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デウス=コード 〜オレが鋼で、キミが光で〜  作者: 熊野御堂


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第9話:黒鉄の襲撃


鋼生が男を見ると、男は眉根をひそめている。


「あいつらは、お前の仲間か?」


違うと思いながらも、問い掛ける。


「俺に仲間なんていねーよ、

それよりお前の方じゃねーのかよ」


「違う」


鋼生が短く返答した直後ーー


周りの暗闇から人影が近づいてくる。


月明かりに照らされると、

銀白色のボディが現れる。

中世の甲冑を思わせる装甲だが、

無駄のない構造は量産兵を連想させる。

それでも、その動きは異様なほど滑らかでーー不気味だった。


「…なんだよ、こいつら」


「わからない」


ジリジリと銀白色のロボット達の包囲網が、

狭まるにつれて、必然的に鋼生と男が背中を向け合う。


「なんで、俺まで……。ロボットって事はお前側の敵かなんかじゃねーの?」


「こんな奴らと戦ったことなんてない」


半年の間、ジジイに色々な知識や戦闘経験を叩き込まれた。

しかし、こんな精巧なロボットは見たことがない、どう対処するか思案しているとーー

鋼生の正面にいる兵隊たちの背後の空間が歪み、突如大柄な影が現れる。


「……何故ここにいるか、簒奪者よ」


低い無機質な声が響く。

その影は身長が2メートルほどで、黒鉄色の甲冑を纏っており騎士みたいな外見だ。


手に持っている大剣を、

ゆっくりと鋼生へと向け、

赤い単眼がこちらを射抜くように光る。


「やっぱり目当ては、お前じゃねえか」


「……簒奪者?」


鋼生は何かを奪った記憶はないが、どう考えてもこの体に関連する事としか思えない。

こんな奴らの事は、ジジイからは何も聞かされていなかった。


「…おい、デカいの!なら俺は関係ないだろ!」


男は、騎士に呼びかける。

すると騎士は、


「……これは、我が獲物も一緒にいるのか。

今宵は首級を2つも挙げられるとは…良い夜だ」


「は?獲物だと?」


男が威圧するように、声を低く呟く。


「お前とも関わりがあるみたいだな」


そういいながら、鋼生が男を見ると

男は目を細め、騎士を鋭く睨みつけている。

鋼生の言葉に反応せずに男が槍を構える。


「テメェがなんだか知らんが、

俺をやれると思ってんじゃねぇぇ!」


男が激昂し

地面を蹴る。

一気に正面の兵隊に接近した。

剣の迎撃が走るーー。


しかし、男はその一閃を躱し、

兵隊を踏み台にして跳躍。

騎士に迫る。


「……フン」


重い金属同士がぶつかり合う音がする。


男が気迫を込めて槍を打ち込む、

対して騎士は片手で大剣を持ち、

ほとんどその場から動かずに迎え撃つ。


一瞬、拮抗したかに見えた。

だが、次の瞬間、男の体が弾かれる。

しかし、空中でバランスをとり、

少し離れたところに着地する。


「チッ、ビクともしねぇ」


男が言葉を発した直後ーー


「敵からは一瞬たりとも目を離すものではない」


騎士は男まで一瞬で間合いを詰める。

横薙ぎに大剣を振るう。

男は咄嗟に槍を縦にして受け止める。


しかし、あっけなく槍は砕け、

衝撃は収まらずに吹っ飛ばされる。

そのまま勢いよく柱に激突。

男を中心として柱にヒビが入り、

その衝撃を物語る。


「所詮、獲物は獲物か。

敵にはならず…次は、貴様だな簒奪者」


鋼生は先ほどまで、

自分と戦い拮抗していた男が、

あんな簡単に倒されたのを目の当たりにして、体に戦慄が走る。


鋼生は抗うように徒手空拳で構えをとる。


敵意があると考えたのか、

周りの兵隊たちが武器を構える。

ーー来ると思った直後、


突如、視界の端にいた兵隊が、

鈍い音を立てて吹き飛んだ。


「なんだ、銃声!?」


鋼生が咄嗟に屈んだと同時に、

暗闇よりさらに数発の銃声が響く。


最初の一発で一体はダウンしたが、

その他の兵隊はすぐさま盾を構えて防御体制をとった。

銃声に混じって、

こちらに近づいてくる金属音がある。


現れたのは、

赤色の犬型ロボットだった。

赤い装甲も目立つが、

それよりも目についたのは背中にある砲身だ。


「今よ、天目鋼生!

