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デウス=コード 〜オレが鋼で、キミが光で〜  作者: 熊野御堂


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第14話:月下の攻防


「あん?鬼ごっこだと?」


宵宮が聞き返す。

俺もそうしたかったが寸前の所で堪えた。


「そうだ。何度も言わせるなよ?

と言っても、ちょいと私オリジナルのルールがあるがね」


と言いつつ、鬼灯が黒羽へ指示を出す。


「一度部屋まで案内してから準備させな。

シロにも言っといて」


「わっ、わかりました」


黒羽は何か言いたげに、鬼灯を見つめるがやがて諦めてこちらに向き直る。


「それでは、お二人ともお部屋へ案内します」


「頼む」


鬼灯と黒羽の有無を言わせないような雰囲気に呑まれそのまま黙って、黒羽の後についていく。


部屋に通される。

見た目は完全に旅館のそれだった。

これから行われる事がなければ素直に喜ぶものを。これでは冥土の土産になってしまう。


「では、私も準備があるのでこれで。

着替えたら玄関前で会いましょう」


そう言い終わると黒羽は足早に廊下の奥へ消えていってしまった。黒羽の準備とは何だ?


「つか同じ部屋なんか。修学旅行かよ」


また、微妙なツッコミが始まる。

そんな余裕がある事が羨ましい。

こちらは、経験上これからやばい事が起きるのは確定だと考えて、覚悟を固めてるのに。


とりあえず、荷物を置いて動きやすいジャージに着替える。

こちらが着替え終わると、宵宮も既にジャージになっていた。


「にしても、鬼ごっこか…。

天目はこれやった事あんのか?」


「いや、俺がやってたのは厳しかったが一般的な教練であってこんなゲームじみた事は全く無かった」


そう考えると、以前のは教科書通りで今回のは鬼灯独自のメニューという訳か?

それは余計にまずい。


2人揃って玄関まで行き、外に出る。

まだ黒羽が来ておらず鬼灯が森を見ていた。

すると、すぐこちらに気づき話しかけてくる。


「おう、来たか。…黒羽はまだか」


「はい、準備するとかで」


なるべく緊張を悟られないように平静を装って言葉を返す。


「そういえば、まだ白兎に会っていないだろ?

アイツは夜になると元気になるからな。

今は森の中をふらついてるんだろうさ」


と話しながら鬼灯が、

手のひらで何かを差し出してきた。


「通信機だ。2人とも耳に付けとけ。

それで私が指示するからとにかく従え。」


鬼灯から通信機を受け取り耳につける。

宵宮は少し怪訝な顔をしているが、

何も言わずに通信機をつけた。


「すみませんっ、準備できました」


なぜか屋敷からではなく、

森の方角から黒羽が走ってきた。


「やっと来たか」


黒羽は先ほど着ていた黒の着流しとは違い、

全身黒の忍び装束に簡単なタクティカルベストを付けている。所々に防具も見える。

何故そんな武装を…。

背中にヒヤリとしたものを感じる。

しかも頭に巻いた額当ての横に小型カメラがついている…一体何に使うのか。


「では、これよりルール説明に入る」


鬼灯が腕を組み説明口調になる。


「まず一つ目、

これはさっき言ったが私の指示は絶対だ。

適宜、指示を出すから従うように」


どんな指示を出されるのか不安になる。

無茶振りはあるだろうな絶対。


「二つ目、

鬼ごっこだから捕まれば終わりだ。

だがな、捕まり方はタッチなんて生ぬるいものではなく拘束か気絶だ。

しかし、お前らどちらかが30分逃げ切れたらそのセットは勝ちだ」


拘束か気絶の二択しかないのか!?

さすがに容赦ないと思うが…。

だが、どちらか片方が30分逃げれば勝ちか…。

勝ちの目はある。


「三つ目、

アクシデントには臨機応変に対応する事だ」


一体なんの事だ?

意味深過ぎて思わず眉根を寄せてしまう。

隣の宵宮も眉根を寄せて考えていた。


「じゃあ、説明したところで3分間待ってやる。森の中へ逃げろ。

3分経過後に、黒羽が追っかけてくるからな」


はいスタートと言って、

鬼灯は屋敷に戻ってしまう。

黒羽がつけてるカメラはそのためにあるのか。


2人で並んで森に向かって走る。

走りながら宵宮が話しかけてくる。


「とりあえず、まずはバラバラに逃げようぜ。30分逃げたらそのセットは勝ちなんだろ?」


もっともな意見だ。

片方が黒羽の足止めをすればそれで済む話だ。


「あぁ、わかった。

お互いどっちに来ても恨みっこなしだからな」


「わーってるって」


話終えると、宵宮が離れていき暗闇に消えた。

幸い月明かりに照らされて、真っ暗というわけではないがそれでも視界は悪い。



漫画のロボットみたいに目で周囲のスキャンやサーチライトでも出れば良いのだが、生憎そんな機能は無い。



体感だとそろそろ3分は過ぎたと思う。

だいぶ走ったし、この視界の悪さだ。

早々に追いつかれることはないだろう。

そうは思いながらも、

葉っぱの擦れ合う音がやけに神経に障る。


周囲を確認する。

宵宮はそれなりに遠くへ離れたらしく、

静寂に包まれている。


走ってきた屋敷の方向から黒羽が来るだろうと踏んで、木を背にしてその方向を伺っていた刹那ーー。


シュンっと、何かが高速で頬を掠めた。

頬が熱い…手を当てると血が滴っている。

遅れて鋭い痛みが奔る。


(痛っ…まさか!?)


