第七章(3):桜舞う庭で交わす異世界の誓い
いよいよ、挙式が始まる。
ルシアン様と共に、私はゆっくりと幻想的なバージンロードへと足を踏み出した。
風が吹くたびに、薄紅色の桜の花びらが雪のように舞い散る。
足元に敷かれた金色の雅やかな文様が、神聖な光を放っているように見えた。
バージンロードの終点、神聖な光の柱が立つ祭壇のような場所には、巫女姿のエリアス様が玉串を手に静かに立っていた。
彼女の神々しい金色の髪が深紅の緋袴によく映え、そこに立つだけで庭の空気が清められるように感じられた。
(信じられない……! 私の結婚式に、エリアス様が、巫女姿で、神役として立ってくださってる……! しかもこのバージンロード、桜の花びらでこんなに幻想的に……!)
感激と萌えで胸がいっぱいになる。
ルシアン様と並んで歩くバージンロード。
これは、日本の伝統的な神前式とは少し違う、私たちだけの、異世界と日本が織りなす特別な誓いの場。
和装の彼と、巫女姿のエリアス様という組み合わせに、内心で「最高すぎる……!」と叫びながら、私は一歩一歩、祭壇へと進んだ。
祭壇の少し手前、参列者席の最前列には、カスパール君、ローゼリアちゃん、アルドロンさんが並び、私たちを見守っていた。
彼らも皆、この神聖な雰囲気に魅入られているようだった。
父は感慨深げな表情で、そして母もその隣で、優しい眼差しで私たちを見つめていた。
エリアス様が、厳かに玉串を奉奠する。
その動き一つ一つが洗練されていて、神聖な空気を醸し出す。
そして、澄み切った声が庭に響き渡った。
「汝、ルシアンよ。この地の理と縁を結び、佐倉花を妻とし、永遠の愛と忠誠を誓うか?」
ルシアン様は、凛とした声で「誓う」と答えた。
彼の声が庭に響き渡り、桜の花びらが一瞬止まるかのような錯覚を起こした。
「汝、佐倉花よ。この地の理と縁を結び、ルシアンを夫とし、永遠の愛と忠誠を誓うか?」
エリアス様の問いに、感動で震える声で私は答えた。
「誓います!」
(ああ、神様が直接誓いの言葉を聞いてくれるなんて……この結婚、間違いなく世界に祝福されてる!)
ルシアン様の「誓う」という短いながらも力強い言葉に、私の胸は再び高鳴り、改めて彼の愛を実感した。
続いて、指輪の交換の儀式だ。和装の袖口から現れるルシアン様の指が、そっと私の左手の薬指に、ゴールドの指輪をはめてくれた。
二人の門出を祝うようにきらめく。 ルシアン様の左手の薬指に輝く、シンプルなゴールドのリング。
その隣では、右の人差し指にはめた漆黒の宝珠の指輪が、彼の持つもう一つの強大な力を象徴するように鈍い光を放っていた。
私も震える手で、ルシアン様の指に指輪をはめた。
(ああ、これで日本でも本当に夫婦になったんだ……!)
感無量になりながら、改めて指輪の美しさにも感動した。
「 これも推しグッズ……じゃなくて、最高の思い出の品!」と心の中で歓喜する。
次に、三三九度の盃の儀式が始まった。巫女姿のエリアス様が、神酒が注がれた盃を厳かに差し出す。
ルシアン様は、慣れないながらも雅やかに盃を傾け、神酒を口にした。
その仕草すらも絵になる。
(ルシアン様が三三九度やってるー! え、似合いすぎる! もう何でも似合う! これが推しの力……!)
私は内心で萌え狂いながらも、必死に平静を装い、日本の伝統的な作法で盃を交わした。
この瞬間、周囲の桜の花びらが一層激しく舞い、竹林からの風鈴の音が、私たちを祝福するかのように涼やかに響き渡った。
伝統的な儀式をルシアン様と共に行うことに、改めて日本の文化と異世界の絆が深まったことを感じた。
最後に、エリアス様が高く玉串を掲げ、二人の結婚の成立を宣言した。
その瞬間、空から神聖な光が降り注ぎ、私たち二人を優しく包み込んだ。
光の中から、桜の花びらとともに、祝福の小さな光の粒が舞い降りる。
父は感極まって涙ぐんでいた。カスパール君は照れくさそうに顔を背けつつも、口元は緩んでいるのが見えた。
ローゼリアちゃんは感極まってハンカチで目元を拭い、アルドロンさんは静かに、しかし温かい拍手を送ってくれた。
健太郎と有紀も「花、ルシアン様、おめでとう!」と満面の笑顔で叫び、皆、温かい拍手と歓声で私たちを祝福してくれた。
降り注ぐ光の中で、ルシアン様の温かい手がそっと私の手を握った。
(桜満開の四月四日。私の誕生日に、ルシアン様と夫婦になれたなんて……! 最高に幸せだ。最高の推しと、最高の家族、そして大切な友達に囲まれて……!)
