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転生したら推しが魔王様になってた件~④三度の結婚式は大パニック!  作者: 銀文鳥


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第四章(2):魔界の婚礼、三日三晩の大饗宴(後編)


婚礼が始まって半日もすると、魔界の宴は本格的な混沌へと突入していった。



ルシアン様の元へ祝い酒を注ぎに来る魔物の列は一向に途切れず、その間にも、会場のあちこちでは様々な催しがヒートアップしていく。


「ヒャッハー! もっと飲め! 飲め飲め!」


すでに目が据わった魔物たちが、互いに大樽の酒を煽り、泥酔してあちこちで「酒が足りねえっ!」「俺が次の魔王になるんだっ!」と大声でくだを巻く。


中には酒の勢いで喧嘩を始める者まで現れ、鈍い打撃音や魔法の炸裂音が響き渡った。



そして、催し物も、私の想像をはるかに超えた「とんでもない」内容になっていった。


一つの舞台では、巨大な魔物たちが、腐りかけのスライムや毒々しい色のキノコ、果ては得体のしれない内臓の串焼きなどを、吐き気を催すような音を立てながら猛スピードで胃に収めていく「怪奇味覚早食い競争」が繰り広げられていた。


別の場所では、強大な魔力を持つ魔物たちが自らの力を制御しきれずに暴走させる「魔力暴走ショー」が行われ、予期せぬ場所で爆発が起こったり、客席の一部が溶解したりと、危険極まりないのに魔物たちには大ウケだった。


さらに、「真夜中の咆哮合戦」では、耳が割れんばかりの絶叫が会場に鳴り響いき、最早どこが舞台でどこが客席なのかも分からないほどの阿鼻叫喚と熱狂が渦巻いていた。



(うわぁ……すごい賑やかだけど、これは……!)



私はなんとか平静を保とうと、笑顔を引き攣らせていたが、しかし正直なところ、困惑の方が大きかった。

私の異変に、隣のルシアン様がすぐに気づいた。



「セラフィナ。もう十分だろう。休むがいい」

彼は静かに、しかし有無を言わせぬ口調で告げた。



「え……でも、ルシアン様は……?」

私が問うと、彼は相変わらず涼しい顔で、グラスを傾けながら答える。



「俺は大丈夫だ。お前は、三日三晩すべてに参加する必要はない。そもそも、はじめからそのつもりだった」

そう言って、彼は次に来た屈強な魔物の酒を受け、にこやかに応対している。



「申し訳ありません……私だけ、先に休むなんて」

私が眉を下げて謝罪すると、ルシアン様は軽く首を振った。


「気にするな。お前の体調が第一だ。ゼフィルス」

彼の呼びかけに、すぐにゼフィルスが駆け寄ってきた。

「はい、ルシアン様」



「セラフィナを休息のため、別荘へ送ってやれ。マリイも同行させるように」


「かしこまりました。セラフィナ様、こちらへどうぞ」

ゼフィルスに促され、私はルシアン様に一礼し、高砂を後にした。



別荘に戻ると、マリイが待っており、さっそく準備されていた軽やかで着心地の良いドレスへと着替えさせてくれた。


その後、ベッドへと誘われ、魔界の喧騒と、強い酒の刺激、そして何より大役である婚礼の興奮が、私の体力を急速に奪っていたのだろう、気づけばあっという間に深い眠りに落ちていた。




「セラフィナ様、お目覚めですか?」


優しい声と共に、マリイが軽食を乗せた盆を持って入ってきた。


(しまった……! 私、相当寝てしまったみたい……!)