奴らの近くから、離脱しなさい!」


赤色の犬型ロボットより女性の声が響く。

鋼生はわけがわからなかったが、

反射的に赤い犬の近くに向けて、

兵隊の包囲網を全力でジャンプし、

無理やり抜ける。


鋼生が包囲網を抜けたのを見計らって、

赤色のロボット犬が背中の砲身から、

砲弾を兵隊の密集地点へ向けて発射する。


その間も、兵隊たちは暗闇からの銃撃を防ぐのに手一杯になっている。

すると発射された砲弾が発光し、

青白い電流が走る。

その電流をもろに浴びた兵隊たちは、

地面に膝をつき、そのまま硬直した。


兵隊が動かなくなると、

そこへ向けられていた銃撃が全て騎士へ集中する。 

騎士の全身に銃弾の雨が降り注ぐが、その装甲には傷一つ付いていないようだ。


「…他にも仲間がいたか、簒奪者よ」


騎士は銃撃が来る先に首を向けるが、

それ以上動く気配はない。


「逃げるわよ、天目鋼生!」


再度赤い犬型ロボットのスピーカーから女性の声で名前を呼ばれる。

効果がないと判断したのか、銃撃が止む。


「俺?」


「そうよ、アンタに決まってるでしょ!

博士に言われて来たわ!」


ジジイに言われて?何を言っているんだ?

いきなりの事でわけがわからない。

何から喋ったものか思案していると、ーーー


「待て、簒奪者…いや天目鋼生というのか」


不意に、騎士が話しかけてくる。


「少々の露払いはしたが、

万全ではない状態の獲物を狩る気はない。

私の道理に反する。早く引け。」


「……今日のところは見逃すと?」


鋼生は眉をひそめる。

なんの意図があるかわからないが、なんとなく騙し討ちしてくるタイプには見えない。


「……そうだ。私の名はアイゼン・ヴァルド。

デウス=メタルに名を連ねる騎士である。

あそこの獲物にも伝えておけ、全力の貴様らを打ち破った上で、その首をいただくとな」


そう言って黒鉄の騎士は、背後の空間が歪んで穴が空いた先へ消えていった。

他の兵隊たちの近くの空間もそれぞれ歪み、

残骸も含めて跡形もなく飲み込まれていった。


「一体なんだったんだ…」


騎士が消えた事で周囲の圧迫感がなくなり、

一気に緊張が解ける。

なんなら、そのまま倒れ込みたい。


「どうやら、見逃されたようね」


赤い犬型ロボットが、

騎士の消えた空間を見つめている。

そのロボットのカメラを通して声の主は見ているのか。


「で、あんたは誰だ?

博士に言われて来たみたいだが…」


「あぁ、失礼したわ…

まだ名乗ってすらいなかったわね」


すると、銃撃があった方向の暗闇から複数の影が出てきて赤色のロボット犬の周りに集まってくる。

見るとそれらは、緑、黄、白、黒、のロボット犬達だった。

それぞれ、耳の形や、体つきが違う。

実際の犬種に似せているのだろうか。


そして、最後に犬達の後ろの暗闇から足音が近づいてくる。

犬達のライトに照らされて、

姿があらわになる。


その見た目は、身長150センチくらいの、

金髪ツインテールの女の子だった。

頭にネコミミ型のヘッドセットと口元にマイクが見える。

あれを使い遠隔で話していたのか。


「私は、綾間澪那あやま みおなよ。

簡単に言えば鞠ノ瀬博士の永遠のライバル、綾間博士の後継者ね!」


ライバル?後継者?

この娘も、ジジイの関係者か。


「……あのジジイにライバルがいるかどうかは知らないが、綾間博士は知っているな。」


確か綾間博士はロボット工学の研究者で、

テレビ取材や本の執筆もしていた。

既に、故人だったはずだ。

同じ苗字だから、血縁者か。


「そう、有名だったのよ私のお爺様は。

あんたのところの引きこもり博士と違って。」


まあ、確かにジジイが外出した所など、

見た事もない。


「急に話があるって呼び出されたと思ったら、アンタがトラブってるから迎えに行けって。

そんな事、自分で、面倒みなさいよ!」


澪那は怒りながら、地団駄を踏む。


という事は、ジジイが頼んだ救援ってことか…。

おそらく、俺が粒子ブレードを使用したのを感知して、ただ事ではないと考えての事だろう。

確かにただ事では無かった…。


「…すまなかったな、あのジジイが。

なんか、アイツも引き下がったし助かった。」


「ホントにそうよ。

というか、あそこで倒れてる男は誰なのよ?

