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始動

遅くなりました!

昨日の夜、僕は安間から、たくさんの話しを聞いた。

F組のみんなが、能力を持っている事。そしてその能力を、彼らはFakeと呼んでいる事。それから、過去にイジメを経験している事。海藤校長は、仮の校長であって、真の校長ではない事。また、F組はその、真の校長によって集められたという事。



あまりにも、非現実的過ぎるためか、僕は今だに全てを理解できてはいない。それでも、安間に言われたあの言葉、


俺たちと一緒に、戦って、くれますか。

俺たちは、弱い。だから、俺たちには、


「ヒーローが必要なんです…。」



これだけは、心の深いところまで、伝わってきた。だからこそ僕は、まだ理解はできていなくとも、ヒーローになるんだ…と思えた。










朝僕は、昨日と変わらずに、ごく普通に出勤した。そして、初日の時と同様に、「おはようございます!」と、爽やかに、少し着飾った挨拶をした。先生方の視線は、一気に僕へと集まる。しかし、昨日と比べて、はるかに、僕の心にはゆとりがあった。そこへ、海藤校長がやって来た。

「なんなんですの⁉︎お辞めになさったわよね⁇なにかご用件があるのかしら⁇」

早口で、まくしたてるように、そう言った。だから僕は、落ち着いた感じに、こう言った。

「先日は、大変迷惑をおかけしました。辞めたのにここへ、こうして来るのはおかしいということも、わかっています。


なので、お願いしに来ました。もう一度、F組の担任にして下さい。」

そしてもう一度、

「お願いします」

と、強調した。一瞬、海藤校長は、とまたどっていたが、直ぐに平然を装い、

「F組は今、人で不足ですの。なので、今回は良いことにします。ただし、後戻りはできませんよ?」

と言った。


当たり前だ。僕は、後に戻る気など、さらさらない。上等だ。そう思った。


朝のHRの時間がきて、僕はF組の教室の前へと向かって行った。そして、一度ドアの前で立ち止まって、もう一度、強く決心した。「ヒーローになるんだっ…!!」と…。


そして、中へ入って行った。教卓の前に立ち、ぐるっと見回した。後ろの方の席には安間。一番前の席には、有明が座っていた。そして、他のみんなは、僕のことをじっと見つめていた。その視線にはやはり、異常な何かがあり、また恐怖してしまった。すると安間が、

「怖がらないで〜」

と、気の抜けた声で言った。その通りだ。なにをしているんだっ…!!


僕は、大きく息を吸った。そして、

「おはようございます!」

と言った。


すると、一人の女子生徒が机を叩き、勢い良く、席を立った。その黒いロングヘアの子は、目を丸くしていた。

「安間くん。この人が、新しいヒーローなの?」

‘信じられない’と、言った。そして、

「うん、そうだよ!みんなのヒーローなんだ。」

と、安間が言う。


クラスにいる全員の目が、丸く、大きくなった。


そこで僕は、また口を開いた。

「僕、みんなの担任になったんだ。」

そして、もう一度…



「ヒーローになりたいんだっ」




すると、ただ僕を見つめるだけだったみんなの方から、声が聞こえた。ざわざわと、空気が揺れる程度の大きさだったが、それでもそれは、声だとわかった。



「宮崎先生、ありがと!」



これは、昨日の夜も聞いた言葉だった。



初めて聞いた、みんなの小さな声と、安間からの二度目のありがとうが、耳にこだました。

僕にはその音が、これから何かが始まろうとしている、希望に満ちた、合図に聞こえた。




これからも、読んでくださると、うれしいです!

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