「ま、マリイさん……っ! い、今、いつですか!?」


「はい、本日は婚礼の最終日でございます。あと少しでイザベル様の演劇が始まりますので、もしよろしければご覧になってはいかがでしょう?」



マリイの言葉に、私は「勿論です!」と即答し、慌てて身支度を整え、再び漆黒のドレスを身につけて、高砂へと向かった。



会場に戻ると、そこは二日間の宴の痕跡で、まさに混沌と熱狂が過ぎ去った後の荒野と化していた。

あちこちに魔物が倒れて寝息を立て、転がった酒樽や食べ残しの残骸が散乱している。


だが、そんな混沌の中でも、最後の催しが行われている中央の舞台は、やはり別世界の熱気を放っていた。



そして、その舞台の真正面、高砂の玉座には、ルシアン様がまるで二日間の騒乱などなかったかのように、きちんと座っていた。


彼の顔には微塵も疲れが見えず、相変わらず涼やかな表情で、最後の催しに視線を向けている。私がそっと隣に戻ると、ルシアン様はちらりとこちらを見て、優しく微笑んだ。


「ゆっくり休めたようで良かった」


その言葉に、私の心は温かさと、そして彼の気遣いへの感謝でいっぱいになった。




婚礼は最終盤、いよいよイザベルによる演劇が始まった。



「皆様、大変長らくお待たせいたしました! ルシアン魔界劇団がお送りする、魔王ルシアン様の赫々たる歴史を紐解く特別演劇、その幕が開きます! 演じ手は、女優イザベル、そしてルシアン魔界劇団の精鋭たち!」



ゼフィルスの高らかな紹介に、イザベルは舞台中央で鮮やかな男装姿を披露した。



「ルシアン様役は、私、イザベルが務めさせていただきますわ!」


その姿は、日本の宝〇歌劇団のトップスターのように凛々しく、あまりの格好良さに、会場からは割れんばかりの歓声が上がる。


彼女を筆頭に、屈強なオーガがルシアン様の忠実な副官役を、俊敏なインプが斥候役を、そして巨大なゴーレムが敵の魔物を演じるなど、様々な魔物たちがそれぞれの役柄を熱演した。


ルシアン様の魔界での並々ならぬ活躍、そして魔王として君臨するまでの壮絶な道のりを、ルシアン様ファンクラブ魔界代表の名に恥じぬ見事な演技で演じきった。


舞台上のイザベルが、ルシアン様の苦悩と決意、そして勝利の咆哮を再現するたびに、私の目からはとめどなく涙が溢れ出した。


(うぅ、ルシアン様……! こんなにも大変な思いをされて、ここまで……!)


感動のあまり、私は嗚咽を抑えきれずに号泣した。


そんな私の隣で、ルシアン様は静かにその様子を見ていた。

いつもなら公式の場では感情を表に出さない彼が、目元をほんの少し緩め、私の涙に濡れる顔を温かい、どこか慈しむような眼差しで見つめてくる。


演劇の熱狂が冷めやらぬ中、最後にゼフィルスが「魔王ルシアン様より、皆様へお言葉がございます!」と告げた。



ルシアン様はゆっくりと立ち上がり、会場全体を見渡した。



「この度、我らの婚礼を盛大に祝ってくれたこと、深く感謝する。この魔界に、新たな時代と更なる繁栄をもたらすことを誓おう」



簡潔ながらも威厳に満ちた言葉に、魔物たちの万歳三唱が城中に響き渡り、三日三晩にわたる魔界の婚礼は、盛大な拍手と歓声の中で幕を閉じた。



別荘に戻ると、ルシアン様は扉を閉めるなり、私を優しく抱きしめた。



「よく頑張ったな、セラフィナ。お前の頑張りは、全てこの俺が見ていた」


耳元で囁かれる甘い言葉に、私の頬は熱くなる。


そのまま、彼に抱き上げられ、私はふわりとベッドに下ろされた。



ルシアン様は私を強く抱きしめ、首筋に顔を埋めてくる。


(ええっ!? 口づけ以上のことはしないんじゃなかったの!?)


私の胸はドキドキと高鳴る。


しかし、次の瞬間、耳元から微かな、そして規則正しい寝息が聞こえてきた。


(ルシアン様……?)


彼に抱きしめられたまま顔を覗き込むと、完全に寝入っているルシアン様の安らかな寝顔があった。初めて目にする、無防備で穏やかなその寝顔は、ひたすらいとおしく、私の胸を締め付けた。


きっと、無理して平静を装っていただけで、三日三晩、私たち二人の婚礼のために、本当に頑張ってくれたのだろう。


その感謝と愛おしさを込めて、私はそっと彼の頬に口づけた。



私もまた、二日間の緊張と興奮、そして魔界のお酒のせいで、あっという間に深い眠りに引き込まれていった。


ルシアン様の腕の中で、意識は遠のいていく。



翌朝。


ふと目を覚ますと、隣から何やら動かない気配を感じた。そちらを見ると、先に目を覚ましていたルシアン様が、ひどく驚愕した様子で、私の隣で完全に固まっていた。




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