第2の町-②-
-晴輝視点-
「なるほど、ここがこうなっていて、あっちがこうなっているから、この建物は木の上であっても建物としての機能をはたせているのか」
現在晴輝は、木の上に建てられた立派な秘密基地のような建物を様々な方向から眺めて満足げな表情を浮かべていた。
そんな晴輝に声をかけてくる人物がいた。
「やぁ、初めまして、君も俺と同じ炎を操る能力者なんだね」
晴輝は声のした方に振り返るとそこには、赤熱色に染められた真っ赤な髪に両手の指に銀色の骸骨を模した指輪を嵌め、首にはこれまた骸骨のネックレスをぶら下げている。そんなバンドマン風の派手な男がいた。
そんなギラギラに輝く男の姿を視界にとらえて晴輝は瞬時に理解した。
(コイツとは絶対に仲良くなれねぇ)
と。
「どちら様でしょうか?」
「おっといけねぇ、俺としたことが自己紹介もまだだとはな。俺の名前は火崎。火崎炎我だ。よろしく」
「はぁ、えんかさんですか」
「えんが、だ。もう一度いう炎我だよ」
晴輝はこの馴れ馴れしい野郎に名前を聞いたのが間違いだったと思い知らされた。
しかし、火崎炎我という聞き覚えの無い名前。しかし、目の前のギラギラと自己主張の激しい男は初めて会ったはずの晴輝相手に自分が格上であるかのように接してくる。
それに初めましてと言ってきたわりには晴輝のことを何か知っているような態度で訪ねてきていることが目の前の男と仲良くなれる気がしないと思ってしまった理由である。
晴輝は頭をフルに回転させて、目の前にいる男の顔と似たような性格の男を記憶の中から照合する人物を探す。
その結果当てはまる人物は晴輝の生きてきた人生の中で一人もいなかった。
「俺のために時間をとらせてすまなかった。今日は顔を合わせる目的で来たんだ。同じ赤の色を持つ君のことだ。何か困ったことがあったら呼んでくれたまえ」
HAHAHAっと笑いながら背中を見せる男にポカンと一人取り残された晴輝は嵐のような人だなと思ってしまった。
・・・・・
・・・
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-炎我視点-
「火崎さん、火崎さん、あの子に本当のことを話さなくて良かったんですか?」
神々しく光輝く髪に猫のような瞳をした少年が火崎炎我に話しかけてきた。
「幻龍、お前はいつから覗きが趣味になったんだ?」
「酷いですね、僕はただ、面白そうなことをしようとした火崎さんが気になっただけですよ」
幻龍と呼ばれた少年はクスクスと笑った。
「それで、話しは戻りますけど火崎さんは本当のことを言わなくて良かったんですか?」
「何のことだよ」
「俺がお前の家を燃やした張本人だ。ってことですよ」
他人に話したこともなく、炎我の過去になりつつある放火魔だった記憶をつついてくる目の前の少年に一瞬だけガンをつけるが、クスクスと笑い続けるままだった。
「てめぇ、どこまで知ってるんだ」
「さあ、どこまででしょうね」
クスクスと笑う少年を見ているとイライラしてガシガシと頭を掻きたくなってくる。
「で、あの子にはいつ打ち明けるんですか?」
「知らねぇよそんなこと」
「そうですか」
「ただ、今はまだその時じゃないってだけだよ」
「じゃあ、その時はいつ来るんですか?」
クスクスと笑いの絶えなかった幻龍の顔がどこか問い詰めるような顔に豹変していた。
ただ、それだけなのにその顔を見ただけで自然と足は一歩下がり、溢れないはずの唾をゴクリと飲み込んでしまう。
「そんなに、怯えないで下さいよ、僕へこんじゃいますよ~」
クスクスと再び笑いだした幻龍にどこかホッとしてしまった自分がいることに気づいてしまった。
悔しかった、自分よりも年下に見える年齢不明の少年に対して一瞬であるがビクビクと震えてしまったことが悔しかった。
「幻龍、お前のいた世界でこんな言葉があるかは知らないが、バカは死ななきゃ治らないって言葉があるんだ。そして、俺はバカで愚かだったよ。建物を燃やして、人を燃やして、いざ自分が燃えてしまう番になったら今までやって来た行いを全て後悔したんだ」
心に芽生えてしまった復讐の芽が、募り募って対象ではなく、その子供に向けてしまった。
その子には関係無かったのに野郎に復讐出来なかったからという理由で、あの子を殺してしまった。
そして、その罪が爆発という鎖で俺に襲いかかってきた。動けない俺は自分が放火して起こした火災によって、焼死した。
そして、今思うのは誰にも話したくなかったそんな過去を、目の前の少年に隠し事が出来ないと悟ってしまった自分が情けなかった。
・・・・・
・・・
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「へぇ~、それで火崎さんはあの子に罪滅ぼしをするつもりなんだ」
「そうだよ、悪いかよ」
クスクスと笑い続ける幻龍にイライラしながら答えるとより一層楽しそうに幻龍は笑い出した。
「別に良いんじゃない?復讐からは何も生まれないって誰かが言ってたし」
「そうかよ」
不貞腐れたような態度で答えると幻龍は何故か微笑ましい物を見たかのように微笑みだした。
「ところで火崎さん、これからどうするの?」
「そうだな、あの子には会えたし風太と蒼流と合流したら次の町を目指そうと思う」
炎我のその言葉に幻龍は微笑みながら頷いた。




