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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
17/55

第1の町-終-

ついに始まりの名も無き町の物語が終了です。

町の出入口に近づいてきた頃。目の前に黒髪の集団が積み上がり壁をなしていた。


「この町から出るのを許さないってか」


壁を抜けた先は外である。そんな近場まで来れたのにこれである。


「2人とも、戦う準備をしろ」


大雅さんが壁を睨み付けながら指示を出す。


「どうかしたんですか?」

「あれの中心に子供がいる」


ジッと目を凝らして壁を覗くが隙間も少なくよく見えない。


大雅の見えている世界と自分が見ている世界が少しだけ違うことに鏡は今更ながらに気付いた。


「時間が無いから簡単に作戦を説明する。今のお前達には、屋根まで一瞬で飛べるほどの跳躍は難しいだろう、俺と凛が左右の建物の屋根にいる敵の相手をする。鏡と晴輝は上からの奇襲または攻撃の心配をしないで目の前の敵を倒して少女を助けてみろ」


それだけを告げると大雅と凛は左右に散っていった。


「大雅さんか凛さんの片方が屋根、もう片方が目の前の敵を倒せば早くすむだろうに」


晴輝が凛さんと組手をしていた時の事を思い出して遠い目を屋根に向ける。


「こんな世界だ。同じことがまた起こるだろうし、今の内になれてた方が良いだろうさ。それに師匠に少女を助けるという重要な任を任されたんだ。弟子として良いところを見せるチャンスじゃないか」


「いつの間にか僕達は弟子になったんだね」と晴輝は乾いた笑いをした後「それもそうだね」と良いところを見せることには賛成なのか頷いた。


「ところで少女を助けるなら、まずあの壁を崩さないといけないみたいだけど」


聳え立つ黒々とした人の壁を見上げながら晴輝は呟いた。


「そのことなんだが、俺にいい考えがある」


バットを握りながらニヤリと笑う。


「ま、まさか」

「晴輝、見てろよ」


壁の前まで歩いていくと、バットを構えてスイング。


「ホームラン!!」


吹き飛ばされる人々、崩れる人の壁、町の外に墜落する黒髪の集団。


「晴輝、遅れるなよ」


こじ開けた壁の穴から、中心にいる少女の元に走り出した。


・・・・・

・・・


「侵入者、殺す」

「侵入者、殺ス」

「侵入者、コロス」

「侵入者、こロス」

「侵入者、コろス」

「侵入者、コロす」

「シンニュウシャ、コロス」


壁が内側にバランスを傾けたのかワラワラと進行方向を塞いでいく。


襲い掛かる黒髪をバットで町の外まで吹き飛ばしながらも一直線に進む。

晴輝はサポートに徹しているため「ファイア・ボール」よろしく、炎の球体を左右に放っている。


その為鏡は一直線に進むのみ、目の前の敵をぶっ飛ばすだけだ。


・・・・・

・・・


少女の元に辿り着いた。追い掛けてくる敵を倒すために少女に背中を向けると、開口一番に


「お兄ちゃん?」


と、うるうると潤んだ瞳で呼ばれた。


確かに一之瀬家の長男ではあるけれど、一之瀬家に鏡花以外の妹はいなかったはずである。


それに銀髪だぞ、銀髪!!どこの日本に銀髪の妹がいるというのだ・・・って良く考えたら俺は白髪だな。白髪の兄はどこの国の住人なのやら。


そしてふと気付く。この子は誰かと勘違いしているのではないかと。


すぐにでも訂正した方が後々の少女の為になるのだろうが、迫る黒髪の集団と相対している現状では訂正する余裕が無い。


思考を変えて目の前の敵に向ける。統率なんて一切取れていない黒髪の集団。ただそれでも囲まれた状態で雪崩れ込んでくるその勢いは脅威である。


数瞬考えた鏡は再びバットを握りしめて、戻ってこないブーメランのように放り投げた。


バットをもろに食らった黒髪は頭から盛大に灰を噴き上げながら転倒し、後ろを走っていた黒髪の集団に全身を踏みつけられて魂が粉砕、後に消滅してしまった。


「南ぁ~無ぅー」


自分がやった事ではあるが、可哀想だったので両手を合わせて合唱。


「さて、どうやってこの場を乗り切るか」


後ろに視線を向けると少女の不安そうな横顔が写る。


近くにいる晴輝は両手から炎の球体を数秒毎に放って黒髪を火だるまにしている。

炎タイプは主人公や主役なんだから物騒なことはしないでほしいよね。


っと、人のことを見る前に自分のことをしないと。今の自分にできることは何だろうか。


今出来る事といえば、ダガーでチクチク刺すか投擲して突き刺すか。でもイメージでつくられた物ではあるけれど、やっぱり刃物を人に向けるのはどうなのだろうか?


ここはやっぱりバットだな。


再びつくりだしたバットを放り投げて、投げて、投げまくる。そして投げまくること数十分。異変はすぐに気付いた。


建物の近く、そこから鏡と晴輝の元に向かって一直線に黒髪が空を舞う。それも左右から。


「遅くなってすまんな、もう大丈夫だ」


その後チマチマとやっていた鏡と晴輝は、大雅と凛の人間離れしたアクロバティックな攻撃をサーカスでも見ているかのように遠い目で眺めるのであった。


・・・・・

・・・


「お兄ちゃん!!」


背中にポスンと少女の体が触れて、少女の震えが伝わってくる。


「おにぃちゃぁぁぁん」


泣き出した少女に戸惑い、どうすればいいのか悩んだ結果、ポンポンと頭を撫でることにした。視線を前に向けるとヒソヒソ声で会議する晴輝と大雅の姿が見える。


「あれってやっぱり鏡の妹なのかな?」

「そうじゃねぇの?だって髪の色似てるし」


白髪の鏡に銀髪の少女。今日知り合った2人からしたら似たような色の鏡と少女が兄妹だと思うのも何となくわかることかもしれない。


(この状況をどうしたら良いのやら)


鏡はポンポンと頭を撫でながら空を見上げるのであった。

-重要-

次回は諸事情により、2~3週間改稿が遅れます。

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