第15話 また帰ってきた勇者
煇たちが王都へ着く少し前。黎人は城にいた。一瞬力が戻ったのか、檻を破壊して外へ出ることが出来たらしい。そのあとは戻らなかったようだけど。
トボトボ王都まで歩いて行き、見張りがいなくなったタイミングで城へ入って行った。
道中、魔物に遭遇したが黎人は相変わらず相手にされなかった。
城内の魔族とは意思疎通は出来ないが、放置され黎人は中を自由に歩き回っていた。
玉座の間にたどり着いた黎人は力をくれた魔族ムーウに再び力をくれと懇願した。
「人語を介せない勇者め。耳障りだ」
まともに戦えてなかった黎人の様子を見ていたムーウは一瞬呆れ顔をしていたが、黎人の頭に手をかざした。
「これでいいか」
何かをしたみたいだが、前と異なり黎人の様子は変わっていないように見えた。
「ウッー!ウッー!」
黎人はまだ何かを訴えているがムーウは無視し、部屋の外へ放り出した。
* * *
煇たちは城内へ突入した。
「数はそうでもないが高位の連中が多いな」
入ってすぐに魔族たちが待ち構えていた。屋内での戦闘に向いた中型の魔族が広間の1階と階段の踊り場に陣取っていた。
ヒロシとコウジの2人が先陣を切り突破を図るが、踊り場からの敵の遠距離攻撃に阻まれて近づくことが難しい。
「立ち位置が悪すぎる。試してみるか」
煇が息を思いっきり吸い、声を張り上げた。
「お前たち!上から高みの見物とはいい度胸だな。降りてきて正々堂々戦ったらどうだ!」
すると踊り場に居た魔族たちは、弓を手から落とし、魔法も使えなくなった。
今だと言わんばかりに一斉に魔族へ突撃する。ヒロシとコウジはそのまま客室のある2階へ。陽動隊は広間で陣取り、魔族たちを引き付ける。
「一気に走り抜けるぞ!」
煇はセリアの手を引いて階段を駆け上がる。踊り場の魔族たちが床に落ちた弓を拾い慌てて構える。
「同じ高さになったから効果が切れたな」
セリアが煇の手を振り解き――
「この隙に倒しちゃいましょう」
矢を放とうとする魔族の懐に潜り込み一閃。その奥にいた魔族が放った魔法を躱し、踊り場から下へ突き落とした。
反対側の魔族は煇がなんとか片付けた。
2人は玉座の間へ続く廊下へ進む。2人が廊下に入ると背後の扉は固く閉ざされた。
そこには待ち構えていたかのように魔族たちが並んでいた。
「これを全部倒してから来いということか」
手前から奥にかけて、高位の魔族が配置されていた。
魔族側から仕掛けてくる様子はない。あくまでも道を塞いでいるだけだ。
「わざわざ用意したのか。一体何がしたいんだ?」
一体目、あの隣町にいたのと似たような人形だ。
コウジやヒロシならたいした相手ではないが、煇には苦手な相手だ。
「私がやります」
セリアが前に出て短剣を構える。相手は微動だにしない。お互い機を伺っているようだ。
痺れを切らした魔族が魔法を使おうとした瞬間、セリアは左手に隠し持っていた短剣を投げ、相手の喉を掻き切った。
「まずは一体!」
次は前回もいたミノタウロス型だ。狭い廊下ではこちらが有利に思えるが、武器は長剣を携えていた。
セリアが相手を引き付け、煇が魔法と投擲物でちまちまとダメージを与えていく。わずかばかりではあるが再生能力のある相手にはジリ貧であった。
「これだとキリがないな。こっちで引き付けるからトドメは頼む」
「りょーかい!」
ぎこちない動きで剣を躱していく煇。魔族も少し気が散ってきたのか狙いがあまり定まらない。使い慣れてない武器なのもあるのだろうか。
セリアが背後を取って後頭部に短剣を突き刺して終わった。
2人ともまだ余力を残してはいたが、割と消耗していた。仲間たちが広間で戦っている様子が聞こえてくる。まだ引き返すわけにはいかない。
最後は2人が見たことがない、高位の魔族だった。漆黒の2対の羽を持つ悪魔と呼ぶべき魔族であった。
「マァ、時間かかりすぎじゃねえの?勇者にしては弱いなあ」
「生憎戦闘向きじゃないもんでな。お前で最後か?」
「ソーだよ。でも俺様も戦闘向きじゃないんだ」
「だからクイズにしよう。ちょっと疲れただろう?」
「わかった。いいだろう」
魔族のクイズに付き合いながら休憩する。しかし警戒を解くわけにもいかない。
煇はセリアに目配せをし、魔族の方を向いた。
「ジャー1問目な。俺たち魔族は元々どこにいた?」
煇は答えの見当はついていたが、どういう形式のクイズなのか気になったので探ってみることにした。時間稼ぎも兼ねて。
「いきなり難問だな。ヒントはないのか?」
「しょうがねえな〜。今はなくなった国だゾ」
「旧ゼット帝国か」
煇はわざとらしく手のひらを拳で叩いて回答した。
「正解〜!じゃあ次ね」
「俺たちが復活した理由は?」
「それはお前たちの目的を答えればいいのか?それとも復活した方法についてか?」
「どっちでもイイヨ?答えやすい方で」
「ズマルの集めた呪具とその召喚術によって呼び出された。でいいか?」
「ウーン、ちょっと違うんだよね」
「まあいいか。正解は女神の鍵と召喚術式によって門を開いたから、でした〜」
「は?どういうことだ?」
「エ〜大体察しはつくんじゃないの〜?戦闘は得意じゃないなら頭ぐらいは回るんでしょ〜?」
ゼット帝国を作ったのは魔族。しかし滅ぼしたのも魔族。魔族を封印したのは女神なのだろう。帝国を滅ぼしたのも女神なのだとしたら、答えは明白だ。
「ゼット帝国は女神によって滅ぼされた、か?」
「ソーだね〜でも間違えたから罰ゲームだね」
そう彼が言うと前後の門が開き、魔族が雪崩れ込んできた。
「ジャア、死なないようにせいぜい頑張ってね。バイバイ」
身構えた2人はクイズを出していた魔族が消えたのを見て顔を引き攣らせた。
一方その頃、黎人はなぜか地下への階段を下っていた。
魔族が次々と出てくる方向とは逆に1人進んでいく。こんな雑魚、誰も何も気にしない。
まさかこれが魔族が再び敗北する原因になると、その時は誰も思いもしなかった。