瞬時に思考が切り替わり、

転がって木から離れる。

するとまた何かが高速で飛来してきて、

たった今背にしていた木に突き刺さる。


木を見るとそれはクナイだった。

太い大木なのに、深々と突き刺さっている。

ここまでになるなんて、どんな膂力なのか?

あるいは何かの道具で射出したのか?


すぐにその場から駆け出しながら、思考を巡らす。ルール上、戦う必要はない。

なので、ここは逃げに徹する…


そう判断を下す直前、片耳からザザッとノイズが奔る。鬼灯から受け取った小型通信機だ。


「ザザ…あーテステス、

聞こえてるよな天目……指令を出す。

そこからは逃げずに黒羽と交戦しろ」


教官の指令は絶対。

以前に体に覚えさせられた事だ。

このタイミングで来るとは…。

腹の奥が底冷えしてくる。


しかし、訓練を依頼したのは他ならぬ自分自身の意思だ。

腹を括って、戦闘体制に入る。


腰に手を回し、黒い棒状のものを取り出す。

外部ウェポンとして博士が作成した打撃武器のカスタムバトンだ。

流石に、訓練であの光刃は使用できない。

殺傷力が高すぎる。


バトンを構え、全身の感覚を研ぎ澄ます。

風はない。

なら、空気を切る音や草木の音がすれば黒羽のアクションという事だ。


5メートルぐらい先の、木々の上でガサガサと音がした。そこを注意深く観察しようとすると黒い影がスルリと降りてきた。


黒羽だ。

しかし、なぜ普通に降りてきた?

奇襲というアドバンテージを捨てて。


黒い影がゆっくり歩み寄ってくる。


「天目さん」


話しかけてくる。

すぐに仕掛けてくる気配はないので応じる。


「訓練中に雑談か?」


しかし、構えは解かない。


「大方、先生が逃げるなとでも言ったんですよね?なら、最初は正面から実力を試しましょう」


思わぬ提案だが、逃げてるところを一々奇襲されるよりマシだと思う。

さらに、なんとなく黒羽は一騎打ちというタイプではなさそうだと考える。



「わかった。受けて立つ」



バトンを胸の前で斜めに構えて、黒羽を見据える。集中すると、余計に森が静まり返る。



「では、いきます」



そう言った途端、黒羽が信じられない速さで視界いっぱいになるほど近くにくる。

間合いを読むとか、そんな悠長なことは許されない。

半ば反射的に、バトンを体に引きつけてから黒羽目掛けて振り抜く。


しかし、バトンは空を切る。

黒羽は視界から消える。

いや、消えたのではなく体勢を限りなく低くして屈んでいた。


「甘いです」


低い体勢からの強烈な足払いがくる。

俺の強化外殻などお構いなしに、見事に足を払われ視界がグニャッと回り、地面に倒れる。


「ぐっ」


ダメージは軽微だが、追撃がくる。

一瞬たりとも止まらないように、倒れたまま夢中で横に転がる。


直後にドゴンっと音がして、土が跳ね上がる。


転がる勢いで、立ち上がると今しがた倒れていたところの地面が深く抉れている。

土煙の中、黒羽が佇んでいる。


「なかなか避けますね天目さん」


土煙の向こうから声が聞こえてくる。

先ほども感じたが訓練前とは違い、

声には感情がこもってない。


「なんていう力だよ…」


たかが、パンチで何なんだこの威力は?

さっきのクナイも、やはり投擲したのだろう。


速い。重い。——勝負になってない。


当たれば終わる。だから避けるしかない。


だが…こちらが攻めなければ、攻められる。

そもそも何のために来たのか…。


いつも笑顔の幼馴染。

しかし、今はよくわからない存在の器になってしまった。


……俺が守らなきゃならない。


それを考えた瞬間、自然と足が前に踏み出していた。


土煙が晴れてきて、

黒羽のシルエットがあらわになってくる。

そこへ向かい上段からバトンを振り下ろす。

まだ、少しの土煙で視界が悪いにも関わらず、

最小限の動きで躱される。


(くそっ、ならこれで!)


さらに、すかさず横に蹴りを放つ。

片腕だけで防がれる。


すると、あのパンチがきた。

まだ負けられない。

無意識に片方の手で黒羽の手首を掴んだ。


「!」


黒羽が目を僅かに見開く。

しかしすぐに均衡は崩れ、そのまま力尽くで無理やり拳を振り抜かれ、胸に衝撃が奔り体が吹っ飛ばされる。


「がはっ」


後ろの木にぶつかり背中にもダメージを負う。

結局、パワー負けしてパンチを喰らってしまった。ワンパンで、体が動かなくなる。

意識が遠くなりかけるが、なんとか堪えた。



すると、黒羽がゆっくりと近づいてくる。



「躱すよりは攻めに転ずる…よい心意気です。

私の拳をとらえたのも少し驚きました」



しかし残念でした、といいながら手早く縄で手を縛られた。拘束されたということだ。



胸の衝撃で咳き込むこちらとは対照に、

黒羽は全く疲れた様子もない。

悔しいが、レベルが違いすぎる…。


「えぇ、拘束しました……」


そんな黒羽は耳に手を当てて、

通信機に集中している。


「……むっ、そうですか」


通信が終わると、黒羽がこちらを振り向き。


「とりあえず、1セット目は終わりましたが

宵宮さんは気絶したみたいですよ」


「なっ」


宵宮が気絶?二手に別れて、俺の方に黒羽が追ってきたのに一体誰が…。

考えて、1人思い浮かぶ。


「白兎か…」


あちらは、あちらで一波乱あったみたいだ。

これだけやられても、まだ序盤でしかないことに辟易とする。

だが、学ぶことは多い。


木にもたれながら、ふぅと息を吐く。

次は、必ず勝ってやる。

勝たなきゃ守る資格がない。




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