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転生したら推しが魔王様になってた件~④三度の結婚式は大パニック!  作者: 銀文鳥


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第三章(3):魔界の婚礼、三日三晩の序曲


「はい! もちろん! ルシアン様! もうバッチリ満足しました! 次は、結婚式の準備に全集中しますから!」


ルシアン様の手を強く握り返し、私は改めて気合を入れた。

魔王様グッズの殿堂に別れを告げ、私たちはゼフィルスが待つ玉座の間へと戻った。



ゼフィルスは、すでに様々な魔界の資料を広げ、準備万端といった様子だった。


「ルシアン様、セラフィナ様。では、早速ですが、魔界での婚礼の衣装についてご説明申し上げます」


ゼフィルスの言葉を受けて、自然と私の視線はイザベルへと吸い寄せられた。

彼女はルシアン様ファンクラブ魔界代表として、ルシアン様関連の演劇で女優としても活躍している。その美的センスは魔界随一だ。


イザベルの隣には、どこかで会ったことがある?ブロンドヘアのサキュバスが立っていた。


「セラフィナ! お待たせいたしましたわ! こちらは、わたくしの親戚で、この魔界で最高のドレスデザイナー、マリイよ! セラフィナ、覚えてる? あなたが初めて魔界に来た時、衣装を担当した、あのマリイよ!」


そう言われて、私はハッとした。確かに!


あの時、新しい衣装を準備してくれたけれど、「イザベル様の方が魔王様にお似合いなのに」と言った、あのサキュバスの女性だ!


マリイの表情は一瞬、硬くなったように見えたが、すぐに優雅な笑みを浮かべた。



「お久しぶりでございます、セラフィナ様。こうして再び、ルシアン様とセラフィナ様の門出に、最高の衣装をご用意できること、心より光栄に存じます」

マリイは優雅に会釈した。彼女の瞳は、デザイン画を描く芸術家のそれのように、繊細な光を宿している。


イザベルが誇らしげにマリイを見つめながら言った。


「マリイはね、他のサキュバスみたいに甘い言葉で男を惑わすのは苦手だけど、その分、美を創造する才能は魔界一なのよ! 特に、彼女にとって布地が最高の輝きを放つ瞬間こそが至福なんですって。そのための努力は惜しまないの」


「魔界での婚礼衣装、まかせて! もちろん、セラフィナには、この魔界の闇に映える、最高にクールなドレスをご用意するわ! セラフィナの紅い髪には、漆黒が一番映えるもの!」


イザベルが自信満々に胸を張る。



マリイもそれに頷く。

「はい。素材は魔界特有の、夜闇を吸い込むようなベルベットを基調とし、魔力の光を閉じ込めたような漆黒の魔石を散りばめます。シルエットはセラフィナ様の美しさを最大限に引き出すマーメイドラインを考えておりますが、いかがでしょうか?」


マリイが差し出したデザイン画には、確かに、私の紅い髪と白い肌に映えそうな、スタイリッシュで美しい漆黒のドレスが描かれていた。


勇者の世界の十二単のような重厚さとは対照的に、洗練されたクールな美しさが際立っている。


「うわぁ…すごい!素敵です!ありがとうございます!」


私の興奮をよそに、ルシアン様はいつもの魔王の衣装に目をやり、ゼフィルスに尋ねた。


「俺の衣装だが……この魔王のマントで問題ないか?」


ゼフィルスは恭しく答える。


「はい、ルシアン様。魔界の民にとって、そのお姿こそが王の象徴。婚礼においても、その威厳あるお姿を拝することは、この上ない喜びかと存じます。むしろ、魔王様以外の衣装など、考えられません」


「そうか……では、問題ないな」


ルシアン様は納得したようだったが、私は少し気になった。


(冠とか被らないのかな? でも、あの漆黒の角が邪魔して被れないか……もし無理やり被ったら、王冠に角が突き刺さって、ちょっとシュールな絵面になりそう……)

ルシアン様の頭に生えた漆黒の角を見上げ、一人納得する。



衣装の打ち合わせを終えると、ゼフィルスが分厚い巻物を取り出した。


「続きまして、婚礼の式次第でございます。各部族からの要望を調整いたしました結果……三日三晩に及ぶ大饗宴となる予定です」



「三日三晩!?」



私の聞き間違いかと思ったが、ゼフィルスはにこやかに頷いた。


「はい。ルシアン様とセラフィナ様の門出を祝うべく、全ての魔族が何かしら催しを披露したいと申し出ておりまして。その熱意に応えるためには、これほどの時間が必要かと」


ルシアン様は会場図のいわゆる高砂のような席を指差し、説明してくれた。


「俺とセラフィナは、この席に座り、各部族の催しを見る形となる。その間、魔界の酒を存分に振る舞われるそうだ」


(え、三日三晩ひたすら飲みっぱなしってこと!? 肝臓がもつかな…? 私、お酒ほとんど飲んだことないのに……!)


そんな私の内心を察したように、ルシアン様が静かに口を開いた。


「セラフィナ、三日三晩といえど、無理をする必要はない。疲れたらいつでも休んで構わない。すべての催しに付き合う必要はないし、最初からそのつもりで計画している」


その言葉に、私の肩の力が抜けた。確かに、魔王様は私の体調をいつも気遣ってくれている。


「そして、イザベル率いる魔王様ファンクラブ魔界支部からは、特別演劇が披露される予定です」

ゼフィルスの言葉に、イザベルは胸を張って頷いた。


「もちろんですわ! ルシアン様が数々の戦いを経て魔王様になるまでの壮大な物語を、心を込めて演じさせていただきます! わたくしが主役のルシアン様役ですのよ!」


「え、イザベルがルシアン様役!? 楽しみすぎる!」


私は前のめりになった。ルシアン様は、少し顔を覆いそうにしていたが、諦めたようにため息をついた。



「そして、ルシアン様が特にご所望されておりました映像記録ですが、芸術部のアルケミーが担当させていただきます」


ゼフィルスが指名すると、魔族の群れの中から、三つ目の小柄な魔物が前に進み出た。


アルケミーは、芸術と魔導具の融合を専門とする、魔界でも有数の腕利きだという。


「セラフィナ様。ルシアン様の仰せのままに、この魔界での婚礼の全てを、永遠に刻み込む所存にございます」

アルケミーは自信満々に胸を叩いた。



こうして、魔界での三日三晩にわたる壮大な婚礼の幕が、いよいよ開けようとしていた。




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