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転生したら推しが魔王様になってた件~④三度の結婚式は大パニック!  作者: 銀文鳥


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第十二章(1):王国の祝福、そして新たな始まり


ルシアン様とのキスの余韻に浸りながらも、私は周りの状況に必死で意識を向けた。


カスパール君とローゼリアちゃんの衝撃は相当なものだったようで、未だに呆然とした表情で固まっている。


そんな二人の横で、アルドロンさんはすでに城の奥へと消えていた。


世界は救われた。


そして、私たちの物語も、新たな章へと進むのだ。




数日後、王都は驚くべき速さで復興に向けて動き出していた。


聖騎士団はガイア様から直接祝福を受けた「ガイアの騎士」として、その指揮を執る。


そして、私たち五光の勇者は、深淵の主を打ち破った「伝説の勇者」として、世界の民からの熱狂的な歓声と祝福に包まれていた。



ルシアン様は、この戦いで世界が味わった恐怖と不安を一日も早く払拭したいと願った。



そして、そのために最も効果的な方法として、彼の口から出たのは、思いもよらない決断だった。



「セラフィナ。我々は、すぐにでも魔法使いの王としての婚姻を挙げる」



その言葉に、私はもちろん、周囲の者たちも皆、息を呑んだ。



「速やかに準備を進めよ。この世界に喜びと希望を与えるため、盛大な式典とする」



ルシアン様は、これまでの戦いでの疲労を微塵も感じさせない、力強い眼差しでそう告げた。


彼のたっての希望により、挙式の準備は超高速で進められることになった。



魔法使いの王が総力を挙げた準備が、まるで嵐のように始まったのだ。





そして迎えた挙式当日。


私は、息を呑んだ。



目の前には、見慣れない……いや、懐かしすぎるルシアン様の姿があった。



――彼の身を包むのは、いつもの魔王の漆黒のマントを羽織った姿ではない。


代わりに纏っていたのは、純白の生地に夜空の星々を思わせる銀糸の刺繍が施された、流麗なローブ。

その下には、深い群青色のビロード製ベストが重なり、胸元には王家の紋章が精緻に輝く。

襟元は高潔に立ち上がり、肩には金細工の堅牢な肩章(エポーレット)が堂々と備わり、幾重もの飾り紐が胸元を飾っていた。


それは、私が佐倉花としてこの世界に転移し、初めてセラフィナとして出会った、あの『魔法使いの王ルシアンと四人の勇者の物語』で描かれた、王家の威厳と魔法使いの神秘性、そして世界を統べる者の確固たる意志を象徴するような、まさに理想の王の装束だった。