感動で胸がいっぱいになり、ルシアン様の顔を見上げ、とびきりの笑顔を向けた。
桜舞い散る幻想的な庭で、私とルシアン様の、新しい誓いが交わされた。
挙式を終え、私たちは庭の片隅に設えられた休憩スペースへと移動した。
ルシアン様は相変わらず凛とした和装姿で、その場にいるだけで絵になる。
私は興奮冷めやらぬまま、彼の手をぎゅっと握っていた。
「セラフィナちゃん、お着物すてき!本当におめでとう!」
ローゼリアちゃんが満面の笑みで駆け寄ってきて、私に抱きついた。その瞳はまだ潤んでいる。
「ありがとう、ローゼリアちゃん! みんなも、本当にありがとう!」 私は喜びと感謝でいっぱいだった。
カスパール君も近くに寄ってきて、小さく咳払いをした。 「……まあ、悪くない式だったんじゃないか」 いつものツンとした口調だが、その顔は少し赤く、目は祝福の色を帯びている。
「カスパール君、ありがとう! 最高だよ!」 私がそう言うと、彼は「ふん」と鼻を鳴らしたが、すぐに視線を逸らしてしまった。
アルドロンさんは腕を組みながら、ルシアン様に向かって言った。
「ルシアン。お主がこの地で、このような形で新たな絆を結ぶとは。以前来た時とはまた違った驚きがある。心から祝福する」
「ああ、アルドロン。感謝する」 ルシアン様も静かに応じ、アルドロンさんは満足げに頷いていた。
そして、エリアス様が、私たち二人の前に立つ。巫女姿の彼女は、相変わらず神々しい輝きを放っていた。
「ルシアン君、セラフィナ君。この縁を、永遠に大切にするのだぞ」
「はい、エリアス様!」 私が深く一礼すると、ルシアン様も頷いた。
「エリアス様、本当にありがとうございました! まさか、エリアス様に神役を務めていただけるとは思わなくて……! 感激で胸がいっぱいです!」
私が興奮気味に言うと、エリアス様は慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「私の推しである、二人の幸せな姿を見ることができて、私も嬉しく思う」 そう言って、エリアス様はそっと私の頭を撫でてくれた。
その手は温かく、全身に清らかな力が流れ込むような感覚があった。
父と母も、私たちの方へ歩み寄ってきた。
「花、本当におめでとう。こんな素晴らしい日が来るなんて、夢のようだ」 父が目頭を押さえながら言う。
「ええ、花。ルシアン様と、ずっと幸せにね」 母も優しく私を抱きしめてくれた。
温かい母の腕の中に、これまでの思い出が込み上げてくる。
健太郎と有紀も、興奮した様子で話しかけてきた。
「花! 白無垢も似合いすぎてたし、ルシアン様も袴姿がもう完璧すぎて! 写真撮りまくりたいんだけど!」
「ねー! あとエリアス様が巫女さんって! 予想の斜め上を行き過ぎてて、脳が追いつかないんだけど!」 二人の賑やかな声に、私は心の底から笑みがこぼれた。
ルシアン様が私の手を握り、そっと囁いた。
「セラフィナ。この日を迎えられて、俺も心から感謝している。お前を、必ず幸せにする」
彼の蒼い瞳が、まっすぐに私を見つめる。その深い愛の輝きに、私の心は溶けるようだった。
「ルシアン様……はい!」 私はルシアン様に寄り添い、桜の木を見上げた。
薄紅色の花びらが、光を浴びてキラキラと輝きながら舞い落ちてくる。
それはまるで、私たち二人の新しい門出を祝う、祝福のシャワーのようだった。
「さて、花、ルシアン様。そろそろお色直しの時間だぞ」
父の声に、私たちは顔を見合わせた。
次の準備へと向かう時間が来たのだ。和装での神聖な儀式はこれで終わり。
次は、少しカジュアルな洋装に着替えて、アットホームな披露宴へと移る。
私はルシアン様と再び手を取り、次の場所へと向かった。
(よし! お色直し後のルシアン様も絶対かっこいいはず! まだまだ推し活は続く……!)




