表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

降りれない

作者: 莉央沙

学校からの帰り道、色あせた歩道橋の上。

そろそろ下りの階段。ひび割れて、がたがたのコンクリートは何となく汚らしい。


おいしょ、っと最後の一段をまたぐ。

さぁここからは真っ直ぐ前進、家は直ぐそこ。


のはずだったのだが・・・。


おや。様子が変だ。

なぜにまた歩道橋の階段一段目に足を乗せているのだ.

寝ぼけてた??


まぁいい。

もう一度上りきる。

車の上の平らな道を進む。

人とすれ違った。


今度は上り始めたのとは反対側の下りの階段。

そして最後の一段を踏み出した。



のに、またさっき上がった筈の一段目に片足かけている。



いくらなんでも、変である。



試しに階段を上ろうとせずに、回れ右をして歩道橋から離れようとしてみる。

今度は反対側の階段に足をかけている。



・・・・。


歩道橋の上から動けないらしい。



何度も、行ったり来たりを繰り返しているのだがそんな怪しい男子高校生とすれ違う人々は全く気にしていないようだ。

あるいは、見えていないとか・・・?

はは、そんなまさか、いやでも、現にここから動けないという不思議現象がおきているわけで・・・。



一つ試していない事に思い至った。

今まで正直に本来の通り道しか進んでいた。では横から飛び降りたらどうなるんだろう。



さすがに、この高さはまずいよな・・・。


凄い速さで下を行きかう車を見下ろしながら少し躊躇った。

飛び降りるという方法で、ここを脱出できたとしてもこの高さからコンクリートの上に着地、あるいは車に直撃。

それは即死ではないだろうか?



ああーもう!

いいや。手すりを掴んだままそっと足を外に出して見ればいいじゃないか。

いつまでもここに居続けても、最終的に餓死することになりそうだし。


錆付いてイガイガする手すりをしっかり握り締めてそっと体を持ち上げ、車道の上空に持ってい行く。

足は空中で足場を探して、手すりを握った両手に全体重がかかるかと思っていたのにあっさり地面に、というか、元いた歩道橋の上に降り立っていた。

まるで空を飛んで歩道橋の上に昇ったような位置じゃないか。



・・・・ちょっといい加減にしてくれ。



今度はやけくそになって、錆びた手すりをえいやと踏みつけて車道の上に身を投げた。

が、やっぱり歩道橋の上に着地。





あれ?

一つ変化を見つけた。

さっき自身が飛び降りた(結局降りれていないが)場所に顔見知りを見つけた。


奴は中学からの友人だ。

よく登下校を共にし、寄り道したり、馬鹿な話に花を咲かせたり、まぁ気を許せて一緒に居て楽しめる奴だ。


「おい」


声をかけても反応がない。

やっぱり見えていないとか、そういうことなのだろうか?

そいつの顔をごく近い場所から覗き込む。

それでも気がつかない様だ。

いつもヘラヘラ笑っている表情しか浮かべていない顔が、今日はどうもどんよりと暗く重い。


「何かあったのか?」


目線をたどる。

激しい車の流れが目に入る。



━瞬間に脳内に再生される音の無い映像。




いつもと同じように、二人で漫才みたいにどつき合いながら笑ってこの歩道橋を渡って行く。

あいつが、ふざけて突き落とす真似をする。

俺は本当に手すりを乗り越えて落ちていく。

驚いたあいつの顔を下から見上げていた。




「ごめん・・・・本当に・・・」


ぼそりとした謝罪の言葉で我に返る。


全部を思い出した今、「ごめん」ごときで許せるわけがない。

怒りがふつふつと湧き上がる。

お前のせいじゃないか。

お前の・・・。

奴はこちらの存在に気づいていない。

そっとうな垂れた背中に両手を当てる。

力を込めて押し出した。

さっきの自分とは違って、あっさり歩道橋を離れていく。


下を見下ろしたら、クラクションがなり、急停止し、ぶつかりそうなになった車。驚く人々。

コンクリートを赤茶に染めた『友達』が倒れていた。






ぱちり。

目を開いたら、真っ白の天井が目に入った。

どこだ、ここ??

自分は死んだものだと思っていたのだが。

辺りを見回してみたらどうやら病院の様だ。

頭を動かすと、後頭部がずきずきした。ついでに肩と首も痛いが、これは椅子に座って首を仰け反らせて座っていたせいだろう。

その辺を考えて見ると、どうやらたいした怪我では無い様だ・・・。

病室というよりも、治療室の様だし。


「大丈夫?」


めちゃくちゃ綺麗な看護士のおねーさんに声をかけられて、こんな状態にもかかわらず、ちょっぴりときめいてしまった。


「君、凄い強運ね。歩道橋からおこっちたのに、頭のこぶだけよ?さっき中を一応撮って見たじゃない?診たところ異常はないって」


綺麗なおねーさん眺めている、脳の隅っこでコンクリートを赤く染めていく友達の姿を見つけた。


「でも、何日かして急に痛くなったり、後から大変な事になるかもだから・・・」


もう看護士さんの話は耳に入ってこない。

自分の血の気が引いていくのが分かる。


なんてこと、してしっまたのだ・・・・。



その瞬間、立ち上がって横に置かれたかばんを引っつかんで病院から駆け出す。後ろから大きな声で呼びかける声がする。

でも、そんな事気にしている暇は無い。



これまでに体育でもこんなに必死で走ったことはないって位の全力で、あの歩道橋に向かう。

古くなってひび割れた汚らしい階段を駆け上がる。

中央あたりに辿り着く。

もちろんそこには誰も居ない。

慌てて手すりを掴んで下の車道を凝視する。

しかし、そこにもなんの姿も確認できない。



背中に、熱い、手のひらを感じた様な気がした。




振り返るのも間に合わず、手すりを乗り越えて体は宙に投げ出される。

空中で体をひねってもさっきまで自分が居た場所にはやはり誰も居なかった。



長いような数秒の間に、今度こそ、死ぬのかな。

そう思った。



△△△


学校からの帰り道、色あせた歩道橋の上。

そろそろ下りの階段。ひび割れて、がたがたのコンクリートは何となく汚らしい。


おいしょ、っと最後の一段をまたぐ。

さぁここからは真っ直ぐ前進、家は直ぐそこ。


のはずだったのだが・・・。


おや。様子が変だ。

なぜにまた歩道橋の階段一段目に足を乗せているのだ.

寝ぼけてた??


まぁいい。

もう一度上りきる・・・・・



        ━さいしょにもどれ━





『友達』だって、いってすまない事をしたと言うのなら、許してあげたら?

どちらかが『友達』を許すまで、やり続けるの??


無駄な時間だね。


でもきっと永遠、歩道橋から降りられそうにないね。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、一条 灯夜と申します。 作品、拝読させて頂きました。 含蓄に富んだ作品だと思うのですが、途中から展開が予想出来たり、文体がやや荒削りだと感じました。 すみません、普段読んだり…
2011/02/03 20:16 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