第二十八節:封印って、押す?引く?それともぶっ壊す!?
昼下がりの森の中。メルは木の枝から枝へと軽やかに飛び回りながら、誰に言うでもなく叫んだ。
「いっくぞ〜〜〜!富士の奥義・封印スポット、突撃レポート〜〜!!実況はこのメルがお送りします!」
「勝手に始めるな!マイクどっから持ってきた!?」
ミコトの全力ツッコミが入るも、メルはお構いなしに「マイクは持参!」と謎のセリフを放ちながら、枝から飛び降りた。
その後ろで、狼のルウが、落ちた枯れ葉をちまちまと拾い集めている。
「……ウチ、なんか変な葉っぱ踏んだ気がする。呪いとかちゃうよな?」
「知らんがな!」とミコトが言いかけた瞬間、さらに後方から声が飛んだ。
「……その足元に眠るは、古より目覚めぬ龍神の爪痕——」
「キリ、今そういうテンションじゃないから黙ってて!!!」
全員がそろって振り返ると、キリが黒マントをなびかせながら、うつむき加減にひとりポーズをキメていた。
「我が魂に宿りし闇よ……眠れ、今しばしの静寂を……」
「うわ、出たわキリの中二詠唱!」とメルが後ろで爆笑している。
「……今の、"第二形態"の詠唱やからな。覚えとけ」
「覚えなくていいよ!」ミコトがピシャリ。
一方で、冷静なミニャが前方の岩のくぼみに手を添え、瞳を細めた。
「……ここですね。“富嶽の井”の封印。確かに、これは通常の結界ではありません。何かが——中から、突き上げてきている」
その言葉に、一同がようやく真顔になる。
ミニャの声はいつもと同じやわらかいトーンだったが、その背後に漂う空気は、確かに一段、重くなった。
「……なあ、ミコト」
ユキが耳を立て、低く問いかける。
「ここ、何か呼んでないか。お前の、言霊……うずいてるだろ?」
「……うん。たぶん、これ……あたしが、触れなきゃいけないやつ」
ミコトは静かに結界の前へ歩を進めた。霊脈の気配は渦巻き、封印の紋様がかすかに赤く光る。
「でも、聞いておきたい。これって……押す?引く?ぶっ壊す?」
「『ぶっ壊す』に一票!」
「ウチもぶっ壊すに賛成〜!」
「壊すな!壊すな!!」
「"壊すことによって真なる姿を見せる"ってのも、アリやな……」
「お前は黙ってろ中二!!」
そんなわちゃわちゃしたやりとりの中でも、封印の紋様は確実に明るさを増していた。まるで、封印の向こうで何かが“目を覚まそうとしている”かのように。
「……じゃあ、行くよ」
ミコトは両手を封印へとかざした。言霊の力が、指先から淡く広がっていく。
静寂の中に、風の音がひときわ強く吹いた——。
ちょっと短めですが、次節に続きます
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