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デウス=コード 〜オレが鋼で、キミが光で〜  作者: 熊野御堂


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第4話:秋冷の問い


ーー都内某所。

郊外の広い庭で、かけ回る四足歩行の動物が一匹。犬のシルエットではあるが、その全身は白銅色の美しい金属でできている。


その金属の犬は、ボールを咥えており、見た目よりもずっと生物みたいな走りで、飼い主のところへ持って行った。


「エライわ、よく持ってきたわね。」


小柄な少女ーー綾間澪那あやま みおなは微笑みながら金属の犬の頭を撫でる。

しかし、その目には撫でられた事による反応すら分析しているような冷たい光も宿る。


「同調実験は成功…私の思考をトレースできてるわ。このレベルなら実戦で…」

(でも、それだと…)

言葉に出ない焦りが、その沈黙に滲む。


澪那は、頭のヘッドギアーネコ耳型の、金属製のカチューシャを外す。

金髪のツインテールがフワッと揺れる。


「ふぅ…今日の実験は終わり、充電してきなさい!ハウス」


その指示に機械音で反応し、機械犬は充電スペースに駆けていく。


その背を見送ったところで、連絡が入る。


「澪那様〜、登校時間です。車の準備ができましたよ。」


執事兼庭師の高階から連絡が入る。

祖父みたいな声音だが、執事としての緊張も残している。


「ありがと。すぐに向かうわ。それとーー高階」


澪那は、口の端を吊り上げながら、

「例の計画を実行するわよ、シロはハウスで充電中だから、ベアの起動しておいて。」


「マジですか、澪那様」


執事は驚いた声をあげる。

高階は綾間家の執事兼庭師として、約30年ほどになるが、仕事中に素の口調になったのはこの時が2回目だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー昼休み。学校の屋上。


煉陽を囲んで、詩天と鋼生が立っていた。


「………教師とはどういう事ですか?」

「どういうこと〜っ、ぐぬぬ〜っ」


煉陽は両手をあげるが、困った様な、しかし楽しそうな笑みを浮かべた。

  


「おいおい、二人とも落ち着いてさ〜。喜ぶと思ったんだけど?」


詩天の眉が少し吊り上がる、

その胸の奥には、


(説明もなく、いきなり…また…) 


という、寂しさと怒りが混ざっていた。


煉陽が、少し肩をすくめる。


「博士の手伝いもあるしさ。学校なら動きやすいじゃん?あと、サプライズってね」


「煉陽にいは、毎回突然なんだからさ〜っ。昔のキャンディちゃん拾ってきた時とか…家出て行った時も…!」


詩天の声には、怒りだけではなく過去の心配も滲んでいる。


その隣で、鋼生も冷静だが強い視線を向ける。


「…煉陽さん。今回はさすがに説明が欲しいですよ」

(煉陽が来たのには、偶然ではない何かがある)


煉陽は二人をみて、珍しく真面目な表情をした。


「理由は、何個かある。まず一つは博士の手伝いさ。さっきも言ったよね」


「…うん、それはわかった。後の理由は?」


少し落ち着いた詩天が、続きを促す。


煉陽は続きを話そうとするが、わずかに視線をさらす。ーー少し照れている。


「そして二つ目だけど…実はこれでも昔、教師を目指していた時期があってね。遠回りしたけど、…今なら、やれるかなと思ったりしてね。」


その声には、いつもの陽気さとは別の感情が乗っていて、本心からの言葉だった。


詩天の目が丸くなる。


「…えっ」


鋼生も目を細めた。

煉陽の内面にほんの少しだけ感じた気がした。


そう思った束の間ーー


「すごいよ煉陽にいーっ!良かったね本当に!私、全力でサポートします!!」

ゴゴゴゴッー


詩天は感情があふれて声が大きくなった。

加えて、尊敬と感動の眼差しである。あと、気合も入っている。

鋼生も、この話は素直にすごいと思った。


煉陽は照れ笑いをした。


しかし、次には自嘲気味に話しを続ける、


「まぁ、途中で博士の手伝いやら、趣味の考古学で脇道に逸れてきたわけだが」


「煉陽さん…。」

鋼生は、その脇道にはどのような事があったのか、計りかねて言葉が続かない。


煉陽が詩天の方を向いて話す。


「まぁ、俺の事は置いといて。さっそく詩天に先生からの頼みがあるんだけどさ〜」


普段の調子で話し出す。


「はいっ、任せて蓮見先生!なんでしょうか!」


詩天も普段のノリに戻る。


「このまま続けて、鋼生の進路相談するから、俺の席のプリントの束を、B組に届けてくれないか?」


(進路相談って…)

煉陽と直近で、話す事と言えばあれしかない…


「了解です先生!物理の評価プラスしてね〜」


そう言うなり、詩天はダダダっと屋上を出ていった。

詩天の後ろ姿を見送り、二人きりになる。


「それで、鋼生ーー」


煉陽の声は低くなった。


「“その体”の調子はどうだい?」


鋼生は先ほどまで気にならなかった外気の冷たさを、急に意識し始めていた。








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