でダガーを両手に握り、投擲する。
泥の鎧に突き刺さったダガーはそのまま泥の鎧に沈んでいった。
「やはり、駄目か。なら、これなら!」
晴輝のような炎をイメージして、魔力を流し込み解き放つ。
解き放たれたそれは白炎。炎のように燃えるが熱を持っていないのか晴輝のような目に見えた大きな効果が起こらなかった。
ただ、効果が全く無かったのか?と問われれば、鎧の外側が少しだけ削れたとだけは言えた。水分を蒸発させて、ひび割れたのではなく、鎧の外側が削られたのだ。
その効果はまるで飛行練習をしているときに風のイメージをして木の枝を切り落としたような感じだ。
鏡はイメージを変える。下から風を巻き上げて泥の鎧を地面から切り離すそんなイメージ。魔力を流し込み、放たれた風は無数の破片からなる吹雪。花であれば綺麗な花吹雪となったであろう攻撃は、破片に変わると途端にむごたらしくも残虐性の高い攻撃へとなっていた。
べちゃ、べちゃと無数の破片に掻き回される事によって飛び散る泥が周囲に撒き散らされる。
鏡のやろうとしていることに気付いたのか、風花が風を巻き上げて威力を増してくれた。
少しずつ地面から引き剥がされつつある泥の鎧が何の抵抗もしないはずがなかった。
ぱっくりと開かれた口のような丸い穴。そこから今まで取り込んできた泥の塊を吐き出してきたのだ。
急な攻撃にイメージを中断して、 避けることに専念した鏡は後ろに飛び退いた。
少し前まで鏡の立っていた位置に泥の塊が着弾すると、破裂し、泥が飛び散った。
回避行動をしたことで、直撃は避けられたがBB弾を詰め込んだグレネードのように破裂した泥の散弾は全て避けることは出来ずに体に付着した。
突然の激痛。見れば泥が付着した部位が抉られたように穴が開けられていた。
「痛てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
激痛に叫んだ。集中力を失った鏡は、泥沼に沈んでいく。泥が付着したのは全部で16箇所。穴ぼこだらけの鏡は、もがき、苦しむ。
そして、鏡の叫びに気絶していた晴輝は目を覚ました。
主人公が必ずしも一番強いとか都市伝説とか七不思議ですから!
最後の文を読む限り、鏡よりも晴輝のほうが物語的にも、小説的にも、アニメ的にも主人公に見えてしまいそうなのは仕方がないのですけどね。.....トラウマがなければ(ボソッ
次回で第2の試練が終わります。