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パンドラゲーム  作者: 香村 サキト
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第1の町-閑話-

今回は黒髪大量発生の少し前、第1の試練が終わってからの主人公サイドでの物語です。

鋭い刃物をイメージするなら他の人は何を思い浮かべるだろうか?


目を閉じ、座禅をしながらその事を考えていると、狂魔の姿を思い出してしまう。


狂魔には勢いで啖呵を切ってしまった。


あの時は謎のテンションになっていたのか、今になって思い出すとまるで自分じゃないみたいだった。


口は災いの元とは良くいったものだ。

やっぱり次に会ったときも先と同じく殺し合うのかな。


そんな未来を想像すると嫌になる。


「あ、できた」


狂魔のことを考えていたからか、鏡の右手の中には狂魔の使っていたダガーの色違いである白色のダガーが握られていた。


「イメージに力を流すやり方は感覚的に分かったけど、色までは再現出来ないのか」


自分で作り出したダガーを眺めながら、立ち上がると、湖の方から晴輝がやって来た。


「できた?」

「あぁ、やっとな」


イメージのダガーを晴輝に見せる。


「これって、もしかして黒い人の?」

「そうだよ、勢いとはいえ次は負けないとか言っちゃたからな」


ダガーで軽く動きの確認をする。


やはり、小回りのきくダガーは、一振りした後でも素早く次の動作に動くことができる。


それでも、投擲だけは狙った場所に飛んでいかなかった。何故だ?


そして、視界に映る晴輝の姿。


「ところで、何かあったのか?」

「あっ、そうだった。大雅さんが第一段階が終わったら本格的な修業をやるってさ」


晴輝が歩いてきた方向を見ると、湖を眺める大雅さんの姿があった。その右斜め後ろには当然のように凛さんの姿もある。


現在鏡達は第1の試練跡地である更地で、大雅さんの考えた修業をしていた。


その第一段階が少し前まで鏡がやっていた座禅による精神統一だったりする。精神統一と言ってはいるが、他のことを一切考えないで、イメージを瞬時に武器にするという内容なのだが、これがまた意外と難しかった。


鏡はどちらかというと頭で考えるより体を動かして覚える方だからだ。決して脳筋ではない。


「確かに修行とかするなら絶好の場所だよな」


城が無くなった更地を眺めながら鏡は呟いた。


・・・・・

・・・


「足にまで集中しろ」

「っ、はい」


鏡は現在進行形で大雅さんと1対1で組み手をしている。大雅さん自身人の身をしているのだが攻撃が全く届きそうにない。


拳を叩き込もうが、足で蹴り込もうが、全てを片手、片足で流され、弾かれ、カウンターを叩き込まれる。


(くっ分かってはいたけど予想以上に強い)


組み手じゃなかったら確実に殺されてるなと思うと同時に自分があまりにも弱すぎると実感してしまう。


いつの間にかに修行はイメージ可の内容に変わり、大雅の両手は獣のそれとなり、鏡の両手には白のダガーが握られていた。


それにしてもだ、大雅さんはここに来る前は何をしていたのだろうか?


そんな疑問が頭をよぎる。


大雅さんの両手には銀色の体毛がフサフサしている。爪の太さはパソコンのマウス並みに大きくて鋭い。


そして、そんな鋭い爪を振り回し一瞬の風を生み出している。


そして、時間が教えてくれることだってある。大雅さんは実質的に鏡の攻撃を防ぎカウンターを当てるだけで、修業が始まった時から一歩も動いていないということが。


結局数時間も攻撃をしていたのに一つの傷を付けることも、そこから一歩後退させる事も出来ずに修業の終わりを告げられた。


・・・・・

・・・


「なぁ、鏡。町の様子がおかしくないか?」

「そうか?」

「あぁ、黒い霧なのかな?が空に漂ってるように見えない?」

「あぁー、確かに言われてみれば見えなくもないな」

「それに風にのって悲鳴まで聞こえてくる気がするんだよ」

「そうだな、ちょっと大雅さんに報告しとく?」

「その方が良いだろうね」


2人は大雅さんのもとに向かい、状況を説明する。


「黒い霧っていうか黒い柱じゃねぇの?」

「黒い膜?」


大雅と凛は別々の事を言った。


「鏡は何だと思う?」

「うーん?霧?柱?膜?何だろうね?」

「はぐらかさないでよ」

「それよりもさ、あの中に入っても大丈夫なのかな?」


実際のところ、黒い何かが溢れ、覆う空間に足を踏み入れない事にはこの町を出ることもままならない状態だったりする。


水の上を走るか飛ぶかすれば関係無かったりするのだが現実的でない方法なので口にはしない。


もしかしたら大雅さんなら出来るかもしれないが口に出すのも何だかなと思い結局心の中で呟くだけに終わった。


「大丈夫だろ」

「え、でも悲鳴が聞こえるよ?」

「大雅さんが言うなら問題ないさ」

「問題ない」


と口々に言う。


「そんなに心配なら俺が先に入って確認するからその後にこい」


大雅は先頭を歩き黒い何かが満載の空間の目の前にまで歩いていった。


「じゃ、先に入るぜ」


大雅には怖いものがないのか躊躇う事もなく足を踏み入れ3歩進み、首だけで振り返った。


「ほら、何とも無いだろ?」


大雅はそれ以上何も言わず歩いていく。それを無言でついていく凛。


「ほらほら、俺達も行くぞ」

「え?あぁ、行くんだ.....」


恐る恐る黒い空気が漂う町の中に足を踏み入れて、キョロキョロと首をせわしなく動かす晴輝の背中を押して行くのであった。

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