辞任
ヒーローになりたい者とF、第二話めです!
「異常だ」
その言葉は、自分の口から漏れていた。異常。この言葉を皆の前で、出してしまった。皆は、先ほどから静かなはずなに、より一層静けさが増した気がした。さっきから僕のことを捉えていた皆の目は、僕を刺し殺す勢いのものだった。いや、全て、さっきのまま変わっていないのかもしれない。それでも、それでも、やばい……僕はそう思った。
次の瞬間、手に持っていた日誌やプリントを、教室に投げつけ、そして……走った。
やばい、これは嘘だ。やばいのではない。
怖いのだ。
走った、これも嘘だ。走ったのではない。
逃げたのだ。
あの皆から、F組から、怖くなって逃げ出したのだ。
三年生の教室の前を駆け抜け、職員室を目指した。唯一の逃げ場だ、と思ったわけではない。あの、校長にこのことを聞き出すためだ。
「あんの、野郎っ」
教師らしからぬ…それもそうだが、自分自身の口から、野郎、などという言葉がでるとは思っていなかった。でも、それほどに今、僕はあの校長に、腹が立っている。
あの教室にいて、先ず怖いと思った。そのあと校長や、周りの先生方の言動を思い出した。あの焦り、冷や汗…全てやはり、挙動不審であった。そさはてさらには、そのあと僕がF組の担任を了解した後のあの落ち着きよう。実際にF組に行き、見て、感じて…ようやく解った。いや、大方解ったと言うべきか。
「海藤校長先生っ!」
職員室につき、海藤 敦子校長を呼んだ。いや、怒鳴ったという方が、あっているかもしれない。
「なっ、なんですの?宮崎先生」
「なんなんですかっ、あのっ、あのF組はぁ‼︎‼︎」
あの、異常さ。この、陽色高校は良い高校ではなかったか。なのにもかかわらず、なんなのだ、あの異常さは。どう考えても、こう思うしかないだろう。F組の状況は元より知っていて、それで、初めはそんなクラスの担任になってくれるかが、すごく心配であった。しかし、僕は新米の教師で、馬鹿だった。だから、あっさりと引き受け、周りは安堵した。
「はぁ…宮崎先生。あなたには少し、期待していたのですよ?」
なっ、何を言っているのだ、この校長は。
「F組のこと、何か知りましたか?」
「は?」
知ったか?だと。
「あぁ、ごめんなさい。聞き方が悪かったわ。あの、安間、安間 四郎は、あなたに何か、言っていましたか?」
なっ…安間…?
「あぁ、もういいわ。誰でも良い。あなたに何か話しかけましたか?」
「話しかけるも何も、皆、僕をただただ、ひたすら見つめるだけなんだ!なのに、話しかけるもくそもないでしょう!!」
「っ!」
「なんなんだ!なんなんですかっ、あれは!あのクラスはっ!!……異常だ」
「…はぁ。いいですわ。宮崎先生、あなたには辞めていただきます。」
!なっ、なにを言っているのだ、この人は。
「なにも、恥じることはないわ。皆すぐ辞めて行くの。今まで一番続いたので一週間。あなたは、普通だわ。」
「一週間って、そんな」
「馬鹿な話?…あるのですよ。やめて行った理由は、あなたと同じです。怖い、不自然、奇妙、異常…やってられないって。」
今までもって、一週間。数々の人が辞めている。辞めた理由は、僕と同じ…
「それにあなたは、詳しい話は聞いていないようです。あの、安間が話さないなんて珍しい…嫌われているのでしょうかね?まぁ、不幸中の幸いですわ。今まで…いえ、間違えましたは、今日一日…これも違いますわね。少しの間でしたが、ご苦労様でした。他の学校での活躍を期待していますわ。」
「それと、今日のこと…F組のことにつきましては、どんなに些細な事も、口外なさらぬよう、お気を付け下さいね。」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!次回も読んでいただけると嬉しいです。