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夢タウン レトロストリート

作者: 山谷麻也
掲載日:2025/12/22

挿絵(By みてみん)


 その1


 二三日(ひる)から粉雪(こなゆき)()いはじめ、二四日には周囲(しゅうい)山々(やまやま)雪化粧(ゆきげしょう)した。天気予報(てんきよほう)のとおり、ホワイトクリスマスになった。

 盲導犬(もうどうけん)・エヴァンはうれしそうだった。(にわ)()ると、(みぎ)(ひだり)(いそが)しく()ける。

挿絵(By みてみん)

 散歩道(さんぽみち)(しず)かだった。だれも(とお)っていない雪道に、(わたし)たちの足跡(あしあと)(しる)される。エヴァンはますますスピードを(はや)めた。


 坂道(さかみち)にさしかかった。いつもならここでUターンするところだが、エヴァンはグイグイと(すす)む。

「いいよ。()きたいところに行きなさい」

 銀世界(ぎんせかい)は、私とエヴァンだけのものだった。


「だけど、エヴァン、ここはどこなの」

 エヴァンはキョロキョロしている。(まよ)ったみたいだった。

 そのうち、私は(からだ)()えてきた。


 エヴァンがしっかりした足取(あしど)りで、(ある)()した。いつしか、アスファルト道に(はい)った。(おぼ)えがあった。


 その2


 大雪(おおゆき)交通機関(こうつうきかん)はマヒしていた。

 シャッター商店街(しょうてんがい)完全(かんぜん)臨時休業(りんじきゅうぎょう)しているようだった。ラッキーなことに、一(けん)()かりが()れている(みせ)があった。

挿絵(By みてみん)

 (むかし)、一()だけ(はい)ったことのある居酒屋(いざかや)だった。高齢(こうれい)女性(じょせい)がひとりでやっていた。二度めに(おとず)れると

(いぬ)()()ちて、掃除(そうじ)大変(たいへん)なのよ」

 と、入店(にゅうてん)(ことわ)られた。


 おそるおそる(なか)をうかがっていると、私たちに気付(きづ)いた。

(ひさ)しぶり。いらっしゃい。(さむ)かったやろ」

 イスを()いてくれたので、私はカウンター(せき)(こし)をおろした。


 ()くして、(つぎ)の日も遠出(とおで)した。

 エヴァンはもう迷うことなく商店街に足を()み入れた。

 ちょうちんが()れているのが()かった。お(この)()()だ。ここも、トラブルがあった店だ。

挿絵(By みてみん)

「犬はダメです」

「盲導犬なんですよ。店は入店を断れないのですよ」

「そんなことくらい分かってます。とにかくウチはダメ!」

 なぜか、けんか腰だった。


 店内(てんない)からソースが(にお)ってくる。エヴァンが私を()()った。

「あっ、可愛(かわい)いワンちゃんやなあ。どうぞ」

 アルバイトの女子高生(じょしこうせい)みたいだった。(おく)で女性経営者(けいえいしゃ)(あか)るい(こえ)がしていた。


 その3


 さすがに、三日めには道路の雪も()けはじめていた。

 それでも私たちの足取(あしど)りは(かる)かった。やはり商店街に一軒だけ食料品店(しょくりょうひんてん)営業(えいぎょう)していた。

 この店にもいい(おも)()はなかった。


「犬は(そと)につないでおいてな」

 女性店長(てんちょう)が入り(ぐち)に立ちはだかった。

 私は盲導犬であることを説明(せつめい)した。

(なに)がいるの? 私が()ってきてあげるから、(そと)()っとって」

 と、()(みみ)をもたなかった。

挿絵(By みてみん)

「二度あることは三度ある。エヴァン、行ってみようか」

 私はエヴァンと店に入り、レジに声をかけた。

「フィッシュカツ、ありますか」

 徳島(とくしま)名産(めいさん)のこのカツは、(さけ)のつまみにいい。思いついて、香川県(かがわけん)観音寺(かんおんじ)産のいりこもお(ねが)いした。予定外(よていがい)のお(かね)使(つか)ってしまうものの、()(もの)(たの)しい。


 その4


 雪が融けた。(まち)はいつもの(とし)()表情(ひょうじょう)()りもどした。

 この三日(かん)で、商店街についての私の印象(いんしょう)()わってしまった。()不自由(ふじゆう)(ひと)と盲導犬に(たい)して、すっかり(やさ)しい街になっていた。


 商店街でウロウロしていて、中学生(ちゅうがくせい)のグループに声をかけられた。

「何かお(こま)りですか」

 私は三軒の店の名前(なまえ)をあげた。立ち()って、お(れい)()いたかったからだ。


 中学生たちはなにか(はな)しあっている。

「あまり外出(がいしゅつ)しないのですか。三軒とも、去年(きょねん)()れで店を()めましたよ」

挿絵(By みてみん)

 中学生たちは心配(しんぱい)してくれた。私は()()(なお)した。

「ありがとう。ほかにも()ってる店があるから」

 私が何も言わなくても、エヴァンは馴染(なじ)みの居酒屋に直行(ちょっこう)した。

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