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転生したら推しが魔王様になってた件~④三度の結婚式は大パニック!  作者: 銀文鳥


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第四章(1):魔界の婚礼、三日三晩の大饗宴(前編)


ついに、魔界での婚礼の日がやってきた。



魔王城の広間は、昨日までの静けさが嘘のように、祝祭の熱気に包まれ、重くざわめいていた。濃厚な魔力の匂いが立ち込め、魔族たちの興奮した声が響き渡る。



「さあ、セラフィナ。行こう」



ルシアン様が静かに告げた。てっきり、人間界の結婚式のように、司会の言葉があって、音楽が流れて、ゆっくりと入場するものだと思っていた私。だが、現実は想像をはるかに超えていた。



城の庭には、巨大な獣が伏せていた。それは、まるで虹色の光を宿した鱗に覆われた、巨大な蝶のような姿の幻光獣だ。その背は広々としており、私一人どころか、何人でも乗れそうなほど広大なスペースがあった。



「セラフィナ、こっちよ!」


イザベルが嬉しそうに促す。


(え、これに乗るの!? なんじゃこりゃ!?)


私の驚きをよそに、幻光獣は静かに体を持ち上げ、翼を広げる。


その翼は、七色の光を放ちながら、魔界の空に向かって上方へと伸びていた。その広大な背には、まるで七色の光の粒子が寄り集まってできたかのような、透き通った台座が浮かび上がっていた。


私はその台座に優雅に腰掛け、足元には幻光獣の柔らかな鱗が光を受けて煌めいている。



「新郎新婦入場!!」



ゼフィルスの高らかな声が響き渡ると、幻光獣はゆっくりと、しかし確実に空へと舞い上がった。


会場全体がざわめきから歓声へと変わり、私は空を飛ぶ幻光獣に乗って、会場中央に設えられた玉座へと向かう。



(うわー! 魔界っぽくって、めちゃくちゃカッコいいかもー!!)


魔界の荒々しい、しかしどこか幻想的な光景の中を、幻光獣に乗って進む。それはまさに、夢のような入場だった。



そして、私の視線の先に、もう一体の巨大な影が、魔界の空を旋回しながら現れた。


それは、全身を漆黒の鱗に覆われた、威厳に満ちた漆黒の巨鷹だ。


その巨鷹の背には、黒曜石の装飾が施された豪奢な鞍と、深紅の魔力を帯びた手綱を握り、いつもの魔王のマントを翻したルシアン様が、威風堂々と構え圧倒的な存在感で鎮座していた。


彼の頭からは黒曜石のような角が伸び、口元の牙がギラリと光る。漆黒のマントが風をはらんで大きく翻り、そのたびに彼の揺るぎない統率者の風格が、一層鮮烈に目に焼き付いた。その姿は、まさしく魔界を統べる王。



幻光獣がゆっくりと旋回し、ルシアン様を乗せた巨鷹が横へと並び立つ。


空中で見つめ合う彼の瞳は、私だけを映しているように見えた。二体の巨大な魔物は、美しい弧を描きながら共に下降し、広間の中央へと優雅に着地した。



(か、かっこよすぎる……!! ルシアン様あああぁぁぁ!!!)


私の「推し活」のボルテージは、入場からいきなり最高潮に達した。


ああ、この人と、今から結婚するんだ……! その事実に胸がいっぱいになり、感動で震えた。



ルシアン様が漆黒の巨鷹から降り立ち、私の乗る幻光獣の傍らへ歩み寄った。彼は迷うことなく私の手を取り、そのまま高砂のような玉座へと導いてくれた。


私たちはそこに並んで座り、会場を見渡す。




その間も、城の至る所に設置された、アルドロンさんが魔界の瘴気に耐えられるよう改造した特別なビデオカメラで、三つ目の小柄な魔物、アルケミーが、この歴史的な瞬間を余すことなく捉えていた。


ルシアン様の魔力で強化されたそのレンズは、光を吸い込むように輝き、私たちの姿を美しく鮮明に記録しようとしているようだった。



「皆様! 魔王ルシアン様とセラフィナ様のご結婚、誠におめでとうございます!」



司会を務めるゼフィルスの声が響き渡ると、魔界の空に、人間界では見たこともないような派手な花火が次々と魔界の空を彩った。


轟音と共に、禍々しくも美しい光の華が咲き乱れ、夜空を彩る。そして、それに合わせて会場中の魔物たちが、一斉にグラスを掲げた。



「カンパーイ!!」



ルシアン様が差し出すグラスに、私も自分のグラスを軽く合わせた。中には、強い魔界のお酒がなみなみと注がれている。一口飲むと、その強烈な刺激が喉を焼いた。


(ごふっ……! 喉が焼けるように熱い……っ! き、きつい……っ! 無理ぃ……!)


私が思わず顔を顰めると、隣のルシアン様がすぐに気づいてくれた。


「無理しなくていい」彼はそう言って、優しく私のグラスを引いた。


だが、次の瞬間、ルシアン様は自分のグラスを何の躊躇もなく、一気に飲み干したのだ。ちっとも顔色を変えることなく、涼しい顔をしている。



(え、魔王になると、お酒もこんなに強くなるの!? 前の魔法使いの王の時のルシアン様も、そこそこ飲んではいたけど、ここまでとは……! ああ、どこまでも完璧でカッコいい……!)



そんな私の内心とは裏腹に、次々と魔物たちがルシアン様の元へと列をなしてやってくる。それははるか遠くまで続く、長い長い列だった。


皆、魔王の誕生と新たな王妃の迎え入れを祝い、魔界の酒を差し出しながら、熱のこもった祝辞を述べていく。



その間も、会場のあちこちでは、魔物の部族ごとの催しものが始まっていた。


火を操る部族は、咆哮と共に巨大な炎の竜を召喚し、その炎を自在に操って天空に様々な絵を描くパフォーマンスを披露している。


大地を信仰する部族は、足元から根を張る巨大な樹木や、発光する鉱石の柱を一瞬で成長させ、それを舞台装置として利用した力強い大地讃歌の舞を捧げた。


幻惑の部族は、空間そのものを歪ませ、観客席の周りに、一瞬にして満開の月下美人や深海の楽園といった様々な美しい幻影を出現させ、目をくらませるようなイリュージョンを展開。


影を操る部族は、闇そのものが意思を持ったかのように蠢き、ルシアン様と私が出会ってからの壮絶な戦いの歴史を、生き物のように変幻自在に形を変える立体的な影絵劇として紡ぎ出していく。



(わー、すごい! これが魔界の結婚式なんだ!)


(ゼフィルスが以前話していた通り、魔界ではこれほど大規模な婚礼は前例がないと聞いていたけれど、まさか皆がルシアン様と私のためだけに、ゼロからこの壮大な祝宴を創り上げてくれたなんて……その途方もない熱意と準備の深さに、改めて胸が熱くなった。)



私はそれらを食い入るように眺め、純粋に楽しんでいた。


だが、三日三晩にわたる大饗宴。


始まったばかりだというのに、早くも私の体は、微かな疲労感を訴え始めていた。




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