アンタの味方ってわけじゃなさそうだけど…」


「それが、いきなり襲ってきてな…。

その…ジジイの孫の詩天を狙ってるらしい。

正直言って意味がわからないが、

俺の体の事もなんとなく見抜いていた」


顎に手を当て、少し考え込んでから澪那が喋る。


「鞠ノ瀬博士の孫娘ねぇ。

なんで博士じゃなくて孫の方を狙うのかしら…


それにしても、その体を見た目だけでサイボーグだとは判別する事は不可能よ。

それが分かるとか、普通じゃないわねアイツ…」


話していたら、段々と落ち着いて来た。

すると、鞠ノ瀬家にすぐ向かう事になっていたのを思い出す。

スマホをチラ見すると、煉耀から着信がある。


「今更だが、ここにいるのもまずいし博士のところに向かわないか?

実は俺も、別件で行こうとしていたんだ」


「そうね、移動しましょうか。

でもね、私がいるのは全然まずくないわ」


「なんでだよ」


澪那の言葉を受けて、

鋼生は怪訝な表情になる。

商業用ビルの建設現場にいて良い理由がわからない。


「だって、ここは綾間グループ所有の商業用ビルなんだからね!」


「えっと…綾間グループってあの…」 


よくCMなどにもでている電気工業や不動産業などを中心に多くの傘下会社を抱える、

巨大グループだ。


「じゃあ、その若さで君が社長とか?」


冗談のつもりで言ってみた。


「あー、いえ、トップはお父様であって私は関係ないというか〜研究に没頭していて…」


やはり違うみたいだが、

さっきの見栄はどこにいったのか。

しかし、正直である。


「コホン、とにかく博士のところに行きましょうか。

あと、参考人としてあそこの気絶している男を運んでくれる?」


「あ、あぁ…置いていくわけにもいかないよな」


正直、話をしていてすっかり忘れていた。

そもそも、いきなり襲ってきた奴を助ける義理はないが、このままにしとくのも偲びない。


男を担ぎながら建設中の商業ビルをでると、

大型のワゴン車が止まっていた。

トラックの近くに大柄な男性がいる。  


「待たせたわね、高階」


「いやいや、大丈夫ですよ〜澪那様。

ってケガ人いるんですかい?」


高階と呼ばれた、

白髪オールバックの恰幅の良い男性は、

朗らかな喋り方で澪那に返事をする。

先ほどの社長令嬢発言からして、

執事や運転手の類だろう。


「とりあえず、乗りましょうか」


「わかった」


大型ワゴン車に乗せてもらったものの、犬型ロボット達と気絶した男と一緒にシートが外されている荷台に押し込められている。

前は2人までなのもあり仕方ないが、

それでも複雑な気分になる。


「いや〜すまないね、天目君。

前は2人席だし、俺は運転しなきゃで、

かと言って澪那様をそこには乗せれないでしょ〜」


運転席から、高階が謝罪してくる。

周りのロボット犬達はスリープ状態で静まり返っているし男も目覚めないので、どうという事はないが。


「まぁ、乗せてあげてるのに、文句があるなら走ってもらっても構わないけどね」


澪那がからかってくる。

そう言われると、ちょっと腹が立つ。

それを聞いて高階が、


「ハハハハッ、だめですよ澪那様、

そんな事ばかり言うと友達少なくなりますよ〜ただでさえ、研究ばっかで友達すくないのに」


「〜〜〜うっ、うるさいわねっ高階!

コイツとは初対面じゃない!

友達じゃないわよ!

しかも私はSNSでフォロワーも、

ゲームのフレンドだっているんだから!!」 


澪那は顔を真っ赤にして、

隣の高階へ肘鉄を喰らわしている。

高階は、気にせずハハハと笑っている。


少しの間、車に揺られていると。

鞠ノ瀬家の前まで到着した。


鞠ノ瀬家自体は通常の一軒家だが、

車両用と出入口用の2つの門がある。

既に車両用の門が開いており、

ワゴンが入っていくと、

敷地内に大きなガレージがある。

そこにワゴンを駐車する。


高階は車内で待機するようで、

鋼生がまた男を担ぎ、澪那と車から降りた。

すると、玄関から煉耀が出てくる。


「無事だったか鋼生。

澪那さんはお久しぶりだね…後は誰だ?」


言葉遣いはいつも通りだが、

煉耀の顔には緊張が少し滲んで見える。


「2人には博士から話があるそうだ。

ケガ人もベッドがあるから一緒にこっちに」


そう言って煉耀は、

ついてくるように促してくる。


鋼生は背中の男の事もあるし、

あの博士のことなので、

これからどんな常識外れな話があるか予想できない事にも辟易した。

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