「ルシアン様…! そのお姿…!」



思わず声を漏らす私に、ルシアン様は柔らかく微笑んだ。


彼の銀色の髪だけは、背中まで流れていたが、それがまた神秘的な魅力を加えていた。



「この姿が、最も『魔法使いの王』らしいと、父上が昔言っていたな。そして、俺が勇者となる前の、世界の日々を思い出させるだろう?」



彼の言葉に、私は深く頷いた。この姿は、私の佐倉花としての記憶と、セラフィナとしての今の私を繋ぐ、特別なものだった。胸の奥が、温かい郷愁で満たされる。



そして、私の衣装はというと、これはもう、夢か幻かというほどの美しさだった。


純白のシルクと、きらめく金糸で織りなされた、まさに王妃のドレス。



伝統にのっとったデザインは、まるでアリア様が纏っていたであろう、優雅さと威厳を兼ね備えていた。



精霊たちがドレスの裾で舞い、私の一歩一歩に合わせて淡い光の粒子を散らす。



私のウェディングドレスのベールは、祭壇から伸びるレッドカーペットを覆い尽くすかのように、何メートルも長く、純白の波となって後方に広がっていた。


その透けるような薄い生地には、微細な魔法の光が織り込まれており、光の加減で虹色にきらめく。


その壮麗さに、思わず息を呑んだ。



その時、ルシアン様の優しい眼差しが私に向けられた。彼はゆっくりと歩み寄り、私の手をそっと握りしめた。



「セラフィナ…」



彼の声は、いつにも増して甘く、そして深く私の心に響いた。



「ああ、美しい。あたりまえに見惚れてしまうほどだ。そして、その姿はまさに…魔法使いの王妃として、完璧だ」



彼の言葉は、私の心を温かく包み込み、胸いっぱいの幸福感で満たした。





王都の広場に特設された祭壇は、色とりどりの花で飾られ、世界中から集まった来賓で埋め尽くされていた。


各役職ごとの王族、貴族、そして各地の代表者たち…。誰もが祝福の笑顔を浮かべ、この歴史的な日を見届けようとしていた。



「勇者様の婚姻だ! 万歳!」


「魔法使いの王ルシアン様とセラフィナ様、末永くお幸せに!」



民の声が、波のように押し寄せる。この世界中の人々が、私たちを心から祝福してくれている。その温かさに、胸がいっぱいになった。




祭壇の最前列には、私たちの大切な仲間たちが並んでいた。


カスパール君は、珍しくきっちりと礼服を身につけ、緊張した面持ちでこちらを見守っている。


その隣のローゼリアちゃんは、カスパール君の瞳の色と同じ、淡い紫色のドレスで可憐に着飾り、頬を染めながらも、私たちの幸せを心から喜んでくれているのが分かった。


アルドロンさんは、いつもより何倍も優しい顔で、その隣には、彼の手をしっかりと握る妻のリリア様と、無邪気な笑顔を振りまくリルの姿があった。


リルは、まるで特別な日を祝うように、花びらを手に持っては、小さく跳ねていた。


彼らの存在が、私にとってどれほど心強いか。





ルシアン様が私の手を握り、祭壇の中心へと歩みを進める。


その一歩一歩が、新たな世界の、新たな物語の始まりを告げるかのようだった。


司祭の厳かな声が響き渡る中、いよいよその時が来た。



「……これより、魔法使いの王、ルシアン・アルフォンス・アークロード殿に、王冠を捧げ奉る!」



聖歌隊の荘厳な歌声が響き渡り、純白の台座に乗せられた王冠が運び込まれた。


それは、堂々たる黄金の輝きを放ち、精緻な彫刻が施され、中央には巨大なサファイアが埋め込まれている。


そのまばゆいばかりの輝きは、ルシアン様の銀色の髪と蒼い瞳によく映える。



ルシアン様は、静かに、しかし確固たる意志を秘めた眼差しで、その王冠を見つめた。


そして、ゆっくりと、その手を伸ばす。


彼の指先が、王冠の冷たい宝石に触れる。



国民の息を呑むような静寂の中、ルシアン様は、その王冠を頭上に戴いた。



きらめく黄金の王冠が、彼の銀白色の長髪と完璧に調和し、深く蒼いサファイアが彼の瞳の色を一層引き立てる。




――ルシアンは、その王冠の重みをずっしりと感じた。それは単なる物理的な重さではない。


代々受け継がれてきた魔法使いの王の歴史、父アズラエルやその先祖たちが背負ってきた責任、そして彼らがこの世界に捧げてきた愛と犠牲。


それら全ての思念が、王冠を通して彼の中に流れ込んでくるようだった。


(父上、祖父上、そして全ての先代の王たちよ…! 必ずや、この魔法使いの王として、世界を、立派に護り、導いてみせます。あなた方の誇りにかけて、私はこの重みを背負いましょう!)




彼の顔立ちが、一層厳かで威厳に満ちたものへと変わるのが分かった。


しかし、そこには、かつての孤独な王の面影はなく、世界を護り、愛する者と共に立つ、確かな未来を見据えた王の風格があった。


広場に集まった誰もが、その美しさと威厳に圧倒され、彼の新しい王としての誕生を心から祝福しているのが肌で感じられた。



世界の民から、再び割れんばかりの歓声が巻き起こる。



「ルシアン王陛下! 万歳!」



そして、司祭の声が再び響く。




「……続きまして、魔法使いの王妃、セラフィナ・アークロード殿に、王冠を捧げ奉る!」



今度は、私のためにもう一つの王冠が運ばれてきた。


それは、ルシアン様の王冠とは対照的に、一回り小ぶりで、繊細な銀細工が施された、王妃の冠。


控えめながらも上品な輝きを放ち、まるで夜空に瞬く星屑を散りばめたかのようだった。



ルシアン様が、優しい眼差しで私を見つめ、そっと私の肩に手を置いた。


その温かい感触に、緊張していた私の心が少し和らぐ。



私は、司祭に促されるまま、ゆっくりと頭を垂れた。



ひんやりとした銀色の王冠が、私の頭上にそっと置かれる。


その瞬間、王冠に込められた古の魔法が、私の全身を包み込むように流れ込んできた。


それは、王妃としての責任と、この世界を支える者としての使命を、静かに、しかし力強く告げているようだった。



同時に、アリア様の優しく温かい微笑みが、私の心に鮮やかに蘇った。



(アリア様…! ありがとうございます。この王冠に込められた思い、そしてルシアン様への愛…全てを受け継ぎ、私もこの世界のために、そしてルシアン様のために、全力を尽くします!)



私の心に、新たな決意が宿る。


ルシアン様と共に、この世界と人々を、愛と希望で満たしていくのだと。



世界の民から、さらに大きな歓声が沸き起こった。



「セラフィナ王妃陛下! 万歳!」


「ルシアン王陛下! セラフィナ王妃陛下! 末永くお幸せに!」



その歓声の中、ルシアン様は私の手を取り、優しい笑顔を向けた。



(日本の、お父さん、お母さん。そして、みんな。見てる? 私、こんなに素敵な場所で、こんなに素敵なルシアン様と、結婚するんだよ。この感動、絶対に伝えたいから、ビデオカメラでしっかり撮影して、全部見せてあげるからね!)


心の中で、故郷の家族や友人たちに語りかける。


みんな、きっと、驚くだろうな!


この世界の全ては、こんなにも美しいんだよ!





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